恩田陸さんは、学園モノが有名らしい。
甲田貴子と西脇融らの会話の中に自分の高校時代を重ねとても懐かしい思いがしています。
24時間をかけて80kmの距離を歩ききるという過酷な歩行祭をぼくは経験したことがないのにも関わらず、自分もそこで歩いているかのような体験をしました。
ぼくなら、あまりしゃべらずにただもくもくと歩くだろうか。
途中でリタイアしないだろうか!
いや、せっかくの時間だから好きな子に話しかけながらいっしょに歩くだろうか!
高校時代に同じ苦労した経験があったなら、その共有する時間は貴重なものになります。
大人になってから同じ気持ちを得ようとしてもなかなか感じることが難しいから。
振り返ってみるとその経験はかけがえのないものとなりますね。
難しい言葉を使っていないから、とても読みやすい青春小説。
ストーリーもすっと頭に入ってきますね。
この本は、人に愛されて読みつがれてきている小説なんですね。
貴子が融にずっと言えなかった秘密の告白には、心動かされました。
切なくて仕方がないようなあの青春時代は懐かしい。
山の上の夜の空は、とてもきれいです。
街燈や家の光など邪魔されなくてまっ暗いから、星の輝きがはっきりと見えるのです。
過去から未来へと永遠に続くように思える星座たち。
素直にただ眺めているだけ!
見終わってから余韻も素敵。
山の上での貴重な体験。
昔、家族と旅行したこと。
あのミステリーツアーが楽しかったな。
1964(昭和39)年、宮城県生れ。早稲田大学卒。92(平成4)年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞を、06年『ユージニア』で日本推理作家協会賞をそれぞれ受賞した。ホラー、SF、ミステリーなど、さまざまなタイプの小説で才能を発揮している
119P
昼は海の世界で、夜は陸の世界だ。
融はそんなことを思った。そして、自分たちはまさにその境界線に座っている。
昼と夜だけではなく、たった今、いろいろなものの境界線にいるような気がした。大人と子供、日常と非日常、現実と虚構、歩行祭は、そういう境界線の上を落ちないように歩いていく行事だ。ここから落ちると、厳しい現実の世界に戻るだけ。高校生という虚構の、最後のファンタジーを無事演じ切れるかどうかは、今夜で決まる。
430-431P
ぞろぞろ歩いていく友人たち。埃っぽい道。近づいてくる街の喧騒。
しかしその時、二人は見えないものを見ていた。
目には見えないが、全く同じものを。
これから先、二人を待ち受ける長い歳月。言葉を交わし、互いに存在を認めてしまった今から、二人の新しい関係を待ち受ける時間。もはや逃げられない。一生、断ち切ることのできない、これからの関係こそが、本当の世界なのだ。
それが、決して甘美なものだけではないことを二人は予感していた。
454P
一読されればわかるが、「夜のピクニック」は、ノスタルジックで、リリカルで、いつまでも読み続けていたい小説である。懐かしくて、切なくて、嬉しくて、もう最初から最後までわくわくしてしまう。生きてあることが嬉しくて、だれかに感謝しくなるような昂揚感がひしひしとわきあがってくる。読む者の胸を幸福感で一杯にするような小説だ。多幸感にみちたすばらしい小説である。こんなに素敵な小説が読まれないわけがない。読みつがれないわけがない。愛されないわけがない。
