男女の恋心をくすぐる9つの短編集。
「それは秘密の」― 台風の影響で土砂崩れに合い遭難した、見知らぬ男女が一夜を過ごした物語がぼくは好き!
ぞくぞくしたりドキドキするくらいに心理描写がうまいな!
十分に楽しませてくれましたよ。
<目次>
ハズバンズ 7-60
ピンポン 61-67
僕が受験に成功したわけ 69-107
内緒 109-114
アンバランス 115-154
早朝の散歩 155-161
キープ 163-194
三年目 195-200
それは秘密の
201-249
◎1960年、東京生まれ。
早稲田大学中退後、広告代理店勤務などを経て作家活動を開始。
88年、『幸福な朝食』が日本推理サスペンス大賞優秀作に選ばれる。
96年、『凍える牙』で直木賞受賞。
2011年、『地のはてから』で中央公論文芸賞受賞
14P
彼女は二歳上だから、もう四十三になっているはずだった。これまでもメールや電話では時折やり取りをしてきたが、こうして久しぶりに会ってみると、まず、今の女房との違いを一番に感じた。まったく、真逆なタイプなのだ。そして今、女房のお蔭で得られている安らぎは、この女からは絶対に得られなかったのだということも、今になってみればよく理解出来る。つまり、別れて正解だったということだ。あのときはあんなに落ち込んだが。
181P
どうして私が、こんな目に遭わなければならないのだ。こんな、理不尽な。
ほんの少しだけポジションが高くなることを密かに喜んでいた頃が、今となっては恨めしい。こんなことなら、平社員に毛の生えた程度で結構だった。誰からも大して期待されない代わりに、妙な責任を押しつけられることも、変な人間関係に巻き込まれることもなかった方が、ずっと快適だった。
