※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#503  純愛の海】

 

(本放送)1971年6月23日

(再放送)2015年10月1日

(脚本)小川記正

(監督)天野利彦

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

田中係長(山田禅二)、水野鑑識員(田川恒夫)、西田鑑識員(西郷昭二)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、水木刑事(水木襄)、石原刑事(吉田豊明)、

畑野刑事(宗方勝巳)、森田刑事(北原隆)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

新田信二、中千鳥、佐竹一男、伴東武、浜田伸、弘松三郎、杉山俊夫、宮川洋一、

如月寛多、星美智子、伊豆肇

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

理想の世界をつくるという理念に取りつかれ、

目的のためには手段を選ばず、ただ、しゃにむに行動する・・・。

そうした過激行動派学生に虫けらのように殺された者、泣き叫ぶ遺族・・・。

この姿を目(マ)の当たりに見た特捜隊の刑事たちは、

怒りに震え、直ちに非常線を敷いた。

愛妻が死を宣告され、現実と理想の谷間で苦悩する青年の行動に

ポイントを置いた三船班は、徹底的追及を開始した。

一方、アジトに潜った同志たちは、新たなPBM作戦、

すなわち政府・財界の主要人物誘拐、

武器略奪、金融機関襲撃作戦を練っていた。

仲間を救うため、自爆したリーダーのヒロイックな行動に、

一層燃えあがっていった・・・。

現代社会がもたらした矛盾

人間の心のひずみ

その渦の中に巻きこまれた人々の姿を鋭く追及した、

次回の特捜隊、「純愛の海」に御期待ください。

 

 

(備考)

・田中係長(山田禅二)が初登場の回。

・PBM作戦とは、共産主義を謳う赤軍派(当作では白軍派と表現)の革命作戦を指す。

→(追加)R3.3.3

当作で鑑識員(鑑識課員)の苗字が、オープニングで初めて表記される。

 

 

(視聴録)

東都信用金庫が白昼強盗に遭い、現金268万9千円が強奪、守衛ほか2人が射殺された。白軍派分子の、リーダー・牛山五郎(佐竹一男)以下、酒谷俊夫(伴東武)、今井順司(中野文吾)、長谷川武(浜田伸)、津川健吉(新田信二)、見張り役の女(未詳)の仕業であった。

しかし、犯行に使われた盗難車の捜査から犯人たちの身元はおおかた割れ、三船班は津川の住む江の島方面に捜査の手を広げる。津川の母・夏子(星美智子)、津川宅出入りの植木屋・植留(宮川洋一)、下宿先の女将(未詳)、ヨット部・相川(山本健)および向井(小中松治郎)たちからの聞き込みから、津川は恋人・弘子(中千鳥)が出来てから転向、その後2人は結婚、弘子は湘南総合病院に入院中との情報を得る。さらに、津川は前日までの入院費16万円余りを病院に支払済で、その出処を求め畑野刑事は逮捕を主張するが、なぜか三船主任は植留の「お金は自分が津川に貸した」という証言を受け入れるのであった。

そんな最中、津川は内科部長(伊豆肇)から弘子の病状を宣告される。また、逃走中の白軍派はリーダー・牛山の自爆行為で逃げ延び、次なる行動を企んでいた・・・。

 

これは、監督さんによって、体制派・反体制派どちらに軸をおいて描くかで作品の出来は変わってくるでしょうが、天野利彦監督はできるだけ真ん中の位置で両者を描こうとしたかがわかる作品です。でなければ、水木刑事のヨットハーバーでの聞き込みや、尾行中の畑野刑事と水木刑事の会話など入れるはずもないでしょう。

ただ、天野利彦監督の考えはラストの凄惨なシーンで語られていると考えられ、予告篇の

>目的のためには手段を選ばず、ただ、しゃにむに行動する・・・

の本当の意味が分かると思います。

 

実際、革命を標榜しているグループが分裂して争い血を流し、そしてヘンなところで握手する、近年の特定秘密法や平和安全法制での国会前での騒動を見るにつけ、同調する国民がどれくらいいたのか? 当作当時は、少ない情報媒体ながら報道側がまだマトモだったため国民は冷静に判断できましたが、近年のイカれた報道側の姿勢ではどうしようもありません。それでも、現代は自分たちで調べられる方法がいくつもありますので、報道側の術中にはまることは少ないでしょう。・・・話が横道にそれすぎました。

 

当作で注目したいのは畑野刑事の変貌ぶり。「#466 十年目の事件」で三船主任の行き過ぎた(?)捜査に懐疑的だった畑野刑事が、当作では控えめな三船主任に抗議するところ、三船主任は一言も発せず独り歩いていく、そこを関根部長刑事が三船主任の心情を語る、新人ゆえ(?)いきさつを眺めている水木刑事・・・。何気にこのシーンは好きな部分です。いずれ畑野刑事も主任となったとき、どのような采配を振るうのだろう、そう思わせる畑野刑事の変貌ぶりというか、成長途上の姿を見ているようでした。

 

(追記)畑野刑事の成長は、自分の視聴した限りでは、はるか先「#625  生と死の詩」で結集されてます。極限状態に追いつめられた「#623  ある夜の出来ごと」と比較しても面白く見れます。思うに、三船・関根・畑野は新生特捜隊のベストトリオ。

 

ちなみに、「#501 勝負」以降のメガネ無しの関根部長刑事は、次回予告篇を見る限り「#504  乱れた女たち」から元のメガネ有りに戻るようです(理由は不明)。

そして、ラストのアクションシーンは立石班・藤島班ではたぶんやらないであろう、すざましいものでした。藤島班の「#453 狙え!事件記者」のアクションが可愛らしくみえるほどで(偶然にも、その作品と当作には杉山俊夫が出演)、これも新生面を打ち出しているのかも。

 

だからといって、傑作かというと、矛盾点というか説明不足な点は見受けられます。白軍派の女(長髪、短髪とも)の役割がイマイチわからなかったり、「GTはすぐ出発 20624TL」の謎、盗難車の処分など、いくつか挙げられますので気になるところではあります。

しかし、特捜隊の特徴で、辻褄が合わなくても勢いでラストまで突き抜けるという点では、上手くいったのではと思います。上記の点は、ブログに書かなければたぶん思い出さなかったでしょう(笑)

 

さて、弘子役の中千鳥について、「#478 謎の女」以降、時々目にしますが、地味なのか派手なのか、よくわからない存在感を出す女優さんです。ネット検索してもなかなか見当たりませんので、たぶん引退されていると思いますがどうなのでしょう・・・。テレビドラマデーターベースでも当作が出演作最後の作品になっていますが、当作の磯野のり子みたいに、意外なところに出演している可能性もあるので、以後も目を凝らして見ていきたいですね。

 

(追加)

#528 その拳銃を追え」で判明しましたが、中千鳥はその後、本多さち子へと改名したもよう。テレビドラマデータベースで、1973年初頭までの活動が見出されます。

 

(2017年11月29日 全面追加)