ページをめくるにつれて面白さが増してきて物語に引き込まれますね。
古本への惜しみない愛情があり、読書の素晴らしさをみんなに伝えたいという熱意がすごくて、こころにじんじんとその意味が伝わってきますよ。
主人公の篠川栞子さんは、部類の本好きで清楚な人だな。
日ごろは極度の人見知りなのに、書物に関しては人格が変わったように饒舌になって並はずれた知識をみんなに教えてくれています。
また古本に対する推察力や洞察力を惜しみなく披露しながら周囲の人間をびっくりさせていますね。
実際に篠川栞子さんに会いたいくらいに引き込まれますよ。
この本には、とても人気があって続きがあるのはうなづけますね。
<目次>
プロローグ 5
夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店) 12
小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫) 89
ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫) 167
太宰治『晩年』(砂子屋書房) 217
エピローグ 296
◎電撃文庫『ダーク・バイオレッツ』にてデビュー。ホラーからファンタジーまで、幅広い作風で縦横に活躍中
9-10P
一応、前置きをしておく。
これは何冊かの古い本の話だ。古い本とそれをめぐる人間の話だ。
人の手を渡った古い本には、中身だけではなく本そのものにも物語がある。人からの受け売りだが、正しい言葉だと思う。ただ一つ付け加えるなら、その「物語」が美しいものとは限らない。目を背けたくなるような醜い内容もあるかもしれない。この世に存在するあらゆるものと同じように。
俺の名前は、五浦大輔。今年で二十三歳になる。俺に関係している古い本―それはもちろん『漱石全集』だ。
まずはその話から始めることにする。
54P
「わたし、古書が好きなんです……人の手から手へと渡った本そのものに、物語があると思うんです……中に書かれている物語だけでなくて」
169P
ベッドの上で篠川さんは丁寧に頭を下げる―が、本当に気を付けられるのかはだいぶ怪しい。この美人はどうしようもない「本の虫」で息をするように本を読む。
