日時:2024年03月10日(日)15:00~
会場:すみだトリフォニーホール
指揮:下野竜也
演奏:広島交響楽団
独奏:上野由恵(フルート)
曲目
細川俊夫:セレモニー~フルートとオーケストラのための
ブルックナー:交響曲第8番ハ短調(ハース版)
感想:
この日は東京大空襲のあった日で、そういった繋がりで墨田区では祈念音楽祭が開催され、そこへ今回参加したのがこの広島交響楽団で会場はすみだトリフォニーホール。
オケ自体も創立60周年ということで、音楽総監督の下野竜也さんがその任として最後の演奏会がこの東京公演となったようだ。
オケ自体の歴史は長いがメンバーは比較的若めの印象を受ける。
今回の演奏の前に予定になかったプレトークが行われチェリビダッケ氏の演奏を聴いた際の違和感(独自の解釈からの冒頭のクラリネットをファゴットへの置き換え)から、クラリネットパートのフレーズを削った理由などが語られ、先日私が聴いた高関健氏にも相談したようなことにも触れられていた。
さて前半は細川俊夫氏のセレモニーという曲で、実質的にはフルート協奏曲である。
この曲はフルートの優雅な音色というより、楽器が出せる音を最大限に引き出そうとした曲の印象で、尺八の息の音のような鳴らし方を目いっぱい使って曲が構成された。
さすが日本の作曲家という印象で、和の和音的な音色がそこここに散りばめられてソリストの上野由恵さんの熱演を感じた。
後半はブル8。
やや短めのフレーズのあっさりとした味付けでスタートする。
濃い味付けの料理にノンオイルの紫蘇ドレッシングを使ったような不思議なあっさり感がある。
全体的に弦が少しパワー不足かなといった印象で、音はそれなりに綺麗に鳴っているが、厚みの面で少し伸びきれないのである。
バスやチェロなどの中低域はともかく、高音域の出力が伸びず、それに伴って音が輝ききれない。
よく見ると、1stヴァイオリンからヴィオラまで女性奏者が大半を占め、反対に木管の低音側や金管は男性に偏っているようなメンバー構成である。
男女の性差が音楽的パワーにどれだけ影響があるかは不明ではあるが、体格差を考えるとこの偏りの影響がないとは言い切れなさそうである。
そういった弦の弱さは第2楽章でさらに顕著になり、チェロパートのキレに対してヴァイオリンはやヴィオラは伸びを欠き、こちらを高揚感に誘うような音色には届かない。
特に金管が強い部分の大音量の中にあっては、ヴァイオリンの音色が音楽全体を支えきれない印象である。
第3楽章の緩徐楽章の中にあっては、全体が概ね静かなので、ヴァイオリンのパートの音色は綺麗に響くが、ハープの優雅さに支えられるクライマックスも印象の弱いものになる。
そして第4楽章では、音楽的バランスは崩していないものの、曲のスムーズさを欠いて、なんとか音楽を保っているような印象だった。
演奏としては頑張っているなというのは感じ取れたが、私としては音楽に入り込み切れずに比較的冷静にフィナーレまで聴き終えた状態になった。
また次回に期待したい。