【第4回再放送】が終わって市販された、

特別機動捜査隊 スペシャルセレクション<デジタルリマスター版> [DVD]

の作品から抽出しました。

市販品なので、

(あらすじ)などストーリーの本質にかかわるところは伏せ、

スタッフやキャスト、また(備考)・(ネタバレしない範囲での一般的感想のみ

にとどめます。

将来、東映chなどで、一般的視聴されるようになったら書き加えていく予定です。

 

※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

なお、オープニングやエンディングで配役名表記がされない作品については、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」の原則だと平仮名だらけの文面となります。そこで役名・地名等は、検証本その他を引用、あるいは当方での当て字により、以下表記します。

 

 

 

☆・・・#130  ぽんこつ

特別機動捜査隊(第130回)ぽんこつ

 

 

 

(収録DVD)・・・VoL3、disc1、2021年2月10日発売

(本放送)・・・1964年4月22日

(脚本)・・・吉岡昭二

(監督)・・・今村農夫也

(協力)・・・警視庁

(協賛)・・・無し

(助監督)・・・天野利彦

(劇中ナレーター)・・・島宇志夫

(捜査担当・オープニング表記)・・・立石班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、橘部長刑事(南川直)、

荒牧刑事(岩上瑛)、桃井刑事(轟謙二)、岩井田刑事(滝川潤)、

立石主任(波島進)

 

(出演者・オープニングまたはエンディング表記)・・・配役名表記無し

日恵野晃、江畑絢子、内藤綱男、笹川恵三、森山周一郎、薄洋一、多騎由郎、

鶴島美奈、久保幸一、吉岡浩一朗、前沢奈緒子、三枝陽子、大野広高、糸井光哉、

淡野桂子、高橋照子、小塚十紀雄、園宮健司、鈴木光雄、吉原正皓、柳精、

三好道明、門田千鶴、菅野洋子、大下修、佐々木久子、池上洋子、福島美子

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

※予告篇無し

 

 

(備考)・・・

・「大俳優 丹波哲郎」(2004年)を読むと、当作で歌子を演じた江畑絢子だけでなく、当作より後に藤島主任を演じた中山昭二のことも書かれており、非常に興味深い。なお、スペシャルセレクションでは、現存する藤島班としては1番古い特別機動捜査隊(第141回)おんな が収録されている。

・練馬区では谷原と三原台が隣接していることから、劇中では死体発見現場を練馬区谷原台と設定したと思われる。

・鈍傷(ドンショウ)とは、鈍的外傷(交通事故、転落、転倒、スポーツ中の事故、挟圧などによるもの)の略で、鋭的外傷(刃物などの鋭利物や銃器による切創、刺創、銃創などによるもの)とは区別される(米盛病院HPより)。

・当作で三木純平を演じる森山周一郎は、後に大村刑事を演じレギュラーとなる。今のところ(当作観賞時)のスペシャルセレクションシリーズでは、#206 大都会【スペシャルセレクション】 が大村刑事出演の一番古いストーリー。

・劇中の「籠脱け(カゴヌケ)」とは、籠脱け詐欺のことで、「関係のない建物を利用し、そこの関係者のように見せかけて相手を信用させ、金品を受け取ると相手を待たせておき、自分は建物の裏口などから逃げる手口の詐欺」(goo国語辞書)と、一般では言われている。

・検証本76頁の(出演者)には、上記の(出演者・オープニングまたはエンディング表記)から前沢奈緒子を除いた全員が記載されている。著者は、【第1回再放送】【第2回再放送】を未見のまま脱稿したというのが自分の考えであるが、この箇所だけほぼ完璧にまとめているというのは、何らかのルートで当作を観賞したか、関係者から情報収集した可能性が高い。

・特捜隊本部には、以下のようなことが板書されているが、矛盾が目立つため参考程度に見るだけにしておいたほうが良いと思われる。

>谷原台殺人事件

>被害者:原口信夫(身元不明)

>事件発生:4月15日(註・劇中の流れでは14日が適切)

>死亡時刻:21時(註・当初空欄だったが、立石主任が橘の報告を聞いて書き込む)

>遺留品:名刺2枚

>城東自動車・三木課長

>丸五鉄屑問屋・五島(註・激中には一切登場しない)

・上記に伴い、橘の「8日午後9時前後死亡」の報告を、以下本文では改定した。

 

 

(視聴録)・・・開始約分半まで

(ネタバレしない範囲での一般的感想)

配役名表記が無いこともあり、また主な関連人物をまとめますと以下のとおりです。

(演者は・・・の次に、判明出来る俳優名を表記)

 

〇谷原台自動車教習所・運営者

〇同・教官

〇同・女生徒

〇城東自動車・庶務課長・三木純平・・・・・・・森山周一郎

〇同・受付嬢(2人)

〇同・取引先男性

〇原口自動車商会・社長・原口信夫・・・・・・・日恵野晃

〇原口の妹・ホステス・理恵

〇原口の情婦・バーやまびこマダム・敏子

〇棚橋自動車解体事務所・社長・棚橋・・・・・・笹川恵三

〇同・工員・池江

〇ラーメン龍水軒・店主

〇商事会社運転手・鈴木

〇大井田病院・院長・大井田栄三郎

〇同・看護婦

〇スナックホステス・歌子・・・・・・・・・・・江畑絢子

○スナックバーテン

〇詩子の同僚ホステス

○岡村自動車商会・管理者

〇北海道の自動車事業者・坂田明

〇町工場の社長

〇その社長の妻

〇喫茶店シャルマン・ボーイ

〇同・常連客 ・・・・・・・・・・・・・・・・・吉原正皓

○鑑識員(2人)

 

 

「通報を受けた特捜隊・立石班は、練馬区谷原台の事件現場へ急行した」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

現場は谷原台自動車教習所拡張予定地で、教習所の教官と女生徒が路上教習中に、頭部出血の男の死体を発見したものであった。鑑識員は頭部に白いペンキ類付着を指摘、鑑察医は、致命傷は頭部の鈍傷、死斑その他から死後2日経過、血液状態から凶行は他所で行なわれたもの、詳細は解剖結果待ちと告げる。橘は上着に「原口」のネームを発見、所持品が見当たらないことから、自動車などで死体運搬されたものと考えるが、岩井田の天候のせいかタイヤ跡・足跡が見当たらないとの指摘に、教習所に聞きこみに回る。

とそこに、現場の丘上から荒牧・桃井から遺留品発見とのことで、立石主任・岩井田は駆けつける。それは1枚の名刺で、だいぶ傷んではいるが「大田区田園調布3丁目・自動車メーカー・城東自動車・庶務課長・三木純平」と読め、荒牧は被害者の所持品を奪った際、犯人が名刺を落としたものと考える。そこで立石主任は、荒牧・岩井田に犯人が現場に被害者を運んだものとして近辺の聞きこみを指示、自らは桃井と城東自動車に向かうことにする。

一方、橘の教習所への聞きこみでは、土地は今年ようやく買収完了したばかりであり、運営者は肩を落とす。橘は、教習所に恨みを持つ者の犯行も考えるが、人集めが難しい昨今、教習所を辞めた者はおらず、「原口」という名にも記憶が無いという。

 

城東自動車では、立石主任・桃井が三木に面会、被害者は三木と戦友ということから、身元は原口信夫と判明。原口との再会は、10年前当社に就職活動で来訪したことが発端、そのとき名刺を渡したという。そして、結局、原口は自分で自動車販売店を運営、しかし上手くいかず、その後は中古車、部品の仕事に手を出し、しばらく音信不通であった。

ところが、2日前の14日朝に原口が会社に来訪、儲かるからと三木の肩書を貸してくれというのだが、三木は自動車販売で詐欺を考えついたのかと直感、即座に拒絶すると原口は帰っていったという。このことで、桃井は自動車販売に関わることから、陸運局にあたることを具申、立石主任は同意する。なお、三木は当日のアリバイについて、午後5時までは会社にいたが、夜は目黒の清々園での新車発売記念パーティーに出席、午後11時過ぎに帰宅したと話す。

 

特捜隊本部では、橘が解剖結果を報告。原口は、他所で殺されての現場遺棄、鈍器による頭蓋骨骨折、14日午後9時前後死亡、頭髪の付着ペイントは吹付塗装で用いられるもので、製造メーカーは広範に出回っているということであった。

そして、陸運局に出向いた桃井から報告、原口は昭和34年(1959年)5月に詐欺容疑で渋谷署に勾留、中古車販売における「籠脱け」容疑であったが、証拠不十分で不起訴になったという。しかし、当時の原口の住所が新宿区下落合の桜荘アパートであること、当時共犯を疑われ、自動車解体業者・棚橋も調べられていたことが判明する。

「翌朝、立石・荒牧の両刑事は、まず被害者・原口と関係があったと思われる、自動車解体業者・棚橋について捜査を開始した・・・」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

 

 

当作は自動車販売という商取引での犯罪を描いたもので、そのブローカー的存在と思われる原口の死によって、こういう類の犯罪には、さまざまな人物が関わっていることが認識され、非常に興味深いものがあります。本放送当時の1964年は東京オリンピック直前ということ、戦後復興も進んだ高度成長時代真っ只中ということもあり、生活水準が向上して、そのひとつの役目を自動車が果たしたものです。

これは、検索すると「1960年代半ばから80年における自動車メーカーのマーケティング・チャネル戦略の軌跡」というpdfにたどり着きますが、そこにある表の、1955年=20,268台、1960年=165,094台、1965年=696,176台という、乗用車生産台数の推移をみても明らかです。経済が回れば、関連した犯罪が増えるというのは、近年のオレオレ詐欺に代表される詐欺事件に代表されるように、当作では自動車販売に関わる犯罪がテーマとなっています。

 

現代の目からは、自動車のメーカー直営販売店、あるいは地元資本のフランチャイズ販売店が主流であることから、何でブローカーもどきの人間が暗躍するのかと思われるかもしれません。しかし当作の時点では、上記の販売店の数は少なく、メーカーは市町村の自動車修理業者と取引、そこから販売してもらう形が多かったのです。そして、そこにつけこむのが個人ブローカーで、それが犯罪の温床になったことは、現在では様々な検索で見つけることが出来るので、これまた興味深いものがあります。

今振り返れば、特捜隊のスポンサーが日産関連であるのに、よくこのような題材を取り上げたなあと驚くのですが・・・。さて、このような前提があっての観賞ですが、一点だけ指摘しますと、自動車のナンバープレートは前後有り、後ろには封印が、さらには当時の後ろのプレートは封印取付用に変形している(註・現代では変形していない)ため、そう簡単にプレートの入替はできず、見る人が見たら一目でわかるため、現実的では無いと思われますが、この点は目を瞑るとしましょう。

 

しかし、ストーリーのベースでもある、原口が殺害される直接的な理由がわからないまま進行するのはいただけません。また、犯人グループが仲間割れする理由もわからないまま、ラストの場面となるのも同様です。せっかく立石班が、「いつもと装いを新たにした捜査」を行なったのに、上手く生かされていないような気がしました。

また、そのような捜査に至る理由づけ(西本捜一係長と立石主任の打合せ)も、今までの捜査が「手づまり」なっていたかが描写されておらず、思いつきに見えてしまうのは惜しい。その点では、立石主任が協力を仰ぐ人物との関係が不明瞭というのも、似たようなものでした。

 

まとめますと、上記本文までの流れはスムーズで面白く、特に、自動車販売における犯罪というのも当世風であり、自分を本放送当時に置き換えての観賞というのも、なかなか満足できていたのです。ですので、上記指摘部分のマイナス面はガッカリ感がありました。

これは、以前触れた今村農夫也監督の、前後半のバランスが崩れた演出につながるところもありますが、(備考)での特捜隊本部で

>(板書)丸五鉄屑問屋・五島(註・劇中には一切登場しない)

>橘の「8日午後9時前後死亡」の報告

と有ったように、放送時間の問題からフィルムを削って短縮したか、そもそもシナリオ自体に齟齬があったのか(脚本・吉岡昭三)、ストーリーのベースがおかしかった可能性もあります。

本放送当時は、本篇は1回放送したらこれで終わりという風潮があったかもしれませんが、題材は良いものを選択しただけに、惜しいなあと思う作品でありました。