アンブラッセ―フランス語で「抱擁する」という意味。
不思議な話のオムニバス。
独特の世界観がなんとも言えない。
<目次>
家族の風景 7-36
めぐりあいて 37-66
第三の道 67-96
文学散歩人 97-126
ローマへ行こう 127-156
くちなしの夢 157-174
鈍色の記憶 175-204
夢は噓つき 205-227
赤い月の夜に 229-251
夢売り 253-281
◎1935年、東京生まれ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、78年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。79年『来訪者』で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞、95年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞を受賞。03年紫綬褒章受章
38-39P
―私の部屋―
意識をはっきりとさせてくれた。快さはまだうっすらと体の芯に残っている。しかし、これは心の喜び、断じて肉体の喜びではない。肉体の喜びなんて、けがらわしい。ひたひたと押し寄せてくるような魂の充実感……。
―でも、百パーセントの満足じゃないわ―
言ってみれば、満月ではない。朧月夜の心地よさ。けっして凡庸ではない。魂の深い部分の静かな快哉……。言葉では表せない。ただ、
―相沢さんだったわ―
