楊洋指揮上海交響楽団 マーラ―「巨人」 | 上海鑑賞日記(主にクラシック)
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上海鑑賞日記(主にクラシック)

上海生活の合間に聴いた音楽や見たスポーツなどの記録を残します。

日時:2021年01月10日(日)20:00~

会場:上海交響楽団音楽庁

指揮:楊洋

演奏:上海交響楽団

ヴァイオリン: 徐惟聆

ピアノ:盛原

曲目:

メンデルゾーン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲  

マーラ―:交響曲第1番ニ長調「巨人」

 

 

感想:楊洋さん指揮の上海交響楽団の演奏会。

本来なら年間プログラムにはこの日はニューヨークフィルの音楽監督ヤープ・ヴァン・ズヴェーデンさんが客演して振るはずだった演奏会だが、新型コロナウィルス流行の影響で来中できず、中国人の中堅指揮者楊洋さんへの振り替えとなった。

 この公演に限らず、外国人客演指揮者の多かった上海交響楽団にあってはこのような対応がずっと続いており、海外の著名な指揮者を見られないのは残念ではあるが、国内の指揮者にとってはチャンスが続いている状況となっている。

 この楊洋さん、言っては悪いが普通のおじさん顔で、日本の指揮者でいえば高関健さんに似ているであろうか?

 つまり、スター性の顔ではなく(どんなだ?)、地味なタイプの雰囲気である。

 ただ、音楽は顔ではないので関係ないことである。(かなり失礼だなあ)

 

この日のプログラムは前半がメンデルスゾーンのピアノとヴァイオリンと弦楽のための協奏曲で初めて聴く曲である。(当初ヴァイオリンコンチェルトと勘違いしていた。)

 ソリストはピアノが盛源(男性)さん、ヴァイオリンが徐惟聆さん。

 こちらも指揮者に負けず劣らず中年顔のベテランである。(しつこいな)

 さて演奏が始まると、なかなか熱い演奏を聴かせてくれる。

 まずはヴァイオリンだが、まあテクニックに関しては特に高いというほどでもないが、熱い情熱でバンバンとメロディを奏でていくタイプの奏者で、私はこの方が好きである。

 全身で音を奏でる感じで、それがそのままメロディにつながり、気持ちが伝わってきて見ていても気持ちいい。

 そしてピアノも負けず劣らず安定して弾きぶりで、熱い弾きぶりでなかなか強い音をピアノから引き出しており、タッチの力強さは申し分ない。

 そして、それを支える指揮者&弦楽オケもしっかりした音で支えており、なかなか聴きごたえのある演奏を繰り広げていた。

 この楊洋という指揮者は昨年に杭州のオケを振った時もしっかりとした音楽表現が出来ており、中国の指揮者の中にあっては、なかなか秀逸なセンスを持っているようである。

 

 

 そして、その能力が果敢に発揮されたのが後半のマーラーだった。

 4管編成の巨大な編成の巨人だが、取り扱う楽器も多いので力量が問われる。

 

 親しみやすいメロディのため、聴衆には人気の曲だが演奏するほうにとってはなかなかホネな曲であろうに思うのである。

 

 さて、第一楽章の冒頭から、じっくりとエネルギーを溜めるように、弦が緊張感のあるA音を鳴らす。

 オーボエとファゴットのいわゆるカッコウの鳴き声とされるところでは、いわゆるカッコウ的な鳴き方ではなく、短く切った鳴らし方をしており、聞きなれない私には若干違和感があったが、恐らく指揮者の指示なのであろう。

 そしてステージ袖のパンダの金管も綺麗に入ってきて、ことから、この演奏全体が良いものになりそうだと予感させた。

 そしてその予感が確信に変わったのが、チェロが奏でる第一主題の部分であり、穏やかな表情で音楽が心地よく流れ、トランペットの音色も気持ち良い。

 

 ハープはやや音が硬いかなとは思えたが、流れには乗っている。

 そして、各楽器群のバランスは崩れることなく、第一楽章の爆発的フィナーレを迎え、シンバルの響きと金管の咆哮に鳥肌が立つ。

 この時点でこちらは久しぶりに興奮してきていた。

 中国の演奏会にありがちな楽章間の拍手もなく、聴衆も含め第一楽章の余韻に浸る。

 

 第二楽章も力強く、コントラバスからスタートする。

 オケ全体もずんずんと力強く進んでおり、特に弦楽群はとても乗っているようでうねっている。

 いや、弦だけでなくオーボエやその前列のクラリネットなども気持ち良さそうに体を揺すらせて吹いており、メロディを奏でている。

 こんな乗っている状態のこのオケ(上海交響楽団)を見たのは初めてではないだろうか?

 この大編成のオケを気持ちよく導いているのは指揮者であり、指揮姿もセンス良くオケを捌いている。

 

 第三楽章に入る前に、再びチューニングが行われる、

 音楽が激しく動いたため、奏者と聴衆が息を整える意味もあるであろう。

 そしてティンパニとともにコントラバスがおどろおどろしく奏でられて第三楽章が始まる、

 オーボエが若干弱いような印象ではあるが、オリエンタルな豊かなメロディを紡ぎ出しており、全体を色付ける。

 充実感の漲る演奏である。

 

 そして破裂音のようにシンバルの音から第四楽章が始まる。

 楽章の副題にあるように嵐のように金管群が吠え、非常に格好いい。

 指揮者の姿も非常に熱がこもり、それに応えるオーケストラも非常に熱を帯びているように感じた。

 緊張感高く熱い演奏は最後まで続き、クライマックスのトランペットのファンファーレ、そしてホルンのアンサンブルのスタンドプレイまで、オーケストラが疾走する音楽にとてもしびれてしまった。

 

 当然演奏終了直後から聴衆のブラボーの嵐である。

  個々の奏者にはまだ世界のトップとは差が残っているかもしれないが、こんなに充実した演奏は海外のオケでも滅多に聴く事は出来ないのではないか?

 

 私の鑑賞歴の中でも今後も記憶に残るであろう演奏である。

 

 地味な顔の指揮者であるが(まだ言うか!)、こんなに熱い演奏が中国人指揮者で出来るならもう外国人の客演指揮者なんかほとんどいらないのでは、それだけの力を感じさせてくれたこの夜の上海交響楽団であった。