人気ミステリー作家の成宮彰一郎の極めて身勝手な言動を見ていると、またっくもって不愉快な気分になってきます。
「これはもうえげつないしムカつく。」
「一事不再理」
恐ろしいほど練りこまれた完全犯罪のようだけれどもそんなに現実は甘くはなかった。
おわりには不愉快ではない展開が待っています。
<目次>
第一章 迷走
第二章 暴走
第三章 逆走
第四章 追走
◎1960年、福岡生まれ。2004年、『藁の楯』(2013年映画化)でデビュー。他著に『水の中の犬』『アウト&アウト』『キッド』『デッドボール』『神様の贈り物』『喧嘩猿』『バードドッグ』がある。
156-157P
洋の東西を問わず、妻や夫の不審死により多額保険金を手に入れた人物が、逮捕されるまで同種の犯罪を繰り返した例はいくらでも挙げられる。
なぜ繰り返すのか?
彼らを馬鹿と呼ぶのは容易い。だが繰り返しさえしなければ完全犯罪を成し得た人物を、ただの愚か者、あるいはなんらかの人格障害で片づけてしまっていいものだろうか?
そこには、やった者にしかわからないなにかが、当初の目的である大金を手に入れ罪を免れただけでは満たされない、なにか、が存在するのではないのか・
そしてそれは、完全犯罪という難事業を成し遂げたにも拘わらず、誰にもそれを評価されないことによる、狂おしいほどの渇きなのではないか。私にはそう思えてならなかった。(中略)
つまり、私が定義するところの完全犯罪とは、完全犯罪を達成した事実を世の中に知らしめることができてこそ、完全なる犯罪だということなのだ。
逮捕され、起訴され、裁判となり、無罪判決を受け、それが確定判決となって、一事不再理を得る。そうなればもう、どれほど微に入り細を穿って世間に公表しようとも、絶対に罪に問われることはない。これほどまでに完全なる犯罪があるだろうか。