例えば、思い出すから、こわくなるから、実はあまり触れたくないことってありませんか?
なにか面白そうだとか、単に興味本位では、けっして見てはいけないものがあるのではないかとあなたは思いませんか?
214P
非写真の撮影にはよくよく気をつけたほうがいい。
非写真は現実の裏側に潜んでいる魔界の存在を写しだすことがある。
ここで書かれてある「非写真」を過去に見たことがあります。
背筋が奮えて寒くなってしまい、視るのを途中で止めてしまい……。
これが魔界とつなぐ非写真なのかとやっとわかりました。
写真とカメラが誘う9編からなる恐怖と感動の短編集。
各短編の舞台は、著者さんの出身地である岩手県。
写真を通してのエピソードが数々綴られます。
まるで「リアル」です。
作者の写真への熱い思いに思わず引き込まれます。
<目次>
さるの湯 5-31
合掌点 33-52
モノクローム 53-76
約束 77-97
遠く離れて 99-125
ゆがみ 127-139
あの子はだあれ 141-154
遠野九相図 155-191
非写真 193-214
☆1947年岩手県釜石市生まれ。早稲田大学卒。83年『写楽殺人事件』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。87年『北斎殺人事件』で日本推理作家協会賞、92年『緋い記憶』で直木賞受賞。2000年『火怨』で吉川英治文学賞、12年日本ミステリー文学大賞を受賞。
ミステリー、ホラー、SF、時代小説、歴史小説と幅広い分野で活躍を続けている。
203P
小説とはなにかを考えれば、反対に位置する写真がどうあるべきか自ずと見えてくる。
「小説の基本は作り事だが、それで目指すのは限りなく現実に近付けることだ。嘘と気付かれたら小説は終わる。いかにもありそうな、というリアリティが物語を支えている」
「分かります」
「だったらもう答えはでる。写真の基本が小説とは真反対の現実にあるなら、目指すべきものは非現実。かと言って加工写真のことじゃない。本当の現実なのに、こんなことがありようはずがないと思わせる非現実を探し出す。それでこそ人々は写真に驚嘆する」
