直井大輔指揮松戸シティフィルハーモニー管弦楽団 第46回定期演奏会 | 上海鑑賞日記(主にクラシック)

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日時:2024年5月26日(日)14:00~

会場:森のホール21

指揮:直井大輔

演奏:松戸シティフィルハーモニー管弦楽団

曲目:

ムソグルスキー:交響詩「はげやまの一夜」

ドビュッシー(編アンリ・ビュッセル):小組曲

ブルックナー:交響曲第4番ホ長調「ロマンティック」(ノヴァーク版第2稿)

 

 

感想:

 今回もブルックナーを近隣のアマオケが演奏するというので訪れてきた。

 指揮者は武蔵野音大から芸大の指揮科に進んだ直井大輔さん。

 私自身が日本のオケを長らく見ていなかったので最近の詳しい活動は分からないが日本各地のオケには結構呼ばれているようだ。

 オケは1969年創立で、年代から言って私の親世代が創立メンバーと推測され、アマオケとしては相当長い歴史であるが、定期演奏会カウントとしては数字が大きくないので年一が基本らしい。 

 会場は松戸市の森のホール21、1993年の開館で大ホールのキャパは1955席と音楽をやるホールとしては比較的大きい。

 私は先日亡くなった小澤征爾さん指揮の新日本フィルの公演を1994年に聴いて以来の来館で、その時のメインはベートーヴェンの交響曲第7番であった。

 さて、メンバーがステージに上がると年齢層が結構高めで、さすがに創立時メンバーはあまりいないと思うが50代60代が中心という印象で、20代や30代はいるのかどうかといった構成である。

 

 1曲目はムソグルスキーはげ山の一夜で、この日のプログラム構成意図は私にはちょっと分からず、演奏したい曲目を並べた印象が強い。

 さて演奏が始まると、このホールの独特の響きがまず気になる。

 大型ステレオスピーカーを聴いているような一度ステージ内で反響を増幅された音が客席へ押し出されて来たような音である。

 キャパが大きすぎるのか音響設計にやや強引さを感じる空間である。

 演奏そのものは、ヴァイオリン群は人数が規模も大きいおかげもあってか、嫌な音は聴こえず、分厚さはないもののそれなり纏まって聴こえた。

 木管群も同様で、このオケを支えてきたような手練れが守っている印象である。、

 金管群もテンポの速いこの曲にしっかり対応しており、失礼ながら年一の定期の割にはオケとしてのコンディションが保たれており、しっかりと準備してきたことが伺える演奏だった。

 

 2曲目はドビュッシー小組曲

 2か月前に他で聴いてきたばかりで、そこまでポピュラーな認識はなかったが、意外と日本だと定番曲の扱いのようだ。

 元はピアノ連弾のための曲だったらしく、それをオーケストラ版に編曲されたものがよく演奏されている。

 さて編成は大きいままで、前曲に引き続きフルートやオーボエの奏者などが、この曲のドビュッシー的な柔らかさを表現している。

 編成が大きいからなのか、音の乱れもなく纏まりのメリットが活きていた印象。

 まあ第4曲では縦が揃っているのか怪しいところがないでもなかったが、全曲を通して綺麗にまとめた演奏だった気がする。

 

 休憩を挟んで後半はブルックナーの「ロマンティック

 まず冒頭のブルックナーの開始の弦は音としては悪くなかったが、表情付けのメリハリがなくやや平板かなという印象だった。

 そこに入ってくるホルンの音色も、乱れは少なく頑張っていたがフレーズごとに切るので細切れの印象になり余韻を欠いた気がする。

 最初のクライマックスを迎えるまでのうねりも足らず割りとあっさりとした印象で味わいきれない。

 各楽器の出来栄えなどアンサンブル自体は悪くなかったので、もっと細かい表現が出来たのではないかと思うが指揮者の好みなのだろうか?

 第2楽章は緩徐楽章はで、ゆったりと歌われ、逆に粗も出やすい楽章なのだが、オケは崩れることなくしっかりとこなしていた。

 ただ歌うというよりフレーズを置きに行ってしまっている印象で単調さを感じる面は多かった。

 深みを持たせたかったのかもしれないのが、音楽としてのメリハリが弱くなってしまいダイナミックさに欠け面白みのない演奏になってしまったのである。

 第3楽章のスケルツォでは局長として躍動感を取り戻すが、やはり表現が置きにいっている印象は拭えず、指揮側が全体的にスコアを頼り過ぎている感じなのである。

 その流れの中で第4楽章に入るが、奏者も疲れて来ているのか、棒読みならぬ棒吹きのような抑揚のないフレーズが多くなり、縦の線の合わせが危うくなる部分もあった。

 もちろんスコアに沿って演奏されるのでフォルテッシモの全奏とかはきちんとこなされるのだが、音楽としてのダイナミックさに欠け、時間が押していたせいもあって終演を待たず離席する人さえ現れてしまったのである。

 上手下手で言えば、各奏者は決して悪くない及第点を取っている演奏だったが、音楽としての面白みに欠ける演奏になってしまった気がする。

 ベテランとして失敗を恐れて無難に弾きこなすといった心理が強く出て、今回このような演奏に陥ってしまったのかもしれない。

 音が軋んでも良いからもっと情熱的に演奏してほしかったなと思う。