上海鑑賞日記(主にクラシック)

上海鑑賞日記(主にクラシック)

上海生活の合間に聴いた音楽や見たスポーツなどの記録を残します。

日時:2024年7月21日(日)14:00~

会場:かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール

指揮:新通英洋

演奏:習志野フィルハーモニー管弦楽団

曲目:

ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「ディナミーデン」

ヨハン・シュトラウス:ワルツ「美しく青きドナウ」

ブルックナー:交響曲第9番ニ短調

 

 

感想:

 以前から名前は知っていたので機会があればと思っていたが、今回ようやくタイミングが合ったのとブルックナーを演奏するというので、習志野フィルの定期公演を訪れてきた。

 習志野フィルは1969年創立で第1次ベビーブームの世代が中心になって設立されたものと推測する団体で既に50年以上の歴史を誇る。

ただアマチュアなので年2回ペースの演奏以上にはならなかったようで、現時点でちょうど100回を超える程度のカウントではあるが、止まらず続いていることに感服する。

 

そういう意味では彼らを支えてきたであろう数年前の習志野文化ホールの閉館は実に惜しく、今回は都内だが同じ京成沿線の「かつしかシンフォニーヒルズ」のモーツァルトホールで行われた。

指揮者は新通英洋さんで私は存じ上げなかったが、国内外問わず幅広く活躍されている方のようであり、このオケはアマの割には過去にも著名な指揮者やソリストを呼んでいて色んなパイプを持っているのであろう。       

入場してきたメンバーは想像より若く、当初よりはかなり世代交代が進んでいる印象である。

 

さて。1曲目はヨーゼフ・シュトラウスの「ディナミーデン」で、この曲ははっきり聴いた記憶がないが、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートには何度も取り上げられているようなので耳にしているはずである。

和訳としては「秘めたる引力」となっており、物理学的要素から着想したようだ。

長めの導入部に続いてワルツのメロディが始まる。

演奏としては全体として及第点であるが、ワルツの演奏をしている割にはオケ側に楽し気な雰囲気はなく、動きが硬い。

指揮者も同様に少し硬めで、ワルツの演奏を楽しんでいる様子には少し乏しく、その影響か音楽にもう少し踊るような華やかさがあっても良かった気がする。

 出来栄えそのものに不満はなかったが、聴衆の反応がやや鈍く、カーテンコールもなく拍手は一回で収まってしまった。

 

続いて、「美しき青きドナウ」。

言わずと知れたヨハン・シュトラウス2世の非常に有名な曲ではあるが、各オケのニューイヤーコンサート以外に真正面切って取り上げられることは珍しく、演奏会の構成としてはかなり珍しい気がする。

今回、後半と合わせて同時代のウィーンの曲というテーマで説明されていたが、冷静に推測すると、ひょっとすると冒頭のトレモロに共通点を見つけ構成されたのかもしれないなどと考えてみた。

その冒頭のトレモロはやや透明感に不足は感じたものの、綺麗にスタートする。

こちらもオケの各セクションは及第点な演奏を行っており、十分な出来上がりである。

ただ、やはり一曲目同様にオケに真面目な硬さというか優雅さの不足が感じられ、もっと遊び心たっぷりに演奏すればリズムの切り替えや音の伸びがもっと良くなるのではないか、そんな演奏だった。

聴衆の反応も思いのほか鈍いのはそのあたりに原因があるのかもしれない。

 

後半はブルックナーの交響曲第9番。

冒頭のトレモロはそれなりに美しく入れたが、金管がやや浮き気味に飛び込んできた印象で、バランスが悪い。

 併せてコントラバスがパワー不足な印象で、6人もいる割には迫力が弱い気がする。

 その後の音楽の流れとしては悪くないのだが、ホルンが浮き気味でオケのハーモニーに溶け込んでいない印象である。

 ひょっとするとストリングス全体のパワーが弱いのかとも考えたが、ベストとは言えないもののバランスは整っており、オーボエやフルートなどは響きに収まっているので、やはり金管の問題だ。

 トロンボーンはそれほど気にならなかったが、ホルンやトランペットがやや粗い。

 

 第2楽章のスケルツォもやはり金管が不安定で粗い印象で、全体がブカスカ鳴ってしまっている印象。

 その影響が木管にも影響していたのか、音程が果たして正しいのか疑わしいほど、収まらないごちゃごちゃした演奏になり、第1ヴァイオリンまでが引きずられ心許ない音になる。

 前半は非常にまとまりを感じていただけに、この楽章の散り散りぶりには驚かされてしまう。

 結局、落ち着かないまま楽章を終える。

 そして第3楽章。

 弦の入りは、多少不安定さはのこすもののまあまあだが、飛び込んでくるホルンがやはりバランスを欠いていた印象。

 ただテンポを落とした部分では、それなりにゆったり歌えて響くため弦パートを中心にしっかり聴くことが出来る状態になり、ブルックナー的要素は堪能できる。

 ただ、やはり金管全体のバランスが揃っていない印象で、やはり浮いて聴こえてしまう。

 弦がそこそこ揃っていただけにこのバランスの悪さはちょっと残念である。

  結局最後のコーダまで同様の状態で、何とか最後だけは綺麗に締めたが、後味的にはちょっと厳しい演奏だったかなという印象だった。

 ただブル9は難しい曲ではあるので、また別の曲目の時に伺ってみたい。