展開がまるでドラマのよう。
有川浩さんものだからこそ、ストーリーがおもしろくないわけがないと思ったんだ。
やっぱり有川作品は面白いよ。
家庭内暴力、学童保育、地上げ、詐欺、身代金誘拐、離婚、そして、恋愛……。
子供服メーカー『エンジェル・メーカー』に関連する、
クリスマスまでに繰り広げられる数々の人間のドラマ。
クリスマス頃に読みたかったのに、今頃になってしまったな。
クリスマスでなくても読んだ後には、心が温まる素敵な本ですよ。
ただ甘ったるいだけでなく、ちょっとピリッと引き締まった場面もあってよかったわ!
<目次>
第1唱 オラトリオ
第2唱 もみの木
第3唱 コヴェントリーキャロル
第4唱 もろびとこぞりて
第5唱 ホワイト・クリスマス
◎1972年高知県生まれ。「塩の街」で電撃小説大賞大賞を受賞しデビュー。演劇ユニット「スカイロケット」結成。ほかの著書に「図書館戦争」シリーズ、「阪急電車」など
367P
「聞かせて」
柊子の声が泣いた。
「話してくれるの、ずっと待ってた」
もう喋れなかった。嗚咽が喉で潰れた。
ねえ、と柊子がかすれた声で呟く。
「雪が降ったら、完璧なのにね」
冷え切った夜空は冴え渡り、小雪のちらつく気配もない。
波打つ嗚咽をなだめて、かすれた声を返す。
「雪なんか降らなくても完璧だろ」
雪なんか降らなくても完璧な、三十二年間で最高のクリスマスだった。
