原田さんの本を読んだ人には、意味を分かっていただけるものだろう。
当たり前の生活のなかで、大切な人を想いだしながら穏やかな気持ちになれるって幸せなことだって。
ぼくはとくに「無用の人」がよかったな。
この父は、けっして「無能の人」ではないよ。
西洋人に日本の美の真理を教えるための美学書であり哲学書、岡倉天心「茶の本」の文庫本。
これをただ繰り返し繰り返し読んでいる父の後ろ姿に、ぼくはただ共感していました。
「おのれに存する偉大なるものの小を感ずることのできない人は、他人に存する小なるものの偉大を見のがしがちである。」
そのとおり!
<目次>
最後の伝言 5-37
月夜のアボカド 39-70
無用の人 71-94
緑陰のマナ 95-124
波打ち際のふたり 125-153
皿の上の孤独 155-184
◎1962年、東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。
伊藤忠商事、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館に勤務後、02年にフリーのキュレーターとして独立。
03年にカルチャーライターとして執筆活動を開始し、05年に『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。12年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞を受賞
66-67P
たった四年間の結婚生活だったけれど、あの四年間のために、彼も、私も、この人生を授かったような気がするの。
長い長い話を聞くうちに、いつしか涙が止まらなくなってしまった私の肩を抱き寄せて、エスターが言った。
ねえ、マナミ。人生って、悪いもんじゃないわよ。
神様は、ちゃんと、ひとりにひとりずつ、幸福を割り当ててくださっている。
誰かにとっては、それはお金かもしれない。別の誰かにとっては、仕事で成功することかもしれない。
でもね、いちばんの幸福は、家族でも、友だちでも、自分が好きな人と一緒に過ごす、ってことじゃないかしら。
大好きな人と、食卓で向かい合って、おいしい食事をともにする。
笑ってしまうほど、単純で、かけがえのない、ささやかなこと。それこそが、ほんとうは、何にも勝る幸福なんだって思わない?
