「本ものって、何ですか―。」
小学生の時に姉の失踪事件がありました。
姉が戻ってきてからも、妹のこころに姉に対する皮膚にとげが刺さったようなある「違和感」をずっと抱き続けています。
その答えを分かったとき、ぼくは、また湊かなえさんの術中にハマったなと感じていました。
ぼくにとって、面白い小説は、数ページ読んだだけでわかります。
最後まですうっと澄みきった心で読み終えることができます。
「これもよかった。」
意外な結末に驚かされます。
次は、どの本でココロを驚かされようか。
そう考えると楽しい!
<目次>
第1章 帰郷
第2章 失踪
第3章 捜索
第4章 迷走
第5章 帰還
第6章 姉妹
◎広島県生まれ。2007年「聖職者」で小説推理新人賞受賞。12年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門受賞。他の著書に「母性」など
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記憶の濃淡は時間や現在の環境によって決まるわけではない。
こんなエピソードを聞いたことがある。昔の貧乏な画家は新しいカンバスを買う余裕がなく、絵が描かれているものを塗りつぶし、その上から新しい絵を描いていた。まれに、何層かのつまらない絵の下に名画が眠っていることもあるのだと。
人間の記憶もそのカンバスのように、重ね書きの繰り返しではないだろうか。薄っぺらな日常が何年分も重ね書きされようと、ほんのわずかな亀裂や隙間から、色濃く残っている部分が漏れ出てくるのは、何ら不思議なことではない。
