昨日、仕事の都合で中央高速道を走りました。

安全もあって、ここ何年も時速100キロ以上は出さないようにしていますが、窓外の景色を楽しむゆとりが生まれて長旅の疲れも癒されます。

ここで大事なのが、旅を共にする曲選びなのは言うまでもありません。

今回は、出発前にほぼ思いつきでシューベルトの交響曲全集を選びましたが、これが大正解。

シューベルトの交響曲群に特徴的な、流麗な旋律と、同じフレーズの繰り返しが、流れゆく緑豊かな風景に見事にマッチするのか…などと考えていると、ふと、ある方が同曲群を例えた短い文章が頭に蘇ってきました。
(訂正:交響曲群ではなく、ピアノソナタの間違いでした)

「田舎の鈍行電車に乗って、車窓を流れる景色を、頬杖をついて眺めている…中略…ウトウトして、ふと目を醒ますと、外の絵は、先ごろとあまりかわらない」

うまく例えたものです。
と、同時に、私自身の感想だと思っていたものは、実はこの表現が頭の片隅に残っていただけで、危うくパクリをやらかしてしまうところでした。

この方、ゆらさんと仰られる、アマチュアのクラシック評論家で、2007年に若くして鬼籍に入られております。

2002年頃、仕事でアメリカに駐在中だった私は、よく、氏による「ゆらんぼの部屋」というサイトにお邪魔させていただき、クラシック音楽の楽しみ方を学ばせて頂いたことも懐かしい思い出です。

今日は氏を偲びつつ、もう暫しシューベルトに浸ってみるとしましょう。





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こと13番の「大フーガ」は、
室内楽に慣れ親しんだ方にとっても、
容易には近付き難い
難曲なのではないでしょうか?


あまりの難曲故に、ベートーヴェン
自身も周囲からの進言に従って
別の曲に置き換えざるを得なかった、
とも言われています。


同じCDに収められながら、
大フーガのみ作品番号が133と
異なるのはそういう背景が
あるからなのですね。

自分自身の持てる力を最大限に
注ぎ込んだ「大フーガ」を、
ガリツィン公爵へ献呈した三曲の
中でも、最後の曲の、その最終楽章
に持って来るあたり、
言い尽くせぬ恩義を感じていたもの
と思われますが、相手に喜んで
もらえそうにないと知るや、
すぐさま相手に応じた曲を準備する。
自分の力に溺れて決して尊大になったりはしない。

楽聖と呼ばれる方は、人としての
振る舞いにも長けていたようです。


この大フーガ、
バリリやブダペストといった
カルテットによって録音されていた
時代には13番とは完全に切り離され、録音年代すら異なっていても何ら不思議ではなかったようです。


ところが近年は五楽章の後に
大フーガを置き、
さらに従来の六楽章を続ける
演奏スタイルが増えました。


お陰さまで、大フーガを意識して
全体の構成を図るためか、
違和感なく、この難曲に臨む事が
できるようになってきたようです。
(それでも難曲に変わりはありませんが)

タカーチ・カルテットの演奏は、
全体にデュナーミクをフルに
活かせながら、大仰なテンポ・
ルバートでもって表情豊かに
描き出すため、やや暑苦しく感じる
のですが、カヴァティーナから
大フーガへの繋がりが実に快感
なのです。

大フーガ自体もワクワクするような
展開でもって一気に最後まで突っ走りますので、第六楽章などは、
興奮冷めやらぬうちに始まる
アンコール曲のようでもありました。


これまで室内楽に手を
出しかねていた方でさえ、
もしかしたら気に入るんじゃないか
という期待さえ持ってしまいました。

でもねぇ、やっぱりラサールがいいかな…

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先日、タカーチ・カルテットによる後期四重奏曲集を買いました。
一聴してまずは緻密さと求心力の高さに驚きました。
それでいて、この手の演奏にありがちな、峻厳ではあるけれど線の細さが今ひとつ、
といったことも一切なく、
デュナーミクを活かして聴覚効果を最大限に狙った変則的な演奏にもかかわらず、
聞き手をぐいぐい引っ張る麻薬的な魅力を秘めている、とでも言いましょうか...
ウェットな響きながら、構成によってここまで刺激的に聞かせる手腕は
見事としか言いようがなく、
後にも先にも、こんな演奏は二度と出てこないのではないでしょうか。

然しながら、個人的には永く聴き続ける事にはならないだろう、
という予感がします。
すでに、擦り傷に直接触れるようなヒリヒリとした鋭利な感覚を欠いた
14番の第一楽章は失望だけを私の胸に残しました。

では13番は、と聞かれれば、
第5楽章のカヴァティーナを重視する方や、
第6楽章に大フーガを持って来ることに抵抗のある方にはお勧めできません。

反対に、カヴァティーナから大フーガへと続けて聴きたい方にとっては、
一つの有力な選択肢になるような気がします。
それくらい見事な出来栄えなのです。

私、私はそれでもラサールを採りますけど

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