この「海の見える街」や「図書館・児童館」「インコ」などの題材は、畑野智美さんが育った環境がモデルなのかな。
海の近くでずっと潮の香りの風が吹いていることに読みながら気がつきました。
それぞれ四章の主人公たちが飼っているいる、「インコ、亀、金魚、うさぎ」という生き物たちの存在がこの物語に貴重なアクセントをつけています。
登場人物それぞれの視点が各章ごとに変わっていくため、彼らの目から物語を客観視することができます。それで彼らの心情にうまく歩み寄り添い物語を堪能することができました。
育ってきた環境・家庭のなかから人格がそれぞれ形成されてきたことがわかり、二十代や三十代などの若者の心理がこんなふうに変化していくのかと少しずつ理解することができました。
最後のハッピーな終わりかたからも、つつましくもほんわかな幸福感が得られましたよ。
<目次>
マメルリハ 7
ハナビ 95
金魚すくい 179
肉食うさぎ 263
◎1979年東京都生まれ。2010年、『国道沿いのファミレス』で第23回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。『海の見える街』は吉川英治文学新人賞の候補
290P
愛されて大切にされてきた人だけが持つオーラのようなものが和泉さんを包んでいる。視線の一つ一つ。柔らかい笑い声が人を惹きつける。それでいて、恋人以外はある線より中へ入れない。彼女に触れられるのは恋人だけだ。その線の中に入りたくて、みんな必死になる。
292P
相手を殺したくなるような激しい感情を持つことが恋愛だ思っていた。
欲と欲をぶつけ合い、他の女と話すな、他の男に触るなと騒ぎ、携帯電話でほんの数分でも連絡が取れなくなったら、何をしていたか問い詰め、お互いを束縛し合う。毎日のように刺されるくらいの覚悟をもってけんかして、暴力の延長のようなセックスをする。それが愛されている証拠だと思っていた。