秋山和慶指揮 フィルハーモニック・ソサエティ・東京 第13回定期演奏会 | 上海鑑賞日記(主にクラシック)

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上海生活の合間に聴いた音楽や見たスポーツなどの記録を残します。

日時:2024年02月25日(日)14:00~

会場:東京芸術劇場大ホール

指揮:秋山和慶

演奏:フィルハーモニック・ソサエティ・東京

 

曲目

モーツァルト:交響曲第39番ホ長調 K.543 

リヒャルト.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」作品40

感想:

 この週も日曜のマチネのアマオケ鑑賞。

会場は東京芸術劇場で、そもそも全席同一ランクであったが、リセールで良い席が手に入ったので訪れてきた。

 今回も初めて訪ねるオケなので、基本情報をチェックしたところ、学生オケの卒業生を中心に集まって結成されているとのこと。

 よって、一般大学のオケなんかよりは水準が高いといった推測で、しかも創設が2016年とまだ若いので、当然のことながらメンバーも若いようだ。

 そんな若いオケが今回はかの巨匠秋山和慶氏を指揮に迎えての演奏会となった。

 秋山氏は中国に渡る前も時々聴いていたが、音をまとめるのは上手だがそれほどアグレッシブな指揮の印象はない指揮者である。

 

 さて前半はモーツァルトの交響曲第39番で、私が好きな曲でもありこの演奏会に食指が動いた理由でもある。

 ややゆったり目のテンポで曲がスタートする。

 音は崩れてはいなかったが、硬さが残るような印象であり、ティンパニが少し強いかなと感じる。

 アンサンブルそのものはマエストロが綺麗に整えたような印象だが、音楽そのものは少々丁寧過ぎて熱さを欠く。

金管などがやや安定性を欠く面はアマチュアなので目をつぶるとして、音楽的な意味での抑揚的要素が弱い印象なのである。

よく言えばテンポに淀みがなく端正だが、テンポの横の動きが弱いため、アクセントに欠け音楽的にひっかかりにくいと言えば良いのだろうか。

 昔に聴いたマエストロの演奏もこういった印象で残っており、オケをまとめる手法は悪くないと思うが、パッションが音楽に強く出てこないのであり、今回もそういった音楽になった。

 テレビなどで拝見する限りマエストロ本人が恐らくそういった熱さを前面に出さない性格であろうとも感じられ、それがそのまま指揮に表れているのであろうと推測する。

そんな指揮なので、演奏の水準は悪くないレベルで響いていたが、やや上品すぎる演奏になってしまった印象だ。

 

後半は「英雄の生涯」で、4管編成の大編成を要する大曲である。

その編成ゆえに演奏される回数も多くなく、こういった大編成の楽曲である故に秋山氏の招聘となったように推測される。

 下世話な話であるが秋山氏クラスとなるとアマオケとしては依頼料もかなり高いはずであるが、この曲をやるのに必要な存在だったということであろう。

 

さて低弦のうなりから曲がスタートする。

金管は想像以上に安定を見せており音としては綺麗に出ているが、やはり前半同様に全体としてのダイナミックさが少し不足している印象はある。

 

 英雄の妻を示すヴァイオリンソロは、任されるだけあってそれなりに綺麗にまとまっていた印象。

 このオケのコンサートミストレスの小野瑞季さんは後から調べてみると、あちこちのアマオケでソロをやるなど幅広い活躍されている方の様で、それゆえのこの難しいパートも納得の演奏だった。

 演奏はその後、「英雄の戦場」に場面を移していくが、ここは色んなリズムが入り乱れるところで、さすがのマエストロでもちょっとゴチャついたかなという印象になっていた。

 そして「英雄の業績」「英雄の引退と完成」へ続き、個々の奏者の演奏水準はそれなりに高く穏やかなメロディが流れるが、指揮に起因するのか演奏の彫りの深さという面でやや物足りない面も残る。

 演奏側が狙った通りだったのかもしれないが、もう少しだけあざとさを出して歌う面があっても良かった気もしなくはなく、もっとドラマティックな「英雄の生涯」であってほしかった気がする。