ざらついた肌触りの大きな朽木の洞から這い出して久方ぶりの宙をあおぐ
じめじめとしめったこの森林の奥の奥までわずかな日の光りが差し込んでいる
僕はそのわずかな日の光りにも目をほそめる
長い間日の光りを感じていなかったから
明るさという善の要素を今瞳にかんじどうしようもなくとまどう
くるりと踵をかえしてまたすぐにじめついた木の洞に戻りたい衝動にかられるがすんでのところでそれをおもいとどまる
ときには明るさも必要だから
ときには善の行いも必要だから
朽木ですごす得体のしれない忌蟲たちとのなれあいの暮らしはとても肌になじんでいたけど ときには僕だって地上に這い出す
いつもじめじめした粘着質の肌を維持しているわけではない
からだじゅうに繁茂した微細な寄生蟲たちの宿主という存在をつらぬいているわけではないんだ
さあこの蛞蝓のようにぬらついたいびつなからだを太陽の陽にかざし のそのそとゆるやかな一歩でもいいから地上の世界へ侵食してゆくんだ