【第4回再放送】が終わって市販された、

特別機動捜査隊 スペシャルセレクション<デジタルリマスター版> [DVD]

の作品から抽出しました。

市販品なので、

(あらすじ)などストーリーの本質にかかわるところは伏せ、

スタッフやキャスト、また(備考)・(ネタバレしない範囲での一般的感想のみ

にとどめます。

将来、東映chなどで、一般的視聴されるようになったら書き加えていく予定です。

 

※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

なお、オープニングやエンディングで配役名表記がされない作品については、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」の原則だと平仮名だらけの文面となります。そこで役名・地名等は、検証本その他を引用、あるいは当方での当て字により、以下表記します。

 

 

 

☆・・・#133  轢き逃げ

特別機動捜査隊(第133回)轢き逃げ

 

 

 

(収録DVD)・・・VoL5、disc1、2021年9月8日発売

(本放送)・・・1964年5月13日

(脚本)・・・駒田博之

(監督)・・・仲木睦

(協力)・・・警視庁

(協賛)・・・無し

(助監督)・・・鈴木一也

(劇中ナレーター)・・・島宇志夫

(捜査担当・オープニング表記)・・・立石班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、

橘部長刑事(南川直)、荒牧刑事(岩上瑛)、桃井刑事(轟謙二)、

岩井田刑事(滝川潤)、立石主任(波島進)

 

(出演者・オープニングまたはエンディング表記)・・・配役名表記無し

江戸家猫八、若杉嘉津子、西川敬三郎、花岡菊子、和田一壮、岩城力也、桧有子、

山田晴生、高峰竜三、浅野翠、田中敏夫、豊野弥八郎、宮口二朗、堺新太郎、

三輪幸子、小池栄、本多芙三子、木川哲也、大久保敏夫、牧野弘明、古賀英次、

高城伸二、結城千里、櫻さゆり、脇野義澄、香月三千代、古市松吉、花原照子、

名取幸政、祖父江文宏、小金井秀春、宮沢俊一、井上かよ子、遊佐ナオ子、

平山成仁、佐川二郎、高瀬孝一、鈴木章子

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

・・・・・・・・・・(男が誰かに首を絞められている場面)

(略)

・・・・・・・・・・(恨みがましく絶叫する男の場面)

(略)

・・・・・・・・・・(ナレーションに戻る)

轢き逃げ!

暴走する車!

走る凶器!

幸福な家庭を見出さず、残された人々の悲しみ・・・。

狂乱、恐怖の夜を駆け巡る、殺人鬼!

目撃、証言、自白・・・。

黒い罠の中に蠢く、救いのない男の姿。

モラルを失った現代社会の悪を追及する、

次回、「轢き逃げ」に御期待ください。

 

※ストーリーの本質に触れる部分はボカします。

※VoL5、disc1、2021年9月8日発売 では、予告篇はdiscの末尾に映像特典として、まとめて収録されている。

 

 

(備考)・・・

・後年、藤島班で、初代久保田刑事や佐野刑事を演じた木川哲也が、ゲストでオープニング表記されている。自身が【第1回再放送】【第2回再放送】を未見のため判別しづらいが、ネット検索で「佐野刑事(木川哲也)」の映像をみると、おそらく東亜商事・貿易課の男性社員の1人を演じていたと思われ、?をつけ以下本文では表記した。

・同様に、上野駅駅員を演じているのが、ノンクレジットながら、後に鑑識課員として準レギュラーとなる新田五郎と推察されるので、?をつけ同様に表記した。

・当作で、初めて上田侑嗣演じる鑑識課員(劇中では上田と呼ばれる)がオープニング表記される(初登場作は直前作#132  痴漢の季節【スペシャルセレクション】)。

・冒頭に映る淀橋警察署は、現在の新宿警察署(1969年改称)。現在の所在地「東京都新宿区西新宿6丁目1番1号」と変更が無いようなら、当作は、新築前の新宿警察署と道路拡張前の青梅街道が映る貴重映像でもある。

・また当作では、高架改装前の、上野駅、赤羽駅、大宮駅が映像として残され、これも貴重映像である。

・劇中にある、眼鏡の「つる」とは「テンプル」とも呼ばれ、レンズフレーム枠端から耳にかける箇所までを繋ぐ総称。長く使うとグラつきが生じ、劇中のように手入れが必要なパーツである。

・共栄アパートに届いた郵便物には

>宛先人名:新宿区西大久保○-○ 高橋和子

>差出人名:杉並区方南町○ 中村芳子

とあった。なお、西大久保という町名は1978-1979年に廃止、現在の「歌舞伎町2、新宿6,7、大久保1,2,3、戸山3」に(#606 愛と 憎しみの湖 参照)、方南町という町名は1965年(当作の翌年)に廃止、現在の「和泉1-4、堀ノ内1,2、方南1,2、和田2」に、分けた新町名になっている。

 

 

(視聴録)・・・開始約分半まで

(ネタバレしない範囲での一般的感想)

配役名表記が無いこともあり、また主な関連人物をまとめますと以下のとおりです。

(演者は・・・の次に、判明出来る俳優名を表記)

 

〇東亜商事貿易課・課長

〇同・輸出係長・水戸二郎・・・・・・・・・・和田一壮

〇同・男性社員(2人) ・・・・・・・・・・・木川哲也?、他

〇同・女性社員

〇ギフトシューズ・専務・・・・・・・・・・・岩城力也

〇同・専務付き秘書

〇同・男性社員

〇専務宅へのその他来客(5人)

○大村製作所・社員・高橋和子

〇和子の姉・中村芳子

〇共栄アパート・管理人夫人・今戸

〇淀橋署・受付所員

〇同・刑事・大島

〇ひったくり犯

〇同・被害女性

〇同・捕縛協力の男性通行人

〇現場近隣・中華料理店育子・店主

〇同・靴店・男性店主

〇同・女性店員

○同・煙草店・女性店主

〇同・洋裁店店主

〇同・洋裁店店主の妻

〇同・洋裁店店主の子(男)

〇同・岩崎時計店・男性店主

〇同・男性店員

〇煙草店・向林堂・女性店主

〇ベーカリー・三好堂・男性店主

〇雑貨店・店主・田口・・・・・・・・・・・・江戸家猫八

〇同・田口の妻・・・・・・・・・・・・・・・花岡菊子

〇同・田口の子(女)・美知子

〇おでん屋・善さん・女将・・・・・・・・・・花原照子

○同・近隣の不良男・川口・・・・・・・・・・宮口二朗

○川口の仲間

〇料亭みさゝ・女将・・・・・・・・・・・・・若杉嘉津子

〇同・仲居

〇同・来客(3人)

○ガソリンスタンド・店員(2人)

〇松川道男・・・・・・・・・・・・・・・・・西川敬三郎

〇松川の妻

〇松川の子(男)・昭一

〇松川の子(女)・遼子

○松川の義母

○松川の近所住人

〇新宿郵便局・配達員

〇豊北郵便局・局員(2人)

〇池袋公共職業安定所・男性職員

〇同・女性職員・・・・・・・・・・・・・・・遊佐ナオ子

〇上野駅・駅員・・・・・・・・・・・・・・・新田五郎?

〇赤羽駅・駅員

〇大宮駅・駅員

〇鉄道公安職員(5人)

 

 

淀橋署に出向いた荒牧・岩井田は、旧知の刑事・大島と歓談。大島は、事件が起きると多数の投書が届き、中には凝った悪戯があることに愚痴をこぼすが、荒牧は軽く考えないよう注意する。その帰り、荒牧・岩井田は女性がハンドバックをひったくられた事件に遭遇、通行人の協力も得てひったくり犯を追跡、逮捕するが、その現場で男性死体を発見したのだった。

「荒牧刑事より連絡を受けた立石主任と橘・桃井の両刑事は、新宿区戸山町戸山ハイツの現場に急行した」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

 

死体は、戸山ハイツ敷地内の小道脇に有り、立石主任は背広上着に「水戸」のネーム、首筋に絞めた跡を見い出すが、荒牧・岩井田から凶器のスパナ発見を報告されると、死因は後頭部打撲によるものと考える。鑑察医もこれに頷き、首を絞めたあとスパナで頭蓋骨骨折に至らしめたこと、死亡推定時刻は昨夜11-1時と所見を述べる。

「被害者の身元は不明であったが、上着のネームから水戸という姓だけがわかった。現場には、かなり激しく争った跡が乱れていた。犯人は格闘の末、被害者の首を強く絞め、怯(ヒル)む隙に後頭部をしたたか殴ったものらしく、その凶器とみられる血痕付着のスパナは、死体からやや離れた草叢に発見された」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

さらに、橘と死体検分していた鑑識上田は、上着の胸のポケットに眼鏡・眼鏡拭きを発見報告。これらの状況から

「立石班は、直ちに聞きこみ捜査を開始した」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

 

岩井田は、近隣の中華料理店・育子の店主に聞きこみ。

「まず、現場付近の聞きこみからは、何ら新しい事実は得られなかった」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

さらに、立石主任・岩井田は靴店に聞きこみ。

「しかも、被害者の靴は、ごくありふれたものであり、捜査の手がかりとはならなかった。~なお、捜査の手は広げられていった・・・」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

続いて、岩井田は煙草店を聞きこむも成果は無く、洋服店を訪れた立石主任・荒牧も、上着は確かに当店で販売したものだが、ネームは後で別のところで縫われたもので、「水戸」という名にも心当たりが無いことを聞き出すにとどまった。

 

「一方、被害者が所持していた眼鏡拭きの線をあたった橘部長刑事たちは・・・」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

岩崎時計店を橘・桃井が訪れたところ、眼鏡を見た店主から、10日ほど前に「つる」を取替に来た男性のもので、当店裏のアパート付近で、よく夫人の方を見かけるという情報を得る。早速、裏に回ると共栄アパートの前で管理人夫人がいたので聞きこむ。夫人は「水戸」という言葉には無反応だったが、桃井が「若夫婦」というと、独身だが、以前2階に住んでいた高橋和子という女性の話をする。そして、「水戸」という男性からの電話呼出を受けていたことを思い出すが、和子は先週日曜日に引っ越し、転居先はわからないということだった。

しかし、そこに郵便配達人が和子宛ての郵便物を届けに来たのだが、夫人から郵便物をみせてもらった橘・桃井は、中村芳子という差出人名を見い出すのだった・・・。

 

 

そして、橘・桃井は芳子の自宅を訪れると、和子は芳子の妹であり、4,5日前の深夜、突然和子が来訪、会社を辞めたからすぐにでも職安に行くと話していたことが判明します。そして、和子が水戸とつきあっていたことを知る芳子は、水戸に辞める相談をしたのかと問うと、和子は「大嫌い」「顔も見たくない」と罵倒。その後、何も言ってこないので、心配して手紙を出したとのことで、和子と水戸は東亜商事に勤務していたことも明らかになります。こうして、

「橘部長刑事より報告を受けた立石主任は、荒牧・岩井田の両刑事を従え、直ちに東亜商事・貿易課に急行・・・」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

するのですが、この後もストーリーはどんどん進み、真相に辿り着くまで、ひと山ふた山・・・、立石班の捜査は続いていくことになります。

 

当作の序盤は、「立石班の知らない場面描写」は無く、むしろ淀橋署で荒牧が関わった投書の件がストーリーの進行に大きく影響します。ネタバレにもなりますが、実はこれが真相に向けての伏線とでもいうべきもので、#411  アバンチュールの女【スペシャルセレクション】 での

>ストーリーの盛り上がりがイマイチの感は否めない

という原因は、脚本・駒田博之によるものではない推察を裏づけたと感じました。おおよその聞きこみが完了したものの、進展が膠着状態になると思われたとき、淀橋署の件がストーリーの新たな道筋を立てるのですから、伏線とした構成は見事だと思われます。

 

しかし、その反面、開始約20分過ぎの荒牧の発言

>筆跡も、まったく同じです。

あるいは、続く岩井田の発言

>文面もそうですし、どちらも、豊北のスタンプが押してありますね。

については、いったい何と比較しての発言か、まったくわかりません。これ以前の筆跡が絡むこととなると、和子宛ての郵便物しかないのですが、それが上記発言に関連があるかというと? がつきます。

となると、開始約26分後半、ギフトシューズで岩井田が立石主任に報告した内容なら納得するため、おそらく、場面の前後の挿入・入替をミスったのか? こう考えると、当作では、島宇志夫ナレーションと、関連する立石班の捜査映像がいつもと前後している点があるため、演出あるいは編集での瑕疵があったと推察できそうです。

 

このように、当作にはいつもの粗があるものの、それを包み込む面白さがあります。

まず、刑事ドラマの点では、容疑者が「現われては消え」が繰り返されるのですが、ただ単に消えるのではありません。追及するには弱いと思われたところに、タイミングよく新たな状況証拠が発見され、それを立石班が捜査する流れが非常に心地良く、あれよあれよとストーリーの流れに乗せられるのです。そして、約10分間分の上記本文でも、「水戸」なる死体の男は何者なのかという素朴な疑問を、焦らせながらも追及するのもスムーズな流れでした。

さらに、考えてみれば、当作は、新宿、杉並、上野、赤羽、大宮と広範囲な地域を、60分枠に押し込み、ストーリーが分散破綻せずドラマとして完結させているのですから、これは構成というか脚本が上手く仕上がっていることの反映であります。このことからも、当作の成功は脚本・駒田博之あると、自分には認識できました。

 

そして、人間ドラマの点でも、#130 ぽんこつ【スペシャルセレクション】 でも触れましたが、

>東京オリンピック直前

>戦後復興も進んだ高度成長時代真っ只中

のこの当時、併行して乗用車生産台数も増加の一途をたどっていったのですが、同時に、題名にいう「轢き逃げ」はともかく、交通事故も増えてきたのは疑いのないところ。当作では、交通事故の被害者の心情をとりあげたもので、非常に興味深い。

また#132  痴漢の季節【スペシャルセレクション】 (以下、直前作と略)での、立石主任のわかりにくい態度、悪くいえば綺麗事で済まそうとすることに納得しづらい思いを抱いたのですが、当作には直前作以上の道理があることは良い点でした。

 

というのは、ネタバレにはなりますが、当作はいわゆる仇討譚です、明治に入る前は、仇討は武家に限っては正当なものと認められていました。ただ、庶民の間でも、赤穂浪士に代表されるように、仇討礼賛の気風はありました。しかし、仇討は私闘でもあり、「仇討をしたら、されたものがやり返す」のも認めることにもなり、収拾がつかなくなります。そこで、明治になり政府が仇討禁止令(1873年2月7日)を出した経緯がありました。

当作では、立石主任の脳裏に仇討禁止令があったかの描写はありませんが、仇討の虚しさを語り、仇討した側、された側の家族も悲しむという二重の悲劇を生むことにもなることも訴えます。これは綺麗事では無く道理であり、直前作を越えたラストでもあります。自分は、直前作でガクッとした感情を、当作で大きく浮上させてくれた点を含めても、佳作以上の評価は与えられると感じました。