令和3年(2021年)も暮れようとする中、当年最後の更新となります。昨年の12月2日に特捜隊の「スペシャルセレクションシリーズ」のVol.1がDVD発売され、現在までVol.6発売まで至っておりますが、拙稿更新はなかなか進まず現時点でVol.4のdisc1に留まっています。

本来なら東映chで【第1回再放送】からの残存作・リフレイン放送をしてほしいのですが、おそらくは、来年には#801 浮気の報酬 (矢崎班最終話)【最終回】 が再放送される見込みから、最前線の例からして、「スペシャルセレクションシリーズ」の本放送順で再放送となるのでは? と危惧しています。そうなる前に、拙稿をVol.6まで完結していないといけないとは思うものの、この流れだと、拙稿終了は令和4年(2022年)の今くらいか・・・、とも感じる次第。

自分も働いている身ですので、タイムラグが生じてもその点はご容赦のほどを。

 

あと、拙稿の更新はなかなか進まずとしましたが、とりあえず令和4年(2022年)1月2日(日)からの週に、「時間稼ぎ」的な記事を2本ほどアップ。「スペシャルセレクションシリーズ」の視聴録については、1週空けまして、1月16日(日)から通常更新に戻る予定です。

 

それでは、皆さま、良いお年をお迎えくださいませ。

 

 

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【第4回再放送】が終わって市販された、

特別機動捜査隊 スペシャルセレクション<デジタルリマスター版> [DVD]

の作品から抽出しました。

市販品なので、

(あらすじ)などストーリーの本質にかかわるところは伏せ、

スタッフやキャスト、また(備考)・(ネタバレしない範囲での一般的感想のみ

にとどめます。

将来、東映chなどで、一般的視聴されるようになったら書き加えていく予定です。

 

※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

なお、オープニングやエンディングで配役名表記がされない作品については、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」の原則だと平仮名だらけの文面となります。そこで役名・地名等は、検証本その他を引用、あるいは当方での当て字により、以下表記します。

配役名表記が有るため、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」「オープニング・エンディングの表記と、劇中発声・表記が異なるときは、後者を優先」する原則に戻り、以下本文を表記します。例外は、その都度(備考)で示します。

 

☆・・・#320  女の坂道

特別機動捜査隊(第320回)女の坂道

 

 

 

(収録DVD)・・・VoL4、disc1、2021年3月10日発売

(本放送)・・・1967年12月13日

(脚本)・・・西沢治

(監督)・・・伊賀山正光

(協力)・・・警視庁

(協賛)・・・無し

(助監督)・・・小島裕重

(劇中ナレーター)・・・島宇志夫

(捜査担当・オープニング表記)・・・立石班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、

鑑識課員(新田五郎)、事務員(佐藤敏子)、橘部長刑事(南川直)、

荒牧刑事(岩上瑛)、桃井刑事(轟謙二)、岩井田刑事(滝川潤)、

松山刑事(松原光二)、立石主任(波島進)

 

(出演者・オープニングまたはエンディング表記)

・・・劇中優先のため配役名表記を省略

榎本美佐江、青野平義、真咲美岐、小原乃梨子、二宮恵子、堀勝之佑、福原秀雄、

大坪日出代、杉義一、水沢摩耶、中島晴子、水島京子、岡野耕作、若山美智子、

北原千歳、天野照子、久保比左志、岡田剛一、若杉幸司、青沼三朗、国創典、

大美純子、須永康夫、本田統、熱田芳雄、本間千枝、清水正、大阪憲、西村俊長、

岡里枝、柴田好子、平野昇、和気喬、久保田清司、秋本とも子、真崎七郎、

河合美和、鈴木康裕、上条金次、宮原栄子、藤与志夫、

(東映児童研修所)

=河原裕昌・赤池義昭・清水勇・今井英臣・小川武夫・安達隆晴、

村上不二夫、久松保夫

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

ビルの一室で、経営コンサルタントで名を馳せる男が殺害された!

そこには、若くして未亡人となった女との愛情、

そして、恵まれない家庭生活を無感動に送ってきた、

○○○の燃えるような嫉妬・・・。

悪い星のもとに、木の葉のごとく生きてきた女が、

初めて知った異性への恋慕(は)、水の中に、泡のように消えていった。

炎のごとく燃え上がる、美しくも哀しい女の心の中に渦巻く、

永遠の愛を謳いあげる「女の坂道」!

 

※ストーリーの本質に触れる部分はボカします。

 

 

(備考)・・・

・愛子を演じる小原乃梨子は、後年、映画ではブリジット・バルドーやクラウディア・カルディナーレ、アニメでは「ドラえもん」のび太、などを吹き替えた声優として著名。個人的には、「さいはての用心棒」(日本公開1969年、ジュリアーノ・ジェンマ主演のマカロニウエスタン)に出演したソフィー・ドーミエの吹替は、声質が両者とも相似しており、印象に残る。

・劇中では、「渋谷あおばざか」「あおばビル」と発声されるが、渋谷区南平台町に目黒区青葉台が隣接している。そのため、以下本文では「渋谷青葉坂」「青葉ビル」と字をあてる。

・劇中映像には「経理事務所」とあるが、国家資格で「経理士」というものは存在しない(wikiより)ため、劇中ナレーションの「けいりし」を、1927-1967年に存在した「計理士」の字を充てることとする。ただ計理士は1948年の公認会計士制度により、同年以降の登録は不能となった。

・劇中での着物女の発言、「二十後家は通せても、三十後家は通せない」というのは一般的では無いので、以下本文では改めた。これは、「二十代で夫に死に別れた女性は、一生後家を通すことができるが、三十代になって夫に死なれた女性は、夫婦生活のよろこびを味わっているので、禁欲生活が守り切れずに再婚することが多い」という江戸の諺で、古今亭志ん生などの古典落語でも見受けられる。

・劇中にある「整理会社」という表現は、「ある会社」が借入れ金等の支払いができなくなる、または債務超過に陥るおそれのあるとの名目で、太田黒が意図的に再建案(整理案)を作成して、「ある会社」を立て直そうとしたものと考えられる(要は、売掛金の帳消しによる「ある会社」の存続方法)。この制度は、債権者に不利な点も多く、現在では民事再生法があるため廃止されたが、当作では、この制度により「別の会社」が犠牲となっている。

 

 

 

(視聴録)・・・開始約分半まで

(ネタバレしない範囲での一般的感想)

主な関連人物をまとめますと以下のとおりです。

(演者は・・・の次に、判明出来る俳優名を表記)。

 

〇太田黒経理事務所・所長・太田黒茂樹・・・・久松保夫

〇同・女事務員・そのべ愛子・・・・・・・・・小原乃梨子

〇隣のえびはら真珠店・女事務員

○入居する青葉ビル管理人・玉腰   ・・・・・・杉義一

○青葉ビルの他の会社の社員(男女数人)

〇太田黒の恋人・たしろ鶴子・・・・・・・・・榎本美佐江

〇太田黒の娘・美保・・・・・・・・・・・・・二宮恵子

〇美保の恋人・竹井修・・・・・・・・・・・・堀勝之佑

〇大田黒邸の家政婦・・・・・・・・・・・・・天野照子

〇丸高物産・本社経理課長

〇同・分室経理係長・安永・・・・・・・・・・青野平義

〇同・人事課長・辻野・・・・・・・・・・・・真崎七郎

○丸一汽船・人事課長

○まるしょう石油・人事課・佐川・・・・・・・清水勇

○同・社員・下条・・・・・・・・・・・・・・本田統

○巣鴨の雀荘・大元のマスター

〇ムラセ工業・高原 ・・・・・・・・・・・・・岡野耕作

〇長谷鉄工所・社長・長谷 ・・・・・・・・・・福原秀雄

〇同・社員(多数)

〇同・長谷の妻

○同・近所の老人

〇鶴子の近隣主婦・パーマ女

〇同・犬を飼う女・・・・・・・・・・・・・・若山美智子

〇同・着物女・・・・・・・・・・・・・・・・真咲美岐?

〇着物女の息子

〇着物女の娘

〇小料理 千加・女将  ・・・・・・・・・・・・大坪日出代

○同・仲居

○同・客(4人)

〇ビューティールーム マミー・マダム・・・・・水沢摩耶

〇同・女店員(2人)

〇東西興信所・所長

〇街の不良青年(3人)

〇南組・元幹部・ロク ・・・・・・・・・・・・鈴木康裕

〇ロクの仲間

〇バー サファイア・マダム

〇同・バーテン・竹内 ・・・・・・・・・・・・熱田芳雄

〇同・ホステス(2人)

〇同・客(2人) ・・・・・・・・・・・・・・・須永康夫、大阪憲

〇警官 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・安達隆晴

○毎朝新聞記者・村上 ・・・・・・・・・・・・村上不二夫

 

 

「通報を受けた特捜隊・立石班は、渋谷青葉坂、青葉ビル3階、太田黒経理事務所へ急行した」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

室内では男が仰向けで絶命。鑑察医は死因を後頭部一撃による撲殺、死後15分経過とみて死亡時刻を午後1時半と推定、鑑識上田は凶器とみられる花瓶を回収する。橘は、被害者の所持していた名刺と身分証明証に目を配る。

「被害者は、この事務所の責任者、計理士・太田黒茂樹・45歳。その名刺には、経営コンサルタントの肩書があった」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

また、橘は、ポケットに5万8千円入りの財布・万年筆が残されていたのを報告、立石主任は物盗りの線を捨てる。さらに、荒牧が死体の傍に新たな万年筆を発見、犯人のものかと報告すると、立石主任は鑑識に回すよう指示をする。

 

そして、立石主任は発見者の青葉ビル管理人・玉腰に聞きこみ。玉腰は、巡回で事務所前を通るとドアが半開き、覗くと太田黒が倒れていたので通報、辺りに誰もいなかったが、事務所には女事務員・そのべ愛子が勤務しているという。

そこに、用事で丸高物産に出かけていた愛子が帰り、立石主任は事件の概要を話すが、愛子はなぜか冷静な態度をとる。

「この太田黒事務所の女事務員・そのべ愛子の話によると、被害者・太田黒計理士は銀座・丸ノ内の有名会社をいくつも担当して経営名の相談と指導にあたり、会社を動かす影の実力者の地位を築いていた」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

立石主任は、太田黒の仕事上のトラブルを聞きこむが、愛子は、むしろ太田黒の女性関係、恋人のたしろ鶴子を調べた方が良いと進言する。

 

と、そこに桃井が新情報を得たと立石主任を呼び出し、松山と隣のえびはら真珠店・女事務員が待つ屋上へと向かう。女事務員によると、先日の昼休み、愛子と一緒に昼食をとるため事務所のドアを少し開けたところ、愛子がストッキングを上げながら、太田黒に結婚を迫っていたのを目撃したという。しかし、太田黒は、結婚する気は無い、黙って仕事だけをやればいいと怒鳴ると、愛子を置いて外に出ていったことが明らかになる。これは、太田黒は傲慢な態度で通っており評判は良くないという、岩井田が聞きこんだ情報とも合致していた。

 

そして、立石主任・橘は、鶴子が勤務する美容室・ビューティールーム マミーを訪ねると、マダムの外出中に鶴子から電話が入り、女店員に退職を伝えたという。マダムは、女店員たちが少しのミスを辛く当たったからだろうと話すと、女店員たちはうつむいたままだった。

「その女、たしろ鶴子の行方を求めて、立石主任と橘部長刑事は、彼女のアパートを訪ねた」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

アパート前に到着後、外階段から毎朝新聞記者・村上が降りてくると、鶴子はまだ帰って来ていないと話し出す。どうやら、鶴子の夫は村上の大学時代の先輩で、夫が心臓麻痺で亡くなったため、鶴子をマミーに紹介したのが村上だったらしい。そして、マダムから鶴子が事件に巻き込まれたと連絡があったため、アパートに駆けつけたということだった。

村上が帰ったあと、立石主任・橘は近所の井戸端会議の主婦たち、犬を飼う女・パーマ女・着物女に聞きこむ。犬を飼う女は、鶴子は歌手・榎本美佐江に似て、未亡人となったあと若返ったようだと冷やかし、パーマ女は、男の出入は見かけていないが陰ではどうかと訝しがり、着物女は、「二十歳後家は立つが、三十歳後家は立たぬ」などと嫌味混じった話に終始した。

 

その後、特捜隊本部に待機中の荒牧から、死因・死亡推定時刻のほか、凶器の花瓶からは指紋未検出、死体傍の万年筆からは指紋検出されたが前科者リストには無い、ことなどが報告される。そこで、立石主任・橘は、太田黒の屋敷へ聞きこみに向かう。

太田黒邸では、家政婦から、夫人は胃癌で死去しており、19歳の娘・美保は太田黒と折り合いが悪く家出、行方不明であることを聞き出す。

そして、ある日のこと、青年が来訪、太田黒と玄関で言い合いになったことも話し出す。青年は、美保が病気で開腹手術をしないと命が危ないと、100万の治療費を頼みに来たという。太田黒は、素性のわからない男に金は出せないと断ると、青年は、美保の夫だと凄み、美保がどこにいるかは金次第と要求。しかし、太田黒は「帰れ」と一喝、青年が折りたたみナイフをちらつかせても太田黒は屈せず、要求には応じなかったという。しかし、太田黒が去った後、家政婦の姿を見た青年が、「親父に言っときな、俺もブクロのタケだ、顔をつぶされた礼は必ずする」と言い放ったことが、家政婦の脳裏からは消えなかったのだった・・・。

 

 

当作は伊賀山正光監督作品。本放送の順番とは違いますが、#408 東京番外地【スペシャルセレクション】 では「らしからぬ」面白い作品。#316  北国の女【スペシャルセレクション】 ではロケ2作演出という負担もあったのか?力を抜いた作品、と続いたところでの当作となります。

まあ、当作の率直な感想はというと、観る姿勢もあるのでしょうが、どうにもチグハクさを感じずにはいられない作品となりました。というのが、予告篇が本篇と多少趣旨を違えている節もありますが、被害者・太田黒の本性がどこにあるのか描写がいささかヌルいのです。

>炎のごとく燃え上がる、美しくも哀しい女の心の中に渦巻く、永遠の愛

というのであれば、太田黒の悪い面と良い面とを均等に描き、後者に上手く誘導するのがベターであり、人間ドラマとしての盛り上がりもありましょう。後年、太田黒を演じた久松保夫がゲスト主演の#498 女の縮図 (立石班最終話) はその典型で、複数の女性の生きざまを見せつけられながら、最後に久松保夫演じる中尾がとった行動は、思わず涙ぐむ場面であり、立石班最終話にふさわしい昇華を見せてくれました。

 

それに比べると、脚本や監督の違いもあるのですが、ぎこちない展開となるのが当作です。これだと、太田黒の死は自業自得にしか読めず、太田黒を慕う女性の目が節穴であったというメッセージにもなります。当作は、そこまで逆説的なメッセージを織り込んでいるとは思えませんので、これは構成・演出ともズレが生じているように見えます。

さらに犯人の動機も、正義感なのか、個人的願望なのか、予告篇では後者を採っているようですが、観賞している側には伝わりにくく、前者も有り得るのではないかと思えます。犯人の心の奥底に「恵まれない家庭生活を無感動に送ってきた」というのを見い出すのも、映像だけでは、自分にはどうもわかりにくい。。。

これらのズレは、鶴子を演じた榎本美佐江が当時としてはビッグネームであることに起因します。wikiを参照すれば本放送時の人気スターであるというのはわかるのですが、とにかくドラマであるのに実在歌手・榎本美佐江のプッシュ映像描写が目立ち、それに時間を割かれている感が強く、肝心の太田黒や犯人の細かい描写まで手は回らなかったように見えます。

 

その反面、刑事ドラマとしては、複数の容疑者が現われ、新たな事実とともにリストから外れ、を繰り返し、流れるように展開している点は評価できます。これは、「迅速(スピード)、科学(サイエンス)、秘密(シークレット)の3S」が上手く起動しているともいえます。

しかしながら、この長所が、上記までの短所を大きく包み込むまでには至らず、個人的には、佳作よりも落ちるかなとの印象です。歌手・榎本美佐江を上手く使うなら、それこそ犬を飼う女の台詞ではないですが、実は鶴子が榎本美佐江の妹だったとか、奇抜な設定にしていたらとも考えます。同じ歌手・黒岩三代子がゲストの#300 螳螂(カマキリ)のような女【スペシャルセレクション】 という秀作のレベルまで至らなかったのは、構成によるものか、演出によるものか、微妙なところですが、せっかくのゲストなのにもったいないという思いです。

 

その他では、現在では声優の大御所・小原乃梨子の、若き日の映像を観れたという点は良かった。実は、ある動画サイトに、特捜隊の場面を編集した。野沢雅子・池田昌子・小原乃梨子の3声優揃い踏みの動画があります。小原乃梨子の場面は、まさに当作であり、特捜隊初出演にして最後の出演作でもありました。部分切りとりの場面より、やはり全体を観れることに、満足感を得ることが出来ます。そういう意味では、当作観賞に意味があるともいえますね。