※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#678  追いつめられた群(ムレ)

 

 

 

(本放送)・・・1974年10月30日

(再放送)・・・2019年6月13日

(脚本)・・・佐々木武観

(監督)・・・高桑信

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(西郷昭二)、鑑識員(田川恒夫)、

事務員(田中正吾)、関根部長刑事(伊沢一郎)、水木刑事(水木襄)、

石原刑事(吉田豊明)、松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、

三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

牧れい、関口篤、岡部正純、菅沼赫、千歩憲生、杉山元、大月優子、上野綾子、

山本緑、小倉雄三、影山丈二、町真由美、市川ひろし、安藤純子、宗方奈美、

服部哲治、真木沙織、藤岡重慶

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

・・・・・・(ある部屋での、下着姿の女と、帰り支度の男の場面)

女 「あの・・・、これで、借りたお金は

   帳消しに帳消しにしていただけるんですね?」

男 「(笑いながら)冗談じゃありませんよ。

   これは2人の間の、恋愛行為ですからね。

   それとも、何ですか?奥さんは、

   体をお金にするつもりだったんですか!?」

・・・・・・(以下、ナレーション)

トイチという高利の金を貸す、悪徳高利貸しが刺し殺された。

事件を追う三船班の前に、次第に暴かれてくるトイチの巧妙な手口。

被害者の背中に突き刺さったナイフは、借りた金に押し流されまいと、

必死に抵抗する犯人の姿だった。

金という鎖が、人々の生活を容赦なく縛りつける。

その陰に、夫を、そして子供までも裏切って転落していく女たちがいた!

次回、特捜隊、「追いつめられた群(ムレ)」に御期待ください。

 

 

(備考)・・・

 

 

(視聴録)

・・・開始約21分半ばまで

 

午後4時のある住宅街、小野崎家の前では幼い娘・マリ子(梶原泉)、息子(未詳)が遊んでいるが、家の中では夫人・雪江(安藤純子)が進藤よしお(服部哲治)と情交を終えたところだった。が、正しくは、高利貸しの進藤が、雪江の借金返済の困窮につけこんだもので、これで返済が終わりではなく、今月分の利子免除のみにとどまり、雪江は黙って頷くだけだった。

意気揚々と家を出る進藤だが、「庶民金融・滝沢商事」の車を見て逃げ出す。車の滝沢(岡部正純)、上林(カンバヤシ、千歩憲生)も進藤に気づき追跡する。しかし見失ったため、進藤の情婦のホステス・みどり(宗方奈美)を訪れ詰問。すると、みどりは、進藤は1週間ほど寄り付かず、どこかの奥さんとしけこんでいるのではという返事に終始、行方は掴めそうになかった。

 

夜になり、吉村家の夫人・康子(真木沙織)が息子・清(高橋清彦)を連れ、雪江の自宅を訪れる。康子は、進藤を雪江に紹介したことがあるのだが、今夜は妹が盲腸手術のため入院、手伝うため清を預けようと頼みに来訪、雪江は了解する。

そして、康子は午後10時くらいに戻ると言って出かけるが、向かった先は旅荘・きたわであり、待っていたのは進藤であった。進藤からは体の要求、ためらう康子であったが、そこに中年男(小倉雄三?)が若い女を連れ、クレームで部屋にやって来る。進藤は女衒まがいのこともしており、康子は、その若い女が妹のあいざわ弘美(牧れい)だと気づき声をあげると、弘美はクレームの元となった、くすねた金を返し部屋を出る。そして、進藤はそれを追いかける。

 

その翌日、三船主任、畑野は滝沢商事を訪れ、社員のピンクシャツ男(杉山元)、千吉(影山丈二)に訊問を強行、滝沢、上林の居場所を聞き出す。そこに出向くと、三船主任は2人に進藤の写真を見せ、昨晩11時ごろ背中を一突きで刺殺、神社で発見されたいきさつを話し、事件真相を追及するが、2人はのらりくらりかわすことに徹する。一方、みどりを聞きこむ松木、水木は、進藤への憎まれ口を叩きながらも泣き出す姿に、芝居がかったものを感じる。

 

現場では、警察犬を動員して物証集めを進める三船班だが、松木、水木の報告を聞いた三船主任は、みどりの監視を指示。進藤は滝沢商事を騙り高利貸しをしており、さらにみどりの金を資本としていた節があるからだが、進藤が刺された傷跡がエグれていることが気になっていた。そして草叢から、畑野がヒールの外れた靴を、警察犬も血のついたナイフを見つける。

 

一方、関根、石原は、進藤がよく行くクラブハウスへと出向き、ウエイトレス(町真由美)に聞きこむが、奇しくもここには住宅街のセレブ夫人2人(大月優子、上野綾子)も来店していた。2人は小野崎(菅沼赫)、吉村(関口篤)の稼ぎの話で盛り上がっていたが、そこに雪江が現われ陰口には嫌味で返答して退店する。その姿を見たウエイトレスは、1週間前に進藤と雪江が来店していたことを話すと、関根、石原も退店して、近くの公園で雪江に聞きこむ。

 

雪江は、小野崎に内緒で進藤から借金したことを告白、昨日の午後4時ごろ訪れた進藤は帰ったこと、そのとき今月分の利子だけは払ったことなどを話す。しかし、関根の、進藤からは金銭貸借だけかの質問には声を荒げてしまい、訊問を打ち切る。雪江には隠してるところがあるというのが2人の共通見解だが、旅荘・きたわで進藤が女といたとの情報もあり、そちらに向かうことにする。

仲居(山本緑)は、昨晩11時、2組の男女でトラブルがあったようで、若い女を進藤が追いかけて行ったという。そのとき進藤は背広の上着を置き忘れ、若い女は靴のヒールを落とし、その2人は戻らなかったことが判明。そして、残りの男女2人は、仕事柄客の顔を見ないようにしているので、顔はわからないとのことだった・・・。

 

 

ストーリーはその後、特捜隊本部で情報屋(あるいは別の課の刑事か?、藤岡重慶)からサラリーマン金融のカラクリを三船主任、畑野が聞いているところに、関根、石原が戻り、遺留品のヒールと畑野が見つけた靴を照合、一致することがわかります。さらに、鑑識から、ナイフの血液型は進藤と、形状は進藤の傷口と、それぞれ一致して凶器と認定、遺留品のボタン状のものは眼玉(人形の目玉)であることも判明します。そして、現場近くの三原台派出所に落とし物で届けられた手帳が、進藤の顧客名簿でもあったことから、事件は大きく展開します。

 

 

当作は、その真相追及のポイントというか伏線が散りばめられており、

・開始約11分過ぎの、ある人物の発言

・開始約14分過ぎの、三船主任の見解

・開始約25分半ばからの、ある場所での映像場面

これらが、ラストに至ったときに「なるほど」膝を叩く構成に仕上げています。

直前の作品、#677 十円玉の謎 が、同じ高利貸しを描きながらも、キャラクターの個性に作品が食われてしまったのに比べると、ラスト10分前くらいからのアクション場面は痛快でもあり、三船班の良さを知らしめる映像でもあります。三船主任の

>お前らに苦しめられた人たちの、100万分の1の償いだと思え!

の台詞には魅かれます。これは、波島進、中山昭二、里見浩太朗、亀石征一郎には出せない青木義朗の凄みであり。特捜隊を代表作とした一俳優の貫録に見えました。

これで、以下に挙げる「おかしな点」も、帳消しとはいかないまでも、多少は間引けそう・・・。

 

「おかしな点」というか、作品が成立しずらい点として、最近の特捜隊の作品にもいえることなのですが、捜査班の気づかないうちに、事件当時者(容疑者、関係者)の間でストーリーが流れていき、番組終盤まで捜査班が全く新事実に気づかないところが挙げられます。これは、視聴者により好き嫌いがわかれる問題ですが、個人的には捜査班が視聴者と一緒に事件に立ち向かうスタイルが好みなので、置いてきぼりの展開は「嫌い」というより「苦手」なクチです。

これは、【第3回再放送】での、

>捜査班が視聴者と一緒に事件に立ち向かう

という「立石班」に見慣れたところもあり、特捜隊に魅かれた一因でもあるので、こう考えてしまうのでしょう。まあ、それでも、構成が上手く整えられていれば、別段、真相になかなか気づかない捜査班でも良いのですが、当作にはそういった点が残念ながら希薄に見えがちです。

 

たとえば、

・藤岡重慶の出演場面

・遺留品の眼玉の場面

が挙げられます。

前者では、藤岡重慶を仮に情報屋と称しましたが、作品では何の役柄かさっぱりわかりません。さらには、既に、サラ金、トイチ、高利貸しについて三船主任、畑野から語られているのに、情報屋の話に今さら「なるほど」となる三船主任、畑野もよくわかりません。悪くいえば、三船班がバカにされているようにも見えてしまうのです。

後者でも、何時、この遺留品が発見されたのか明らかにされず、いわゆる飛び道具的に登場させるのもわかりにくいところです。そして、飛び道具といえば、ラスト5分の取調室での、三船主任の「ある人物」への指摘も唐突すぎです。

これらの、構成というかバランスの悪さで、せっかく「伏線からの真相解明」が台無しになりかねない出来になっているのは否定できないと思います。賛否両論あるでしょうが、あくまで個人的見解であり、視聴者が判断する範疇でもあるので、是非とも放送をみてほしい気持ちです。

 

ただ、理由づけを行なえば、監督の高桑信は映画主体の人のようで、テレビドラマも当作まで数えるくらいの演出です。手慣れていないところもあったかな、という気もします。また、上記の構成の不整合のほかにも、エンディング表記に出演していない配役・出演者も見かけたことから、フィルムを撮りすぎてしまい編集で調整したのですが、ストーリーと合わないところが出てきたことも有り得るでしょう。

それでも、前述の三船班の痛快アクションは、特捜隊の個性がわからないと出来ない演出とも見えます。また、テレビドラマデータベースでは、その後も特捜隊で演出する機会がありますので、次回、次々回への期待として考えることもできましょう。

 

それと、近作では、金融業(高利貸し含む)の登場するストーリーが目立ちます。5月からの再放送分をみてみると、#677 十円玉の謎 、#674 女はぐれ鳥 、#672 俺の殺した女 、#668 嘘(ウソ) 、は金融業者が殺害されるストーリーで、#675 疑惑の夜 、は金融業者の存在がストーリーの要になっています。当作を含めると、14分の6ですから半数近くの回が対象となります。これは、1974年当時の世相は、数年前からのドルショック、オイルショックと続き、景気が傾いた状態だったことが影響してそうです。影響を受けた人たちが金融業者に駆け込む事例が多く、中には当作のような金融業者が世間を跋扈していた時代だったのかもしれません。

 

さて、弘美を演じた牧れいについて、かつて#556 若い男と 女の坂道 でのエンディング表記で「牧れい子」とありましたが、映像登場は見当たりませんでした。wikiでは、一時「牧れい子」と名乗っていたとありますが、同一であろうとなかろうと、アップで特捜隊に出演したのは、当作が初めてだと思います。当作の牧れいはキャラ的にもとっつきにくい役柄ですが、個人的には、「ザ・スーパーガール」でのアクションが記憶にあり、時代が違えば「ポスト志穂美悦子」になっていたかもという記憶があります。

テレビドラマデータベースでは、「ジャングル #18逆転タイムリー」(1987年8月7日放送)が、最終出演作になっているようですが、wikiをみると「ファミリー劇場」で2009年「輝けスーパーヒーロー同窓会」に出演されているようです。なお、ブログもやっており、かつてyahooブログで「牧れい・・・だった私」を書かれていたようですが、今はアメブロに移行されています。