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今回は前回の鳴沢溶岩樹型と同じく富士山の麓にある、「山中のハリモミ純林」を訪ねてみました。
私もここについては詳しいことは知りませんでしたが、天然記念物と聞いたので行ってみました。
「だってハリモミっていったら、クリスマスツリーになる木でしょ?何が重要なんだろう?」
初めて「ハリモミ純林」という言葉を聞いた人なら、そう思うことでしょう。私も思いました。
とにかく行ってみましょう。
場所は富士山の北東麓にあたる森林地帯で、周辺には別荘地などがあります。忍野八海や山中湖が近く、両者のちょうど中間地点となります。
純林を縦断するように県道が通っていて、その県道から純林地帯を眺めました。しかし県道の両側、県道に沿った数メートル幅のベルト状の範囲は指定域ではないのです。その外側から指定域が始まっているそうなのですが森の中へ進入できるような通路はありませんでした(実際にはあるらしいのですが、この時はわかりませんでした)。
保存のために人が入れないようになっているのだとあきらめて、これは指定範囲外の県道から眺めたレポートになります。
純林といわれるだけあって、見える樹のほとんどはハリモミでした。
やっぱりクリスマスツリーの木だよな(実際には違う木なのですが、それは後に調べてわかりました)。
ハリモミは日本固有種で、純林状を成している場所は日本ではここだけなんだとか。
ハリモミ自体が日本の固有種ですから、当然のことながら世界でも唯一のハリモミ純林、ということになります。
そんな理由から、天然記念物に指定されました。
確かに、目に入る樹はハリモミが多い。素人目にはシベリアの針葉樹林帯っていうものを学生時代に習いましたが、そこはこんな感じなのかな?と思わせます。行ったことはありませんが。
こういった珍しいものの発見が、文化財巡りをしていて「おもしろいな」と思わせられるところなんです。
もともとこの地は付近の村の入会地だったそうで、森の手入れは近所の村落が行っていたんだとか。
純林ができる、ということは人の手が加わっているのだろうとは思いましたが、やはりそういうことでした。
かつては今より多くのハリモミの樹があったそうですが、伊勢湾台風の被害で多くの樹が被害に遭い、その後も気候の変動で倒木や枯れるものが増え、今では他の植物の侵入が著しいとのこと。
実際、県道から見える範囲にはハリモミ以外にアカマツや広葉樹が見受けられ、純林とは言い難い状況になっていました。
純林を保護するため、他の植物の除去や伐採が行われているようです。
しかし「植生の遷移」といって、これは自然の変化によるものともいえるそうなんです。植生遷移とは、植物の群落が発生してから、枯死や自然災害などで消滅したり再生したりする過程で、よりその地に適した植物が占有していく変化のことです。
そう考えると仕方ないのかな、とも思ってしまいました。
ところで、クリスマスツリーになるものはウラジロモミとかドイツトウヒといわれるものだそうです。ハリモミも含めて、これらの木はいずれもトウヒ属に属します。
ハリモミはクリスマスツリーに使われる木ではなかったんですね。同じ属だから樹形や葉の形も似ているのでしょう。
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山中のハリモミ純林(昭和38年1月・天然記念物 山梨県南都留郡山中湖村山中)
山中のハリモミ純林は、富士山の北東麓に伸びた鷹丸尾溶岩流上、標高950m付近にあります。もともと溶岩流上は貧栄養状態の土壌のため、常緑針葉樹林が占めることが多いのですが、富士山麓でもヒノキやツガ、アカマツなどの温帯性の針葉樹が占める原生林が広く分布しています。
ハリモミも温帯性の針葉樹で、特にこの山中付近では純林状を成しており、大正5(1916)年にアメリカ・ハーバード大学教授のアーネスト・ヘンリー・ウィルソンによってその価値が見出され、海外に広く紹介されました。
近年は森林相の遷移によって他の植物の侵入が著しく、純林の保存方法について様々な議論が行われているようです。