ひとり現代俳句協会「兜太俳句新人賞」落選展 2021年版 | カルバートン・スミスの告白

カルバートン・スミスの告白

ふたつ、不埒な悪行三昧……。

はいはい。2021年の「兜太俳句新人賞」の落選展をやりたいと思います。

個人的に、何かの賞を出すのは、自分が生きた証拠を残すことだと思っておりまして、別に賞そのものをいただきたいとかいうことではございません。
それでも俳句ですから、読んでいただいた方に少しでも面白いと思われるものをつづり続けなければならないという感慨だけは持とうと思っております。
 
よろしければ、感想なりとなんでもよろしいので、コメントいただけると幸いにございます。
 

タイトルは「青春の旗」です。

縦書きは画像で。そのあと、横書きに続きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「青春の旗」  青島玄武

 

スカートは青春の旗雲の峰

東京の蚊を埼玉へ運びけり

夕立や大江戸線の駅出れば

足元に街の灯天に蛍の火

山も空も皆になるまで不如帰

蜘蛛の巣を潜り質屋に入りけり

ぞんざいな値札の裏の日向夏

手から手へ旅してゐたりさくらんぼ

木漏れ日に日照雨の続く大祓

梅雨明けの廊下を走る男子かな

ダイハツの軽トラックも暑気中り

側にいて遠きものなり生御魂

黙々と自転車を漕ぐ裸かな

桜島風の亡骸なりにけり

爽涼やパンを失敗したパン屋

「あぶないからはいらないで」とコスモスが

灯の消えぬ夜長の村の体育館

名月と小さき海を渡りけり

ボール持つ子供を抱く野菊かな

傘なくば走るしかなし稲の秋

水音の溢るるばかり吊舟草

林檎なら剝いてあるものしか食はぬ

だいたいの山がだいたい紅葉せり

女物の財布を拾ふ十三夜

戸車の鳴るたび秋が深くなる

行く秋や向かう岸まで切る鋏

歌ひとつ覚えて冬の備へとす

野良犬に落葉の城を案内(あない)され

髭剃つて水に流せり冬の蚊も

病院にヤンキーとゐる小春かな

冬の雨高架下なる画廊かな

初空と幼なじみの楠の巨樹

門松や山に埋もる小学校

ドアノブに注連縄掛けてゐたりけり

マフラーの上に安らぐイヤリング

浴室の中まで目刺焼く匂ひ

ひねくれて育ちし春の大根かな

ガソリンを入れて菠薐草もらふ

後ろ向く花なかりけり黄水仙

春の風邪引きし間に背の伸びてゐし

充電がまだ半分の朝寝かな

散る花はみな振り返り振り返り

チューリップ畑横切る選挙カー

鯊釣りに出る三台のスクーター

藤見せて是れ藤色と教へけり

遠足のまた塊に戻さるる

太陽へたんぽぽの道続きをり

鶯や指まで舐めて握り飯

温泉に入りて出られぬ遅日かな

卒業しすぐに海へと走りけり

 

       (了)

 

 

なお、角川俳句賞50句のほうも落選いたしておりますので、そちらは「週刊俳句」の『落選展』に投稿いたします。

 

ちなみに、去年の落選展に出品した「辛夷の花」50句はこちらから。