「第29回山本周五郎賞」受賞おめでとうございます。
海辺の町で出会った3人の女性を中心に、それぞれの「善意」から派生する関係のもつれを描いた。
「善意から生まれる擦れ違いや摩擦の方が解決の糸口がつかみにくいのではと思った」と湊かなえさんの受賞の言葉。
「善意は、悪意より恐ろしい。」
湊かなえさんらしい後味の悪い終わり方。
人間の善意と悪意、そして純粋さと醜い心が行き違いを起こしつつも複雑に重なり合い絡みながら展開していくドロドロとしたミステリー。
湊さんは、誰にでも起こりうる人の心の間の不協和音を描くのがうまい。
車いすの少女に向けられた疑惑。本当は歩けるのではないかということ。
さらに、5年前の殺人やママ友、いじめ、誘拐、火事等々があり。
湊さんは、この「ユートピア」と呼ばれるような場所を描きたかったのだろうか。
ぼくにとって盛り込まれる内容が多すぎ感があり。
もっとすっきり、はっきりとわかりやすい内容と筋書きにした方がよかったのではないかなと。
でも、こんなふうに読者を悩ませるのが湊かなえさんらしくって、いやらしい手法なのではないのかと思ったり。
イヤミス女王の文章には、、ドキドキ、ハラハラしながらも次を読ませる能力があります。
<目次>
第一章 花咲く町
第二章 花咲き祭り
第三章 心に花を
第四章 誰がための翼
第五章 飛べない翼
第六章 折れた翼
第七章 岬に吹く風
第八章 岬の果てに
◎1973年広島県生まれ。「告白」で本屋大賞を受賞。ほかの著書に「Nのために」「白ゆき姫殺人事件」など。
27P
ここの良さに一番に気付いたのが外国人というのが日本人として情けなくはあるが、納得できないことではない。日本人は何か特別なもの、プラスアルファに価値を求め、外国人は元ある姿、ゼロに価値を見出す。それだけだ。
30P
町の人たちは、わたしたちがただ自分が作りたいものを作っている、描いていると思っているのだ。どこで作っても、どこで発表しても、同じ作品を。そうではない。わたしたちは自分の追い求める世界とこの町の魅力を融合させた作品を作っているのだ。この町に住んでいるからこそ生まれた作品、この町の良さが凝縮された作品を生み出しているというのに。一度、目にすれば、手に取れば、必ず気付きがあるはずで、その思いを共有したいだけなのに。
