約10年前に書かれた小説なのに関わらず、今か将来を語っているかのように感じられる。
難しそうな政治的な話を超能力を持った主人公が進めていくので、ドキドキしながら最後まで読んでしまう。
群集や集団などを一気にまとめていく力は、カルトやカリスマ的なパワーが必要かと。
いつのまにか相手の凄さと一体感を持ち始めることからなにかが始まるように感じられてならない。
以前はいけないことやよかったことが、いつの間にか徐々に緩和か規制されてきている。
法律などが、改正手続きを経ずにいつの間にか解釈が変わっていたりしている。
関心を持って注意深く見ていないとよくわからない。
国民があまり気づかないようにして物事を決めていくような雰囲気……。
その正誤はそのときにはわからなくても、過去を振り返ってみると必ずわかってくるもの。
歴史からも十分に学びながら行動と判断をしていきたいと思った。
様々な出来事がリンクしていって、読み手の現実も含めて物語に引き込まれていく。
読み終わっても意味深半ばのまま。
この物語のつづきを読みたいな。
<目次>
魔王 7
呼吸 217
解説 斎藤美奈子
81P
有能な扇動者とは、その、本人たちも気づかないような流れを、潮を、世の中の雰囲気を作り出すのが巧みな者のことを言うのではないだろうか。
昔、観たことのあるチャップリンの映画が脳裏を過ぎった。
276P
「憲法自体にはね、過半数としか書かれていないんだよ。だから、どうとでも解釈できるわけ。国民全体の過半数、とも、有効投票の過半数とも。で、今は国民投票法ってやつで、有効投票の過半数ってなってる」
「いつの間に」
「だから、投票率が低くて、投票率二十パーセントとかでも、過半数を取れば、改正される」
「いつの間に」
「それに、一番怪しげなのは、改正案に足されている、『自衛のための戦力』って言葉だよね。『自衛』の定義なんて、漠然としているんだし」