「何気ない日常」の対義語は「ドラマチックな物語」ではなく、何気なくもあり唯一無二でもある日々なのだ。
そんな答えを手にした彼女に芥川賞が届いたことは、だから何の不思議もない。(市川真人 文芸評論家 北日本新聞朝刊11面 平成26年8月17日(日)より抜粋)
作家の宮本輝さんなどの選考委員が絶賛された、151回芥川賞受賞作と聞くと、どんな内容なのだろうか?と手に取って読みたくなるモチベーションも急に上がります。
「隣りの水色の家の庭の芝はあおい!」
2階に住んでいる彼女は、そこが気になってしようがない。
垣間見ることができる情景から推測してみると、そんな好奇心はわからないでもない。
でも、なぜなのだろうか?
彼女から意外な動機が聞かされます。
「チャンスは準備している人の前に現れる!」
偶然のように見えるが、じつは、それは必然なのかと思ってしまう。
1階の彼と2階の彼女は、堂々と水色の家に入ることができます。
彼等の気持ちを想像してみると、
ワクワクする。
ドキドキする。
達成感がある。
恍惚感がある。
気持ちがいい!……。
なにげない日常生活の中で起こる出来事のようで。
現実的にはあり得ないないのでは?とちょこっと思われます。
けれども、これはそうじゃないんだなという思いに戻される終わりかたをしています。
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空家だったときよりもいっそうあの家を近しく感じると同時に、他人の家になって入ってはいけない場所になった。入れないのだと思うと、入ってみたくなった。
森尾さんと知り合いになることができれば家の中に入れるんじゃないか、どこかで知り合いになれないかと考えているが、行動範囲や生活形態が違いすぎる。なにかいい方法はないだろうか。
