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「九十人の子供が住んでいる家がある。
『あしたの家』―天城市立三日月小学校から程近い場所に存在する児童養護施設だ。
様々な事情で親と一緒に住めない子供たちが、一つ屋根の下に暮らしている。……」
大人になってくると、例えば、世の中には日陰と日向の部分―陰と陽の場所があることがだんだんとわかってきます。
日の当たるところは、なにかと気がつきやすいもの。華やか、煌びやかなところがあるから。
しかしながら、日の当たらないところは……。
兎角、目を背けがちになるもの。
でも、分かっていたほうがいい。
どうして?と聞かれると、答えるのは簡単じゃないけれども。
経験していないから心から理解することはできないにしても、彼らの気持ちを少しでも知っていたほうがよいと思うのです。
気づかせてくれた、有川 浩さん。
この本を書いてくれてありがとう!
今まで読ませていただいた著書の趣きとは違う感想を抱きつつ、有川さんの懐の深さと温かさを感じています。
<目次>
1 明日の子供たち
八年前のこと。(カナ)
2 迷い道の季節
九年前のこと。(杏里)
3 昨日を悔やむ
十年前のこと。(猪俣)
4 帰れる場所
去年のこと。(久志)
5 明日の大人たち
◎1972年高知県生まれ。2004年「塩の街」で第10回電撃小説大賞〈大賞〉を受賞しデビュー。ほかの著書に「図書館戦争」シリーズ、「旅猫リポート」など
映像化された作品も多く、幅広い世代から支持を集めている。また俳優の阿部丈二と演劇ユニット“スカイロケット”を結成し、演劇の世界へも挑戦の幅を広げている
72P
「かわいそうな子供に優しくしたいって自己満足にわたしたちが付き合わなきゃいけないの!?わたしたちはここで普通に暮らしているだけなのに!わたしたちにとって、施設がどういう場所かもしらないくせに!」
104P
施設は家庭ではない。職員は家族ではない。猪俣は新人に繰り返しそう言った。
私たちは子供たちの育ちを支えるプロでなくてはならない。
その割り切った物言いは、ともすれば理想に燃えている新人の反感を買った。
402P
私は「かわいそうに」と言われることが一番嫌いです。私はかわいそうじゃありません。私は施設に入って初めて幸せになれました。施設にいても楽しく暮らせるし、施設にいるから分かることもあるんです。確かにいろいろと不便なこともあるけど、それは集団生活だからしかたないんです。そういうことを世間の人に知ってほしいです。