古澤直久指揮MAXフィルハーモニー管弦楽団第ブルックナー生誕200年特別演奏会 | 上海鑑賞日記(主にクラシック)

上海鑑賞日記(主にクラシック)

上海生活の合間に聴いた音楽や見たスポーツなどの記録を残します。

日時:2024年04月14日(日)14:00~

会場:サンパール荒川(荒川区民会館)大ホール

指揮:古澤直久

演奏:MAXフィルハーモニー交響楽団

合唱:MAX第九合唱団

独唱:林田さつき(S)長澤美希(A)澤崎一了(T)照屋博史(B)

 

曲目

ブルックナー:「テ・デウム」

ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(1878年/80年版)

 

 

感想:

 前日に引き続いてブルックナーのプログラムを見つけたので訪れてきた。

 同日に別の場所でも他の曲を演奏する公演情報を見つけたのだが、こちらの方が曲目的にご無沙汰で、家から訪れやすい場所・時間だったのでこちらとなった。

 さて、この日のオケはそもそも第九演奏を目的に集められたオケとのことで、常設ではないのでオケとしてはアマの区分になろうと思うが、メンバーにはプロとして活躍している人もいるようなオケのようだ。

 舞台上に並んだメンバーの光景を見る限りにおいては年齢層もばらばらで、普段の職業や音楽活動も多岐にわたる市民オケの典型ではないかという印象である。

 そんなオケが、ブルックナーの生誕200年の特別演奏会を設定したのが今回であるが、これまでもマーラーの「復活」やフォーレの「レクイエム」など合唱と管弦楽を組み合わせたプログラムに取り組んできているとのこと。

 指揮者は古澤直久氏で、桐朋出身の50歳でマレーシアフィルの正指揮者、時折コントラバスも弾くとのことで、オケ自体は彼の下に集まったメンバーで構成されているようだ。

 

 前半はテ・デウム。

以前から書いているように、合唱曲は比較的苦手で、あまり集中力をもって聴けないので良し悪しを判別できないのだが、まず聴いたところの感想で言うと歌詞の発音はそれほど明瞭であるとは思えなかったが、歌としてはまとまっていると感じた。

パワーも決して強くはないは、人数がそれなりにいることもあって、そこそこの声量は確保していて、安定し美しい歌声が響いていた。

またこの曲には第九同様に男女2人ずつのソリストがおり、迫力的にはそこそこだったが、安定した歌声を4人がバランスよく聴かせてくれた。

ただこの日は私自身の体調の低調さもあって、申し訳ないが途中で眠くなって、終始集中力なく、ぼんやりした状態で聞いてしまった。

よってオケへの注意も散漫となり、テ・デウムの感想としては以上で終わってしまう。

オケや合唱団にはちょっと申し訳がない気持ちである。

 

休憩時間に缶コーヒーを飲んで改めて意識を整えて後半へ臨む。

 

後半はブル4、ロマンティックである。

このロマンティックとはそもそもロマンティシェ=ロマン主義から来たものであり、恋愛的な狭義の意味ではなく、自然への賛美的な広義のロマン主義を指すとされる。

さて演奏は、ブルックナーの開始と呼ばれる弦のトレモロも非常に丁寧かつ静かに始まる。

さらっと演奏するオケも少なくないが、慎重に音楽をスタートさせた印象である。

ただ、冒頭のホルンはちょっと大きく飛び出過ぎたのかなという感じ。

音の不安定さは目を瞑るにしても、弦が丁寧に静かさに比較してバランスが悪い。

その後のフルートは抑えられたがこのバランスもどうかなという感じ。

全体がざぶんと来たところで、ようやくバランスが整う。

弦楽器群は、プロアマ混成ということで貧弱な音が垣間見える部分もあったが、基本的には指揮者がしっかりとドライブしており、フレーズの上り下りは表現できていたように思う。

 各セクションも、例えばトランペットの弱さなどが見えてしまうところも時々あるが木管セクションなどは安定した音色を聴かせてくれていた。

指揮的な部分で言えば慎重に運ぼうとしているのか、ところどころ縦をゆっくり合わせているなと感じる部分もなくなかったが、歴代の巨匠に引けをとらない曲運びが出来ていたように思う。

この指揮者の方は日本の国内での知名度は高くないが、マレーシアフィルの正指揮者に選ばれているとのことでその実績にふさわしいしっかりしたドライブ力を持っている印象。

第2楽章も然り、指揮者の振り姿は拍取りではなく情感を求める指揮振りで好感が持てる。

まあゆったり歌いすぎる面はところどころあったが、好感が持てる範囲である。

弦のアンサンブルも弱さが時々顔を出すが中低域は安定していたと思う。

ただ、金管群にやや不安定さを感じ、気になってしまう個所もいくつかあった。

 

楽章間の指揮者は慎重に会場が静かになるのを待った。

第3楽章のスケルツォはやはり金管の音の不安定さが気になったが、全体的な流れは問題なく響く。

少し音の縦のラインを整え切れていない面はあったが、崩れていたではないので逆に音楽としては面白かった。

第4楽章も指揮者のダイナミックなタクト裁きは続いており、入り方からクライマックスの迎え方までブルックナー的音楽をきちんと捉えており、聴いていて気持ちがいい。

細かい部分で音の粗さはあるが、力強い推進力と音の幅や迫力があり本質的な部分は十分楽しめる。

フィナーレもコーダの扱いがとても丁寧で、緩やかなカーブで盛り上がってゆき柔らかく音楽が閉じられた。

演奏が終わった直後、指揮者が手を下ろすまで長過ぎるくらい静寂が続いた。

オケもフィニッシュの姿勢のまま動かない。

拍手で出演者を解き放って上げようかと思ったが、ぐっとこらえて時を待った。

そして指揮者が緩むとようやく拍手が沸き起こった。30秒くらいかかったか?

こういった静寂も合わせてなかなか味わいのあるブル4となった演奏会だった。