※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#763  逆光線の女

 

 

 

(本放送)・・・1976年6月30日

(再放送)・・・2020年4月9日

(脚本)・・・元持栄美

(監督)・・・広田茂穂

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・矢崎班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷昭二)、

谷山部長刑事(和崎俊哉)、桂刑事(佐竹一男)、神谷刑事(山口あきら)、

入江刑事(池田駿介)、田坂刑事(倉石功)、矢崎主任(亀石征一郎)

 

(出演者)・・・

山本豊三、成川哲夫、木下清、北村晃一、根本嘉也、溝呂木但、花原照子、

大原百代、片山滉、逗子とんぼ、若尾義昭、立川談四楼、毒蝮三太夫、水原麻記、

岡部正純、藤本三重子、小林勝彦、渥美国泰、久保田民栄、梅津栄

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

・・・・・・・・・・(部屋でくつろぐ、姉弟の場面)

姉 「誠ちゃん、長い間ほんとうにありがとう。

   お姉ちゃん、何て言っていいか・・・」

弟 「やだなあ姉ちゃん。

   僕たち、二人っきりの姉弟じゃないか・・・」

・・・・・・・・・・(以下、ナレーション)

ある男の死によって、再び悲劇が始まった!

下積みの中で真面目に働く仲間を裏切り、

すべてを賭けた女の夢を破る・・・。

男の信頼を壊し、少年の希望をも砕く・・・。

そして、新たな死を招いた・・・!

残されたふたつのブローチは、

幾重もの愛の絆と悲劇を秘めて、鈍く光った。

次回、特捜隊、「逆光線の女」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・テレビドラマデータベースを読むと、当作が広田茂穂第1回監督作品のようである。

・エンディングの、毒蝮三太夫、水原麻記、岡部正純、藤本三重子、小林勝彦、渥美国泰は、「友情出演」との表記有り。

・鑑識員2人の出演場面は見当たらない。

・かつて三船班・村井刑事を演じた北村晃一が、#590 愛の崖 以来、リアルタイムでは約3年以上経っての当作ゲスト出演。信和化学工業の労働組合委員長・横井を演じている。

 

 

(視聴録)・・・開始約11分後半まで

 

式場では、多羅尾淳一(成川哲夫)と伊吹友子(久保田民栄)の結婚式が厳かに行なわれていた。馴れ初めは、友子の弟・誠(木下清)が勤める多羅尾プラスティック加工工場の若社長が淳一であり、この目出度い日には、誠のほか、社長で淳一の父・多羅尾(梅津栄)、工員たち(毒蝮三太夫、岡部正純、溝呂木但、立川談四楼?)も出席していた。

 

みんなからの祝福を受け、淳一・友子は車で九州に新婚旅行に向かうが、淳一の希望もあり先に板橋区役所で婚姻届を提出することになった。しかし職員(未詳)から、友子は既に柳沢道夫(山本豊三)の籍に入っていたことが判明、怒りを覚えた淳一は道夫のもとに直談判すべく車に乗り込む。思い起こせば式場を車で出る前に、届けられた花束を誠が持って来たとき、嫌がらせなのか黒白のリボンが付いていた件もあった。勝手に妻にされた友子は同席を願うが、頭に血の上った淳一は、友子にアパートに帰って待っているよう制する。。。

 

ところがその日のうちに、マンションに住む道夫が、ロックの流れる室内で胸から血を流し絶命していたのが発見、死亡時刻は午後3時と推定され、矢崎班は捜査を開始。谷山・入江は道夫の勤務先・信和化学工業を訪れるが、既に倒産・閉鎖しており、労働組合の旗・ポスターなどで門塀は埋め尽くされていた。しかし、組合委員長・横井(北村晃一)、委員・大島(若尾義昭)が、ガードマン(三島一夫)の制止を振り切り、金庫を開け書類を奪おうとする事態が発生。谷山・入江は急遽2人を逮捕、特捜隊本部へと連行する。

 

矢崎主任・神谷は道夫の写真を持ち花屋店主(大原百代)に聞きこみ、道夫から花束を式場に届けるよう依頼され、その飾りつけにトイレを貸したといい、そのトイレには黒白のリボン切端が落ちていた。そして式場フロント(榎本英一)に聞くと、花束が包装紙に隠れていたためリボンの有無は未確認だが、誠に渡したことが判明。さらに駐車場に花束の残骸を発見、リボンと切端は一致していた。とそこに、谷山から横井・大島の連行の報告が入り、矢崎主任は特捜隊本部へと戻り、田坂・神谷には淳一の工場をあたるよう指示を出す。

 

工場は、結婚式出席のあと全員が戻ってきており、誠から田坂・神谷の来訪を聞いた多羅尾は外で話を聞く。道夫の写真を見せられても覚えの無い多羅尾は、淳一や友子が殺人事件に関わっているはずはないと憤慨、そのようすを誠は立ち聞きしていた。

一方、特捜隊本部に戻った矢崎主任は、谷山・入江とともに横井・大島を訊問。すると、道夫は組合を裏切り、会社を倒産に追い込んだと供述する。道夫は、専務・鳥山(渥美国泰)の邸宅に迎えられるほど昵懇で、鳥山の一人娘・初子(水原麻記)からも信頼されていた。そして、道夫は鳥山から組合分裂に動く手付として100万を受け取り、分裂に成功した暁には400万を追加で受け取る密約をしており、これは組合員も目撃していた。

 

その後、淳一・友子の足どり捜査を行なう田坂・神谷は、板橋区役所に到着。ここで矢崎班は、友子が既に道夫の籍に入っていたことを見出すのであった・・・。

 

 

ストーリーはその後、矢崎主任・谷山・桂が現場を再検証。住人(花原照子)から、午後3時前後、道夫の部屋に出入りした3人の目撃情報を聞き出します、順に、1人目は22,3歳の女性、2人目は27,8歳の新調背広の青年で、2人とも顔は覚えていないものの、3人目の20歳くらいの男で顔をみればわかるとのこと。谷山は、1人目は友子、2人目は淳一ではないかと推察しますが、そこにマンションの道夫の部屋を見上げている誠を発見、谷山はどこかで見たような顔だと思う間もなく、住人から誠が3人目の男との指摘を受け、急遽、誠のところに向かいますが、誠に逃走を許してしまいます。

 

一方、田坂・神谷は友子のアパートを張りこむ中、友子に会いに戻った淳一を発見、友子不在に肩を落とす淳一に聞きこむことで、ストーリーはまた新たなステージに向かいます。そして、出演者はこの後も、湘南病院医師(片山滉)、クラブのマダム(藤本三重子)、そのクラブの客(逗子とんぼ)、道夫殺害事件の110番通報者・おたけ(小林勝彦)が登場、事件に関係有るのか無いのか、興味津々に展開されます。

 

 

当作は(備考)でも触れましたが、広田茂穂第1回監督作品と思われ、「友情出演」という枠で、名のある男優・女優がくくられているのは、ご祝儀的なものとも感じられます。助監督として、男優・女優と接することが多く、信頼も得ていたため、このような表記にしたかと思うのですが、検索しても広田茂穂の詳細はヒットしないため、これは自分の想像にしか過ぎません。

ただ、第1回監督作品、という雰囲気は味わえます。これは、悪い意味になるかもしれませんが、特捜隊独特の辻褄の合わなさが当作では非常に目立ちます。コンテも上手くできなかったのでしょうか、上記本文だけみても住人の目撃した3人の順番についても、開始約15分半ばの「ある人物の回想」と時系列が合いません。さらには、目撃した人物の登場順も、そのとおりだったら道夫のマンションでの谷山発言に矛盾をきたすことになります

 

また、前述した「友情出演」の毒蝮三太夫、水原麻記、岡部正純、藤本三重子、小林勝彦、渥美国泰は、特捜隊の番組レベルだと大物クラス。これらを上手く使いこなしたかというと?がつき、特にその中での「ある人物」の扱いについては、勿体無いとともに、宝の持ち腐れ感が強いものでした。そして、ラスト10分くらいから、急ぎ真相解明まで持っていこうとするバタバタ感は、視聴している側からすると「そんなのあり?」とも感じられます。そこでの目撃者にしろ、遺留品にしろ、飛び道具で出してきたようであり、最初から観ていることはなかったとも。。。

この監督さんは、後年、特撮モノを多く担当、自分が良く視聴していた「快傑ズバット」も監督したこともありますが、当作単品だけの評価でいえば、佳作に至るまでには仕上げてはいません。テレビドラマデータベースでは、このあと数作を特捜隊で監督することになっていますが、このあとはホップ・ステップ・ジャンプしていってほしいなと思います。

 

さて、なぜ監督評に触れたかというと、脚本の元持栄美は、ベストコンビというくらい龍伸之介監督と組むケースが多いのです。そしてこのコンビは、十八番というくらいに「組合」を登場させることが多いのですが、当作もその例にもれません。龍伸之介監督が(当作以降はわかりませんが)、#733 銭湯ブルースを最後に特捜隊のメガホンを握っていないことから、当作はもともと龍伸之介監督予定だったのが、何かの事情で広田茂穂に変更され、第1回監督というハンデを「友情出演」で補ったとも考えられるのです。

個人的には、当作の題材は龍伸之介監督の好きそうな内容でもあるので、もし演出が違ったら、面白味もまた違ったものであったでしょう。

 

それゆえ、当作は、興味津々に展開されるものの、盛り上がりという点では欠けているように見えてしまいます。刑事ドラマでもなく、人間ドラマでもなく、観ていて平坦な道を進む車を観ているような、例えていうとそんな感想を持ちます。

(今回は、このような事情もあり、作品自体にあまり集中・考察できない、深く追究しにくい部分があることで中途半端な視聴録になります、申し訳ありません)

 

ただ1点、注目すべきところは木下清の存在でしょう。この俳優さん、初めて特捜隊で拝見したのが#459 裸の狂宴 で、再放送が2015年4月30日でしたので、5年前から観ていたことになります。リアルタイムでは、本放送が1970年8月19日、当作本放送1976年6月30日なので約6年の間隔ですが、視聴初期の青臭い印象からは成長した感がうかがえます。個人的には、当作では藤本三重子との絡みはありませんでしたが、#613 転落の愛 、#707 蒼い殺意 でのコンビネーションは「馬が合う」のでしょうか、面白味がありました。もし、特捜隊が続いていれば、俳優人生も大きく変わったのではないかと考えます。