※ 補足版・特別機動捜査隊 まえがき

【第3回再放送】でアメーバ記事とした#451-#466ですが、スペシャルセレクションシリーズでは、

#460  砂の墓【スペシャルセレクション】

#464  玄海灘の夕焼け【スペシャルセレクション】

しか収録されなかったこともあり、ある程度ネタバレをしても良い時期と考え、過去のアメーバ記事を、多少の改変のもと2022年12月にオープンにすることとします。

更新は1日おきに行ない、12月31日の大晦日に完了予定です。

かなり前に書いたものであるので、いささか拙いところもあるのですが、年末年始の気晴らしに読んでいただければと思います。

 

 

☆・・・#462  幸せになりたい

特別機動捜査隊(第462回)倖せになりたい(幸せになりたい)

 

 

 

過去のブログ記事・・・#462 幸せになりたい

 

 

 

 

 

アメンバー記事本文(更新年月日=2018年10月06日(土) 00時53分46秒

 

 

当該記事は、特別機動捜査隊のエピソードについて、すべてでは無いものの真相に触れています。

 

なお、評価は、

◎=傑作、秀作、

○=佳作、

▲=敢闘したが佳作に届かず惜しい作品、

 

△=不出来だがなんとか視聴に耐えうる作品、

×=駄作

と判断。公開済みの各エピソード(多少の追加有り)と併せ読んでください。

なお、文中で「ある人物」というのは、不特定の人物を指しています。

 

 

#462  幸せになりたい   (捜査班)立石班・・・波島進

 

 

(事件の形態)※本篇で書き切れなかったので詳細に書いています。

*鳥取砂丘では、小寺信子(光岡雅子)が友人・久子(山根まちえ)に誇らしく語っていた。東京の池丸商事が募集したハワイ御招待企画に、当選したという。信子は歌手でもある姉・なおみ(美笹ゆき子)にも話し、東京行きの資金をねだるが、なおみはインチキに決まっていると上京すら許さない。スケジュールに追われるなおみをマネージャー(白石奈緒美)が呼びにきたのを潮に、信子は駆け出していく。

*東京の雑居ビル内にある池丸商事では、代表・池永五郎(小笠原弘)、社員・長谷(武田一彦)がハワイ御招待企画の当選者と面接をしており、その中には信子の姿も。しかし、当選者は女性ばかりで列をなし、その様子に同ビル内の別会社の女性社員2人(山口千枝、未詳)は笑い顔を見せていた。

*料亭・花笠の門扉前では、板前・田辺良一(松原まもる)が友人・西出俊夫(田中淑隆)に背広を渡そうとしていた。俊夫が1年間文通している彼女に会いに行くので良一なりの気遣いであったが、俊夫は拾った金の謝礼金50万円があるので新調すると言って断る。俊夫は彼女からの手紙をみせるが、良一は彼女の名が倉木令子、鳥取県・三朝(ミササ)の斉木旅館の娘だと聞いて顔をしかめる。良一も同じ三朝出身だった。

*その夜、路上では信子が池永に腕を掴まれていた。そこに良一が通りかかり、信子を救出、池永と殴り合いになるが、良一と信子は知り合いのようでもあった。

*翌朝、池永の死体が発見され、立石班は現場に到着する。死亡推定時刻は昨夜9時前後、絞殺による窒息死で、遺留品として、料理店・とよのマッチ箱、小寺信子宛てのハワイ御招待当選通知ハガキ、料亭・花笠の手ぬぐいが発見された、さらに石垣に血痕が発見された。

*料理店・とよには、立石主任、山口が訪れ、ボーイ(未詳)に聞きこむ。すると昨晩8時ごろ、池永、信子が来店、食事が終わって出て行くと、店前で俊夫に男4人組がからんでおり、狙いは俊夫の懐の現金のようであったという。そこに、俊夫の兄貴分らしい池永が介入、男4人組を蹴散らすが、その勢いに押され信子は逃げてしまい、池永が追いかけて行ったという。

*ボーイは、俊夫が500万を拾って警察に届け出た工員だということを、新聞記事で知っていたこともあり、証言に応じたのであった

*池丸商事には笠原、内藤が訪れると、長谷と多くの女性たちが口論しているところであった。女性たちの1人でもある金髪娘(未詳)に聞きこむと、ハワイ招待を餌に会社ぐるみで女性たちの体をもてあそんだことが明らかになる。

*立石主任、山口は、池永と直前まで関わっていたと思われる俊夫の間借宅へと伺う。老婆の大家(未詳)は、彼女である倉本玲子と文通することになってから、俊夫は人が変わったように真面目になったと証言。早朝から令子に会いに出かけたが、入れ代わりかつての不良仲間が2組訪ねて来ており、それがどうやら男4人組の一味らしいこともわかる。

*料亭・花笠には、橘、桃井が訪れ、仲居・お春(島田潤子)に聞きこむ。昨晩9時ごろ、良一が信子を連れ帰宅するが、良一は花笠の娘・夏余(坂倉春江)に一晩だけ彼女を泊めるよう懇願したという。夏余、花笠の主人でもあり夏余の父(野口元男)は、良一の人柄、裕福な実家を飛び出して苦労してきたことから、事件との関わりを否定する。橘、桃井は、それでも良一との面会を希望するが、良一は一歩早く信子と花笠を出発していた。

*笠原、山口は男4人組のひとり、赤いガラシャツの男(未詳)を追及。残りの3人組、南(塚田正明)、浅田(隼義夫)、富沢(西村俊良)は俊夫を追いかけて行ったとの証言を得る。

*夏余は、良一の部屋から血のついた割烹着を見つけて気が気ではない。良一、信子を追いかけ出かけるが、立石主任、桃井、内藤はしっかりと尾行していた。そして、夏余は割烹着を入れた紙袋を捨てたところを、立石主任、内藤はこれを回収、鑑識へ持ち込む。桃井は尾行を続け、夏余は羽田空港から良一の故郷の鳥取、三朝に向かったことを突き止める。

*特捜隊本部では、池丸商事の長谷にアリバイが成立したこと、割烹着の血痕血液型はB型で池永と一致していること、俊夫、良一の関係者が三朝に向かったことから、西本捜一係長は立石班も三朝へ出張捜査させることにする。

*三朝では、俊夫が文通相手の倉本令子(夏海千佳子)と会っていた。令子は、「君のおかげで大学に合格した」という手紙がうれしかったと語るが、俊夫は自分が工員だということを告白せずにいた。

*上井駅に、立石班が到着。県警の、飯島(杉山真三雄)、綿部(中庸介)が出迎える。良一はまだ三朝へは帰っておらず、倉吉駅にも手配済みで見張っているとのことだった。

*斉木旅館で立石主任、橘が見張っていると、夏余が良一の父(舘敬介)を訪ねてくる。夏余は泣くばかりであるが、父からは息子に何かあったのだろうと予測できるものであった。一方、別の旅館では、南以下3人組が俊夫を追いかけ三朝まで来ていることが明らかになる。

*海岸では、良一、信子がなおみと会っていた。なおみは信子を責めることをせず抱きしめる。そして、良一、なおみは婚約した仲であることがわかるが、良一はその約束を忘れてほしいと切り出す。東京に好きな人ができたのか聞くなおみだが、無言の良一に泣きながら走り去る。良一は「殺人を犯した僕が・・・」とつぶやき、なおみの写真を浜辺に落とすのだった。1時間後、海岸に立石班、県警が到着。なおみ、信子に聞きこむが、すでに良一は姿をくらまし、行方はわからなくなっていた・・・。            

 

・・・・・・・・・・・・・・以上開始26分過ぎまで

 

 

(真相追及の決め手)

*ある人物からの目撃証言。

 

 

(ツッコミどころ)

*回想場面から、池永はホテル湖月近くで絶命したと推測されるが、立石班の捜査した現場にはホテル湖月は見当たらない。

*予告篇でいう「若い娘を集めてはコールガールに仕立て上げていった」という部分が、本篇では見当たらない(なので、上記の事件の形態では「会社ぐるみで女性たちの体をもてあそんだ」と表現した次第)。

*回想場面で、花笠に帰ってきた良一の割烹着には血痕が無い。

*令子が俊夫に「父に紹介したい」という心理描写が不足している。

*開始29分半ばの回想場面と、開始43分半ばの回想場面との比較で、(真相追及の決め手)での「ある人物からの目撃証言」から信憑性が失われること。

 

 

(評価) ◎=傑作、秀作

上記に挙げた(真相追及の決め手)(ツッコミどころ)と瑕疵らしきものは有りながらも、それらを大きく包み込むほどの鳥取ロケを背景としたドラマ性、結束信二脚本のエッセンスを換骨奪胎したような悲劇性、さらには良一、俊夫の人生を対比させたストーリー進行と、面白さが2倍3倍と広がっていきます。脚本・元持栄美、監督・龍伸之介コンビの傑作作品のひとつといってもよく、後年やたらと目立つ政治的メッセージは影を潜め、視聴者優先の第1級娯楽作品に仕上がっています。個人的には、【第3回再放送】の中でも上位に来る面白さと思います。

当作には様々な謎があります。(事件の形態)での範疇に絞ると、

なぜ俊夫が大金を持っているのが周知されているのか?

なぜ良一は俊夫の彼女のことで顔をしかめたのか?

なぜ良一と信子が知り合いなのか?

なぜ夏余は良一の行き先がわかったのか?

など。これらへの答えは文章的説明ではなく、映像内の風景、会話、進行から説明されるため、観ているうちに自然に頭に入り、まだるっこくない出来になっています。

 

良一と俊夫の対比についても、俊夫と令子、良一と夏余、なおみの描写も興味を引くものです。前者は嘘をついていても最後は正々堂々と秘密を告白、後者は肝心のことになると黙りこくり不透明、この両者が最終的に向かった先は何か? この点も、興味深く描いています。先ほど触れた「結束信二脚本のエッセンスを換骨奪胎したような悲劇性」を、直接、間接という点で表現しており、「映像では明らかではないが流れからこう解釈できる」という形にもなっています。要は、決して悲劇は片方だけではない、ということを描いているわけです。

 

あと、良一と令子の関係も興味深い。橋の中央で俊夫と令子がわかれ俊夫が橋向こうに行く、俊夫が良一と出くわし橋の中央に戻る、3人が出会うが良一と令子の雰囲気がおかしい、川沿いを良一と俊夫だけで歩きながら会話、橋の中央で良一と令子だけで会話。この一連の流れで2人の関係が明らかになり、それもわずか2分くらいの澱みない進行で、前段階での辻褄とも符合しているので、「ああ、なるほど」となるのも優れている脚本・演出といえましょう。ついでに言えば、このあとの良一の目撃したものがストーリーの転換にもなるところも、押さえておくべきポイントです。

これらの点は、(ツッコミどころ)の欠点というか気になるところを遥かに凌駕するもので、長所が大きくまさっていると実感しました。ゆえに、◎=傑作、秀作の評価を与えてもいいと考え、少なくとも佳作以上の出来であることを確信します。

 

 

(ブログ本篇で書けなかった、意外な脇の出演者-エンディング表記より)

当作は、#468 大砂丘 (脚本・小山内美江子、監督・田中秀夫)と同時撮影したものと考えられますが、当作でのメインキャストが脇に、当作での脇役がメインへと対照的な作品です。出来にしても、御贔屓の田中秀夫監督には申し訳ないのですが、これまた対照的です。

それはともかく、ブログ本篇で書けなかった、意外な脇の出演者は、当該項目で書き尽くしたので挙げることはできませんが、俊夫を演じた田中淑隆、なおみを演じた美笹ゆき子は、このあとも特捜隊で様々な役柄で出演します。【第3回再放送】での初登場が当作ということから、記念すべき第一歩といえるかもしれません。