日時:2021年01月31日(日)20:00~
会場:上海交響楽団音楽庁
指揮:張潔敏
演奏:上海交響楽団
ピアノ:羅維
ピアノ:陳薩
曲目:
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調作品58
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73「皇帝」
感想:張潔敏指揮の上海交響楽団の演奏会でベートーヴェンコンチェルト全集の第三夜。
本来なら年間プログラムにはこの日はツィマーマンが客演し、ベートーヴェンのピアノコンチェルト全集を弾くはずだったが、コロナの影響で来中出来ず、中国人のピアニスト5人にチャンスが与えられ、それぞれ1曲ずつ受け持つことになった。
指揮も音楽監督の余隆さんから中堅指揮者張潔敏さんへの振り替えとなった。
さてこの張潔敏さん、前回の指揮ではあまり良い演奏ではなかった印象だったが、果たして今回はどうであろうか?
さてこの日はその全集も三夜目である。(前の二回は仕事の都合で行けなかった。)
さて前半の4番のソリストは羅維さんで、幼い時から中国では目立った活躍をしてきたピアニストのようだ。
さて演奏が始まると、ピアノの出足のタッチからちょっと甘いかなという印象。
柔らかさはあるがちょっと輪郭がぼやけているのである。
メロディの歌い方も、一応音楽として弾きこなそうといているがどうも堂も独りよがりな印象を感じる。
それを支える指揮者とオケの側も果たして音楽として表現出来ているのかと考えると、ちょっと首をかしげてしまう。
結局、なんだか楽譜をこなしただけだったという印象で、最後はドンしゃんした流れのまま音楽が終わった感じになった。
結局はオケ側はほとんど歌えず乗り切れてなかったようだ。
まあ指揮者の側も本来の技術レベルに加え、汗を拭き拭き指揮している姿から見ると、1日おきの3連続公演ということでかなり疲れがでているような印象にも映った。
指揮者は汗を拭いていて疲れが出ているようだ。
曲終了後にピアニストによるアンコールが行われたが、速弾きのテクニックを見せるような曲で、まあ確かにテクニックは凄いようだが、中国の体育会系の自慢に見えて、あまり良い印象は持てなかった。
さて後半の5番「皇帝」
ピアニストは陳薩さんで日本のN響などにも客演したことがあり、現在世界の中で勝ち役著しいピアにストの一人とされている。
さてこの曲の有名な冒頭が華々しくスタートする。
ピアニストのタッチと音楽表現はほぼ完成されていて完璧に近い印象だ。
前半のソリストと比べては悪いが、モノが違うという印象である。
寧ろ、オケ(というか指揮者)のレベルの問題もあって、ソリストがオケを見下ろすようなアンバランスな状況になっている。
指揮者は本当にオケを引っばっているのか分からないくらい、オケの振り姿と音楽の流れがマッチングしていない。
指揮者がそんな感じなので。ティンパニも落ち着きがなく音がドタバタしているような印象を受けた。
木管群やホルンなどはそれなりに頑張っていたが、全体としてはノッていない印象。
指揮者の音楽的リズムというかセンスが悪いのである。
そんなオケの状態であっても、ピアニストはぶれることなく、時にオケに合わせながら一段も二段も上の演奏ぶりを見せる。
なかなかな能力であると言える。
結局このアンバランスさは第3楽章まで変わらず、ただただピアニストの能力の高さだけを引き立てた演奏となった。
その感じ方が正しいことを証明してくれたのが、ピアニストのアンコールで、世界のトップクラスと言われるだけの、優しいタッチと音楽表現を兼ね備えた美しい演奏で、協奏曲の口直しには十分すぎるレベルであった。
陳薩(Sa Chen)の名は今後覚えておいても損はなさそうである。