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今年も春がやってきました。草木が芽吹き、花をつける季節です。天然記念物の草木も見頃を迎えるので、(見に行くのが)忙しい時期がやってきました。
今年も早速、サクラを見に行ってきました。昨年は「狩宿の下馬ザクラ」を訪ねました。
天然記念物のサクラはソメイヨシノと違う品種なので、花の時期も天気予報で発表される「開花宣言」や満開情報とは大きくズレます。
だから、ネットなどで地元の開花情報を集めながら訪問することになります。
面倒くさいのですが、そこがおもしろい点でもあります。
今年は、以前から興味があった茨城県桜川市にある「桜川」に行ってみました。
サクラの名所として古来から有名で、名勝と天然記念物に重複指定されています。見応えありそうじゃありませんが。
だけど、今はその面影が失われてしまった(ン十年前、桜川について初めて知った当時)とのこと。
現在はどうなっているのか、気になっていたのです。
早速、訪ねてみましょう。
「桜川」と「桜川のサクラ」
桜川と聞くと、川沿いに桜が満開になっている風景が想像されてとても素敵な場所に聞こえませんか?
それでもン十年前までは花の名所としては決して有名ではありませんでした。
古株のサクラは枯れ、サクラの樹が減ってしまったのです。
地元の人の努力でかつての景観が復活したと聞いてこの度、訪ねたのでした。
なんせ、桜川という川はあるものの、川沿いにサクラが植わっているわけではない。
神社の参道が指定地とのこと、しかもサクラがほとんどないらしい(当時)。
古典では有名な場所らしく世阿弥の謡曲「桜川」の舞台でもあるそうだけど、宣伝をしていない。
それでいて天然記念物にも指定されている…
「一体、どんな場所なんだ?」
と思うでしょ?
シャレではありませんが、「桜川」は大正時代に名勝に指定された際の指定名称でなのでした。その後、ヤマザクラの貴重な樹種が多いとのことで天然記念物にも指定され、天然記念物の指定名称が「桜川のサクラ」だったようです。
桜川のサクラとは、桜川に生育しているサクラの樹々を指しているのです。
「桜川」を訪ねる
それでは早速、訪ねてみましょう。
電車なら、JR水戸線の羽黒、岩瀬の各駅からタクシーで訪問されるのがいいです。
車の場合、北関東自動車道の桜川磯部I.Cが最寄りです。磯部桜川公園を目標にしてください。
公園の駐車場は名勝・桜川のすぐ脇にあります。ここから北に延びる道が「名勝・桜川」です。
道は丘陵へ登るよう続いています。この道が桜川磯部稲村神社の参道です。
両側にサクラの樹が植えられています。これが「桜川のサクラ」なんですね。
無粋なことに、この参道沿いにソーラーパネルが設置されています。まあ、指定地外なので規制が難しかったのかもしれません。
(実はこの土地、地元のマルボウさんの本部事務所に隣接しています。…裏事情がありそうです。)
もう少し進んでいくと、だんだんとサクラの樹が増えていきます。
見ごたえある風景になってきました。
桜川は、古くは謡曲「桜川」の舞台として、また和歌にも読まれたりしたことから、奈良の「吉野山」に並ぶ桜の名所でした。特に明治~大正期には地元の芸者衆がこの時期にすべてここに集まる、といわれるほど賑わったそうです。
しかし観客の集中によって風紀が乱れると、だんだんと桜川での花見が敬遠されるようになりました。
また根元が観客によって踏み固められたことによって桜樹の衰弱や枯死も増えていきました。
花が減れば当然、観客も遠のいていきます。そして時代の流れで、華やかに一斉に咲くソメイヨシノが人気になり、ソメイヨシノが各地で多く植えられるようになって桜の名所も移り変わりました。
そんな流れから桜川は衰退し、いつしか顧みられることも少なくなったようです。
しかし、それでは歴史ある桜川が忘れられてしまうと憂いた人たちが、かつての桜川の景観を復元しようと活動を開始しました。
そうして行政が中心となって桜川の整備を始めました。磯部桜川公園は都市公園として、指定地の東側一帯を整備した公園です。
しかしこちらも時流に従ったのか園芸種のソメイヨシノが中心に植えられ、しかも無計画というか密集して植えられたらしくサクラの成長が良くなかったとのこと。
こうして桜川は、花の名所として顧みられなくなったのです。。
平成になり、地元の有志が保存会を立ち上げ、今は研究も進められて、地元のヤマザクラを中心とした樹を育成して桜樹を増やしました。
それから数十年経ち、ヤマザクラの樹は見事に育ち、かつての桜川の景観が復元されたのではないでしょうか。
今では様々なサクラの樹が訪れた人の目を楽しませてくれています。
名勝指定地は参道とその両脇、神社の旧馬場だった敷地となっています。
参道中腹右手にある、今は薬師堂がある周辺の斜面がもと神社の馬場の跡だそうで、昭和49年に追加指定されています。
この時、同時に名勝指定地内の桜樹がすべて「桜川のサクラ」として天然記念物に指定されました。
磯部桜川公園はこの斜面を含めて整備されているので、公園は一部だけ名勝指定地と重なっています。
遠くの山の上にも野生のサクラが見えます。
ヤマザクラは樹ごとに花の形や大きさ、色が違っています。
だからサクラといっても、赤かったり白かったりして変化に富んでいます。
遠くの方まで山に彩を添えていて、とても見事です。
名勝・桜川のエリアには石碑が多く建てられています。句碑が多いです。
その中に地元出身の俳人・石倉翠葉の句碑があります。
この人が桜川の文学史的な重要性を訴え、名勝指定に導いたといいます。
桜川の保存に関して、最初の功労者です。
公園を過ぎ、参道は平坦になります。参道の一番北側の部分です。
この辺りは両側に住宅が並びます。
宅地になったせいか、桜の樹はほとんどありません。
それでも数本の樹があります。
やがて桜川磯部稲村神社の鳥居が見えてきました。
大きな神社ではありません。地元の鎮守様、といった感じのこじんまりとした神社でした。
しかし、この神社の周辺が天然記念物「桜川のサクラ」が多く見られる地域と聞いて、天然記念物の指定理由となったヤマザクラの樹を探して周辺を歩いてみました。
まずは案内標識に従って、謡曲にも謡われる「糸桜」を見に行きます。
境内から南方向に下る歩道を歩いていくと、空堀が現れました。境内はどうやら、中世の館跡でもあるようです。
もっと下っていくと、やがて桜樹に囲まれた広場に出ました。ここに糸桜の樹があるようです。
糸桜にちなんで、この広場は「糸桜広場」と呼ばれています。
広場の東縁に糸桜がありました。その名の通り、傘の骨を広げたようなシダレザクラです。
日照の関係で、逆光になってしまうのが残念でした。
だいぶ古い木のようで、樹勢は衰えて弱々しい印象を受けました。それでも花をつけています。
健気ですね。
この周辺に「桜川のサクラ」に指定された桜樹が多く見られました。それは後で紹介します。
これで「桜川」の北端まで来ました。
正直、奈良の吉野のような見事なサクラの競演を期待したところもあるので、名勝指定されたという割には…、という思いがありました。
でも、そのために今では「隠れた名所」となり訪れる人もあまりおらず、静かに花を楽しむことができる場所となっていました。
本当に純粋に花を愛でる場所としてはとてもおススメです。
ちなみに、指定地域外の磯部桜川公園は、こんな感じの場所です。
普通の都市公園であり、地形に歴史を感じる磯部稲村神社の参道脇とは違った、現代的な雰囲気がありました。
「桜川のサクラ」を見る
さて、「桜川のサクラ」として天然記念物の指定理由になった自生種のサクラは11種あります。
もちろん、名勝指定域の桜樹がすべて指定対象なので、その中にはソメイヨシノやヤマザクラではないサクラも含まれています。
これらのサクラは咲き始める時期に幅があり、今回は4月上旬に訪ねたのですが、この時は5種のサクラを見ることができました。
それぞれに個性があって、花が咲いている風景を楽しむだけでなく花そのものを楽しめるのがヤマザクラの魅力と気付きました。
今回はその5種を紹介します。
まず桜川のサクラとの違いを比較するため、日本全国どこでも見られる、ソメイヨシノを見てみましょう。これは我が家の近くで数年前に撮影したものです。
花が一斉に咲いて、新芽は花が終わってから吹いてきます。
花弁の中心が赤く染まり、雄しべや雌しべも芯が赤いです。花が咲いてから満開になって散ってしまうまで1~2週間程度です。
あっという間です。
では、「桜川のサクラ」のサクラを見てみましょう。
最初に見たのは「初重桜(はつかさねさくら)」。
サクラの花は花弁(花びら)が5枚ありますが、このサクラはそうではありません。
花が咲いた木全体だけを見ていてはわかりません。花を見てください。
写真ではわかりにくいかもしれませんが…
花弁の中央にもう一枚、花弁があるのがわかりますか?
このようなサクラを「旗桜」とか「旗立桜」といったりもします。
この花弁はおしべが変化したもの、なんだそうです。
この変異がさらに進んだものが「八重桜」なんだとか。
「ああ、おしべが全部花びらになったら八重桜になるのか。八重桜って突然変異から品種化されたんだ。」
と理解できました。
そして、周辺のサクラでは最も早く花が開く「初見桜」が、満開を過ぎて花を散らし始めてました。
こちらは本来、ソメイヨシノより早めに花が咲くらしいです。今年は遅いとか。
花弁がソメイヨシノより大きくて丸みがあり、芯も赤くなった部分が少ないです。
花と葉っぱが一緒に出てきている点も違いますね。
続いては「桜川匂」。
芳香が強いのが特徴で、周辺に甘酸っぱい匂いを振りまいていました。
そして神社の拝殿脇で見たのが「薄毛桜」。
花と葉が同時に出るのも特徴ですが、花弁が細くて楕円形に近いです。花自体も小さめです。
その名の通り、花梗(花の根元の軸のような部分)に薄い毛がみられる、…そうですが、花が高い位置にしか見られなくて薄毛は見られませんでした。
今回、最後に見たのは「源氏桜」。
これも境内の社殿脇で見ることができました。
新芽が赤く、花弁の根元が赤いのはソメイヨシノのようですが、花が大きくて新芽と一緒に出てくるところがやはり違います。
花も全体的に大きくて赤みを帯びています。
古典で有名だった桜川、そしてヤマザクラが多いことが貴重とされた桜川のサクラ、一斉に咲いて華やいだという雰囲気はないですが、むしろ花の形や色、におい、芽吹き方まで違うのがおもしろいです。
花見といえば「花より団子」といわれるように、食べて酒飲んで遊ぶための言い訳にされてしまいますが、実際には花をよく愛で、その違いを楽しむものなんじゃないかな、と思いました。
しかも今回は天然記念物11種のうちの5種しか見られなかったように、花の咲く時期は品種によってまちまちなんで、もっと長く楽しめるのです。
目が覚めた思いでした。
来年はもっと時期をずらして、今回花が見られなかった残りの6種の花を見に来たいと思いました。
































