きっかけは一冊の本。かつて読んだ忘れられない小説の感想を検索してから。
「それでも好きと伝えたかった-」
「図書館内乱」の作中作品ですが、これを読まなくても訴えかけてくる内容からこれだけで読む値がしますし、これで一冊の独立した小説となっています。
傷つき、傷つけあいながらも相手を思いやり一緒に前に進もうとしているところが好きだな。
お互いをなんとか理解しようとしている「伸」と「ひとみ」の二人を見ていると、なにか昔のことを思い出して、なんともいじらしい気持ちがします。
「明日の子供たち」幻冬舎(2014/08)-様々な事情で親と一緒に住めない子供たちが一つ屋根の下に暮らしている児童養護施設を取り上げたお話がありました。
ぼくは恋愛という部分だけでないところにも注目しています。
日の当たる場所ではなく、当たらない部分にあえて光を当てているところ。
有川さんの懐の深さと温かさを感じています。
健聴者も聴覚の障害者も普通に暮らせて、普通に恋愛ができるような世の中がいい!
<目次>
1 直接会うのが駄目だったら、せめて電話だけでもどうかな。 9
2 「……重量オーバーだったんですね」 55
3 傷つけた埋め合わせに自信持たせてやろうなんて本当に親切で優しくてありがとう 95
4 「ごめんな、君が泣いてくれて気持ちええわ」 143
5 歓喜の国 185
あとがき 222
解説・山本弘 230
◎高知県生まれ。第10回電撃小説大賞『塩の街 wish on my precious』で2004年デビュー。『植物図鑑』『キケン』『県庁おもてなし課』『旅猫リポート』で、4年連続ブクログ大賞を受賞
◎24P
「人生はままならない」
伸さんのこの意見に何だかすごく納得してしまいました。あのとき私が感じた閉塞感も、人生が思い通りにならないことを知った失望だったのかも、と思いました。
でも、今まで自分では気づかなかった視点なのですごく新鮮です。同じ本を読んで、同じように衝撃を受けて、気づくものは人それぞれ違うんですね。
◎79P
鼻先でこらえていた涙がこぼれ落ちた、その瞬間に一粒だけ残してひとみはパッと踵を返して逃げ出した。
◎184P
どうしてひとみの言葉がこれほど好きなのか分かった。
彼女は-彼女たちは、耳が不自由な分だけ、言葉をとても大事にしているのだ。第一言語として自分たちに遺された言葉を。その言葉を大事に使って、真摯に理屈を組み立てる。
だから伸行はひとみの言葉に魅かれるのだ。あれほど真摯に使われる言葉はまたとないからだ。自分と似ていて少し違う心地よさ-それは、ひとみが言葉の限りある愛おしさを知っているからだ。
その言葉で大切な思い出の本を語られたら、惹かれない奴はいないだろう。
その声さえ聞かせてくれたら、もう俺は君に振り向いて欲しいなんて考えません。
君と付き合えないとしても、思い出の本について語れたあの始まりからの日々には意味があるので、
俺はそれで充分です。
◎238P
実際、ぼくはこの「レインツリーの国」を読んで、難聴者への理解を深めました。日常生活でそんな苦労があるのかと、勉強になりました。
もちろん、そうした要素を抜きにしても、「レインツリーの国」は純粋に物語として感動的です。それが大切です。いい小説は多くの人に読まれます。小説を通して読者が理解を深めれば、ほんの少しではあっても、この世界を良くするのに役立つはずです。
ひとみや毬江のような女性が小説やアニメのヒロインになれないような世界-彼女たちのことをおおっぴらに語れないような世界は、絶対におかしいのです。
