圷歩(あくつあゆむ)のお母さんやお姉さん、おばちゃんたちなど、ぼくの周りにあまりいない風変わりな人物がたくさん出てきます。
ひと癖もふた癖もある登場人物たちがだんだんと非常に身近な存在になってきて、生き生きと語る声が聞こえてくるような錯覚を覚えます。
彼らの生きざまを扱っているから人生における付き合い方の勉強になります。
お父さんとお母さんの「不穏」とはなに?
矢田のおばちゃんが祀るサトラコヲモンサマとは?
ナイル川の白い生物はなんだったの?
少し冗長すぎるような話の展開が続きますが我慢して読み進めていきます。
途中で投げ出す人もいるのではないかなと思いつつ、小説が好きでなければ最後まで読めないだろうなと思いながら、いつの間にかこの中に入りのめり込みました。
下巻を読みたくなるような終わり方。
読み終えてからも次が気になってしょうがない。
だから下巻も読みます。
面白いと言えば面白いな!
これは本屋大賞を取った作品です。
1977年5月、イラン・テヘラン市生まれ。大阪育ち。2004年に「あおい」でデビュー。「通天閣」で織田作之助賞受賞。「ふくわらい」で河合隼雄物語賞受賞
<目次>
第一章 猟奇的な姉と、僕の幼少時代 5
第二章 エジプト、カイロ、ザマレク 105
第三章 サトラコヲモンサマ誕生 259
55P
子供にとって大切なものは、食事から取る栄養だけではない。母や、母に類するものや、やはり大人からの愛情である。愛情が足りないことで物理的に死ぬことはなくても、子供の心はほとんど死と同じ孤独を味わう。僕は姉とは違う人間でなければいけなかったし、「素直ないい子」でいる限り、死ぬことはなかったのだ。
230P
僕は正直、以前の騒々しい「不穏」のときのほうがましだと思った。
騒々しい「不穏」のときは、毎度毛布を頭までかぶらなければならなかったが、静かな不穏のときは、毛布をぐるぐる巻きにしなければならなかった。「不穏」は容赦なく寝室に侵入し、僕の耳や鼻や、自分でも了解していない毛穴から、僕の体内に滲んできた。僕はより強い物語を、より明瞭な「サラバ」を必要とした。僕は眠っている間、自分の部屋に結界を張っているようなものだった。静かでたちの悪い「不穏」を寄せ付けないために、僕は夜だけ陰陽師になった。
