日時:2024年04月13日(土)14:00~
会場:サントリーホール
指揮:下野竜也
演奏:日本フィルハーモニー交響楽団
ソロコンサートマスター:木野雅之
ソロチェロ:菊池知也(日本フィル首席)
曲目
シューベルト:交響曲第3番ニ長調 D200
ブルックナー:交響曲第3番二短調 WAB103(ノヴァーク版)
感想:
前回から少し間が空いてしまったが、再び都内のプロのオケの鑑賞。
日本フィルでブルックナーを演るということで、この日に予定を入れないように早くから調整して時間を空けて臨んだ。
指揮者は先月も聴いた下野さん。
演奏前にプレトークがあり、音楽評論家の舩木篤也氏からブルックナーとワグナーの関係とその背景の当時の同一のドイツ地域の地政学的状況などが語られた。
この日の後半のブル3はリヒャルト・ワグナー氏に献呈されたことで知られ、ワグナー交響曲のニックネームでも呼ばれる。
(ここでは省略するが、この献呈に際して色んなエピソードが残されている)
なお、聞けばこのオケがこのブル3を取り上げるのは52年ぶりとのことで、随分と昔だなぁと思ったが、よく考えると私の人生とニアイコールであり、私も同じくらい古いのだと気付いて少々凹む。
下野さんもブルックナーは比較的多く取り上げているが、この曲は初めて振るようで新たな挑戦の様である。
さてブル3の話題が先行してしまったが、この日の前半のプログラムはシューベルトの第3番交響曲である。
スタートから丁寧な演奏ぶりで、ややゆったり目のテンポでスタート。
冒頭の主題を歌うクラリネットの音色がとても美しい。
その後はスピードに乗るというより、音を丁寧に置いて繋げていくような演奏で、エッジは強くない優しい音楽だった。
オーボエが歌うソロも悪くないが、クラリネットの印象には及ばない。
全体の音の処理がハイドンの影響を受けた曲だなという部分が随所に表れる。
第2楽章もハイドンのような古典らしさが随所に散りばめられ、そこへオーボエがシューベルト的なスパイスを効かせ音楽を独特にしていく。
さらにヴィオラなどの中音域がしっかりとした音色で曲を支える。
第3楽章のメヌエットはややテンポを速めて入ってきたが、テンポはそれほど強く攻めているわけではなく、音量的なアクセントにとどまる。
逆に音を止めるような流れを作り、これは後半のブルックナーの休止と呼ばれる技法を意識したのかなという気もする。
第4楽章において、指揮者の指揮振りはそこまで流れを押しているようには見えなかったものの、音はスルスルと進んでいく。
しかしながら流れに乗せているというより、各フレーズを丁寧に繋げてそれがスームズな流れになっている印象で、さすがプロの仕事だなと思える良きシューベルトだった。
さて、後半は改めてブル3。
指揮者にとっても初振り(といっても前日に同じプログラムの公演があったので本番としては2回目)の曲で、リハは重ねているだろうが、挑戦的な構えの指揮かと推測する。
冒頭の刻みは浅めで少し早めのテンポでスタートする。
マエストロはブルックナー音のメリハリを意識したような指揮振りで、アクセルとブレーキを巧みに使い分ける。
ただ、その分だけ各楽器間のバランスは二の次になっていると言っては言い過ぎであるが、チューニングの余地はまだ残っていたように思う。
つまり楽譜の縦のバランスより横の動きを優先して演奏を組み立てていた印象で前半のシューベルトとは対照的であった。
またノヴァーク版だからということではないが、聴きなれていたと思っていたこの曲ではあるが、耳慣れないフレーズがあちらこちらに挟まっていた印象である。
第2楽章はその耳慣れないメロディが増加する。
そもそも私がよく聴いていたのはこの日の第2稿と呼ばれる版ではなく、第3稿だった可能性が高いようであり、普段は版を意識して聴いていないのである。
この緩徐楽章は、ダイナミックなリズムがない分だけ縦のチューニングの不足が目立ち、やや掴みどころがない演奏になってしまった気がする。
スケルツォの第3楽章に入ると、マエストロのドライブ力が力を取り戻しダイナミックな演奏に戻る。
フルートやオーボエのアクセントも効いており、しっかりとした推進力で音楽が流れる。
ヴァイオリン群は、今回は良くも悪くもあまり目立たず。弦の美しさを堪能するには至らなかったのは残念である。
そしてブルックナーらしいというか、荒々しい演奏で楽章を閉じる。
最終楽章もダイナミックさは相変わらずだが、金管を含めハーモニーが少しぼやけてしまい、力強さはあるが和音の美しさが今一つだったかなという印象である。
ただ素晴らしい熱演であったことは確かであり、マエストロには今後さらなる音色の練り上げを期待したい演奏であった。