気の合う仲間と楽しく暮らす、シェアハウスよりももっと家庭的な生活は悪くないな。
東京の郊外で暮らす四人の女性の日常的な物語。でも、雨漏りがあったり、ストーカーが出てきたり、泥棒に入られたりとちょっと変化があります。
個性がある四人の女性のほか、守衛!?さんのような山田さんがいることで、この日常の物語にスパイスが利いて深みが出ています。
「開かずの間」の事件が起こるところから、これが俄然面白くなりました。
カラス、河童、魂などのファンタジーな面がある泥棒騒動もなかなか楽しかったな。
ご縁がつながった佐知さんと梶さんとの仲がついに恋愛までに発展していくのかしないのかどうか!その後を描いたお話も読みたいな。
読了後にタイトルと装画を見てみると、「なるほど、そういうことか」としみじみしんみりとしてきました。
総じて軽く面白く楽しい!
◎1976年東京生まれ。「格闘する者に○」でデビュー。「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞、「舟を編む」で本屋大賞を受賞。
57-58P
私たちはもう、恋愛市場では残り物の部類なのであり、残り物をつまもうとする男がたまに現れたとしても、それは、家庭はあるけれど都合よく恋愛ごっこも楽しみたい、しかし若い女を振り向かせられるほどの魅力や財力はない、という半端者ばかり。では若い男はどうかといえば、世の中には若くてかわいらしい女があふれかえっているのであって、やっぱり私たちなどお呼びではないのだ。という無惨なる現実を佐知に告げるべきか否か迷ったすえ、「まあいいか」と雪乃は口をつぐんだ。どうせ佐知は、針と糸と布があれば満足で、本気で男と交際したいと切望しているふうではないのだから。
結局のところ、と雪乃は思う。佐知も私も、他人に対して不寛容なのだ。なにかを求めることも求められることも、許すことも許されることも、面倒だし自己の領域を侵犯されたかのように感じてしまう。そんな人間は一人でいるほかあるまい。
306-307P
だからせめて、見つづけよう。あの家に暮らす四人の女を。
星がめぐるように、風に乗るように、私は漂う。きみたちは気づかず、泣き怒り喧嘩し笑いあい再び朝が来て生活をするだろう。それでいい。私はいつも見守っている。全身で、つまり魂まるごとで、幸せを願っている。
きみたちは見守られている。私に。すでにこの世にはいない多くのものに。知らないだろう。それでいい。きみたちは生きているのだから。