※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#624  恐怖の ハネムーン】

 

(本放送)1973年10月17日

(再放送)2016年11月17日

(脚本)横山保朗

(監督)松島稔

(協力)無し

(協賛)日本高速フェリー株式会社 さんふらわあ、

    自然と人間との調和  山林復興株式会社、かごしま 国際ジャングルパーク、

    鹿児島 桐島国際ホテル、指宿 白水館、高知 桂松閣

(捜査担当)三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、田中係長(山田禅二)、倉岡刑事(倉岡伸太朗)、

石原刑事(吉田豊明)、松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、

三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

山口暁、小柳冴子、大林隆介、成川哲夫、堀辺隆一、亀井三郎、片山滉、金子勝美、

伊藤慶子、半田明子、宮沢奈穂美、大阪憲、白鳥勝、宗方奈美、平凡太郎、

森山周一郎

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

楽しかるべき新婚旅行の夜、

新妻の身辺に奇怪な出来事が連続して起こった。

それは、死んだはずの女から不気味な電話がかかった。

幻のように現れ、風のように消えたりするのであった。

いったい、この新妻の過去には、何が隠されているのであろうか?

次回、特別機動捜査隊、

南国九州は鹿児島、霧島を舞台に繰りひろげられるサスペンス、

「恐怖の ハネムーン」にご期待ください。

 

 

(備考)

・「#614 死刑囚の プレゼント」「#619 南国慕情」「#624  恐怖の ハネムーン」は、脚本、出演者の共通点から、鹿児島・高知ロケ合わせ撮りと推察

・特捜隊で山口刑事を演じていた山口暁が、ゲスト出演。

 

 

(視聴録)

 

東都大学病院・霊安室では、三船主任、関根部長刑事を前に奇妙なことが起こっていた。八王子のモーテル・夢の火災跡から発見された焼死体に、札幌の小泉ごろう(亀井三郎)、鹿児島の稲村ただお(森山周一郎)が現われ、いずれも自分の妻だと申し出たのだった。ただ、遺留品のヒスイの指輪については、小泉は見覚えが無く、稲村は母の形見であり、結婚のとき妻・小夜子(宗方奈美)に送ったものだという。そして、稲村は東京出張のとき、バーのホステス・たけなかユリ(小柳冴子)との浮気が原因で小夜子が家出したことも話し、三船主任に小夜子の写真を提供する。

 

また、特捜隊本部に、宮崎県・あいりん病院の精神科医・しみず(片山滉)が白服女性を連れて来訪。半年前の深夜、霧島高原で倒れていた女性で、身体中泥だらけ、記憶喪失で発見され、「主人」「ユリ」「殺される」と叫ぶ発作があるという。東京の大学病院での治療もあり上京したところ、八王子のモーテル火災事件の被害者に特徴が似ていることから訪れたのだった。三船主任は、写真の小夜子と瓜二つなことに言葉を失う。

 

その後、稲村はバーにユリを訪ね、同僚ホステス(金子勝美)からマスター・なるみ(山口暁)と新婚旅行で鹿児島へ行っている話を聞きだすが、石原刑事の尾行には気づかないようすだった。結局、稲村は遺体を鹿児島まで運ぶことになるが、三船班は事件解決のこともあり、鹿児島までさんふらわあ号で搬送する手助けを行ない、松木部長刑事、石原刑事を同伴させる。

 

ところが、同船にはユリ、なるみも乗り合わせており、運送業の男(平凡太郎)、その娘(宮沢奈穂美)は遺体搬送車に気がつき、船内バーのバーテン(白鳥勝)に話しだす始末だった。その最中、ユリは、船内で稲村と遭遇、遺体搬送のいきさつを聞いて動揺する。そして、船内電話boxから鹿児島の弟・弘志(大林隆介)へ電話しているところ、驚きの声をあげる。boxの中から小夜子似の白服女性を見たからで、なるみが駆けつけると間もなく気を失ってしまう。

 

ユリは事務長(成川哲夫)、案内嬢(半田明子)の看護により部屋に落ち着くが、夢で過去の出来事にうなされる。

夢の中では、小夜子は霧島国際ホテルで稲村と密会していたユリを尾行、稲村と離れたユリを林の中へ誘い出し格闘するが、その最中転倒、後頭部を打ちつけてしまう。困ったユリは弘志に連絡、駆けつけた弘志はユリの自首を遮り、死体を埋めようと提案、実行に移したというものだった。

 

目が覚めたユリは、案内嬢からの外線電話に出てみると、追いかけて来るように小夜子の声が聞こえ、恐ろしさに部屋から抜け出す。そこに、稲村と再度の遭遇、事情をすべて打ち明けるが稲村も信じられない気持ちだった。

そのころ、東京の三船班はユリの弟・弘志の線を見出し、関根部長刑事、畑野刑事が鹿児島へと空路で向かっていた・・・。

 

 

当作は横山保朗自身の脚本で、かつて鹿児島三部作となった、北村秀敏監督「#454 霧の中の聖女」、天野利彦監督「#456 ハイビスカスの女」をモチーフとしながら、さんふらわあ号を中心舞台とした展開目まぐるしい作品です。全45分のうち半分近くを船内描写で占めているのが特徴で、ややもすると、限定された空間なので倦怠感が出るところを、効果的な回想場面で補って興味は尽きません。

さらに、これで事件解決かというところを、二転三転、「まだ続くのか」と驚嘆するあたり、上手い作り方だと思います。特に、ラスト5分は急展開というべき流れで、「ええっ!」となってしまうところに驚きました。終わってみれば、すべてを見切っていた三船班、と言ってもいいくらいの展開です。勢いよくエンディングとなるところに、三船主任、石原刑事の寸劇も御愛嬌、これは再々放送はまだ先ですが、見てもらいたい作品のひとつです。

 

となれば傑作というべき作品と思いがちなのですが、やはり特捜隊の宿命なのか、辻褄が合わないことが出てきているのです。一番の辻褄が合わないことは、焼死体の指輪の件です。真相通りとするなら、誰が指輪を焼死体につけたのか、これが明らかにされません。回想場面でも、指輪の話題は出てきません。キーポイントとなるべきところなのに、この点はどうしたことか?

 

また、計画的犯罪と位置づけられていますが、死体を埋めることは偶発的に出たことですので、この点まで計画性があったとは思えません。もっといえば、格闘したときの転倒まで、計画的だったというのも無理があります。この点、もしかしたら、撮影した場面を編集で削除した可能性もあるので何とも言えませんが、それだったら繋ぎ目が杜撰な印象は避けれません。

 

そして、これはネタバレに近いことですが、番組自体がそれをやってしまっています。開始後、5分くらいのところで特捜隊本部での場面があるのですが、ここで「目に映るあること」が事件の真相のヒントになっています。先ほど触れた「すべてを見切っていた三船班」に繋がると考えられなくはありませんが、その割には真犯人の「おとぼけ」をなぜ見破れたのか、追及が無いのが物足りないところです。あと、物証が飛び道具のように、伏線も無くいきなり出してくるところも面食らうところです。関根部長刑事の大きな声での指摘も迫力はあるのですが、いきなり言われたら「聞いてないよ」的な感慨になってしまいます(笑)

 

しかし、勢いよくラストまで展開させた功績は大きく、この点、上記の辻褄が合わないところと相殺されるようになるため、佳作どまりという評価に落ち着くのだと思います。

さて、横山保朗脚本の高知・鹿児島三部作はこれで終了ですが

#614 死刑囚の プレゼント     監督・松島稔

#619 南国慕情           監督・龍伸之介

#624 恐怖の ハネムーン        監督・松島稔

のなかでは、2作目、3作目が辻褄が合わないところが目立ち、その点では1作目に軍配が上がりそうです。しかし、愛着という点では、かつて立石班が鹿児島で活躍した三部作の香りを漂わせているのは3作目の当作であり、それを三船班が展開させることで、充分ノスタルジーを感じさせるものでありました。