気持ち悪いけれども、艶めかしくてとてもエロティック!
番町皿屋敷、牡丹燈篭、四谷怪談、源氏物語などの古典的な怪談物語集!
女性の深く暗い情念がありありと伝わってきます。
ぼくには、なかなか経験できない恐ろしい世界観です。
<目次>
朱夏は濡れゆく 牡丹燈篭 7-47
蠱惑する指 番町皿屋敷 49-82
陶酔の舌 蛇性の婬 83-117
漆黒の闇は報いる 怪猫伝 119-149
夢魔の甘き唇 ろくろ首 151-168
無垢なる陰獣 四谷怪談 169-210
真白き乳房 山姥 211-241
白鷺は夜に狂う 六条御息所 243-268
◎1955年石川県金沢市生れ。十年間の銀行勤務を経て、84年『海色の午後』でコバルト・ノベル大賞を受賞し、作家デビュー。
恋愛小説やエッセイで多くの読者の共感を集めている。
02年『肩ごしの恋人』(集英社文庫、04年)で第126回直木賞受賞
35―36P
それから毎夜、子の刻に露が訪れるようになった。
夜が深まっても、粘っこい暑さが引くことはない。汗と体液にまみれながら、ふたりの交わりは夜が明けるまで続いた。精を発した次の瞬間にはもう、玉茎は再び熱くたぎっている。露との交合は久遠とも思えた。身体を重ねれば重ねるほど、欲情は増してゆくばかりだ。
新三郎は自分の身体に底知れぬ力が漲ってゆくのを感じていた。食べずとも飲まずとも、疲れなど微塵もない。怠惰な暮らしの中では得られなかった生きていることの実感、それを今、噛み締めている。
夜明け前に露が去ると、新三郎は死んだように眠りに落ちる。陽が昇ってから目を覚まし、その時にはもう、子の刻が待ち遠しくてならない。
傾きはじめた日差しを感じながら新三郎は思う。朝など来なければいい。日など昇らなければいい。そうすれば、露とずっと共に過ごせる。
露、露、早く会いたい。
そなたを抱きたい。
