上海彩虹室内楽団ベートーヴェンマラソンその1
日時:2020年12月26日19:00~
会場:上海交響楽団音楽庁 演芸庁(チェンバーホール)
指揮:薛源
演奏:上海彩虹室内楽団
曲目:
ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調 作品21
ベートーヴェン:交響曲第2番二長調 作品36
ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調 作品55
感想:
上海の室内楽団である上海彩虹室内楽団によるベートーヴェンチクルスの第一弾の演奏会。
このオケは上海の格付けで言えば四番手くらいの位置づけになろうか。
まぁ詳しい運営状況は知らないが、他の大手楽団と違って恐らく自主運営のオケではないだろうかと察している。
ジプシー的に固定の演奏場所を持たず、ゲリラ的に色んなところでコンサートをやっている情報を目にする。
この日は上海交響楽団の室内楽ホールを使用して行われた。
この会場に入るのは初めてであり、もっとこじんまりしたホールを想像していたが、キャパこそ400席程度と小さめではあるがかなりしっかりした構造のホールである。
プロセニアムはなく、シューボックスタイプのオープンな空間であり、日本でいえば東京オペラシティのコンサートホールに似たタイプになろうか。
さてこの日の第一弾は1番2番3番であり、ベートーヴェンの初期の交響曲の三曲である。
チクルスというとだいだい四回か五回に分けて行われるのが普通だが3回構成というのはちょっと珍しい。
毎回三曲演奏するのは時間的に長くなり、オケのメンバーや指揮者がかなりつかれてしまうからである。
もっとも日本だと大晦日に九曲続けてというとんでもない企画が長らく行われており、まぁそれよりはましかも知れない。
演奏が始まると思ったより音が響かないホールという印象。
残響が早く減衰してしまうのである。
そしてそれ以上に演奏自体が余韻を引っ張らないというか音を残さない弾き方をする。
良く言えば短くキレを求めているのだけど、そういった心地良さは残念ながら感じられなかった。
また木管楽器群も弱かった。
特にオーボエが貧弱で演奏の腰が定まらない。
いくら格の落ちる楽団とはいえ「ああ、こんなレベルで九曲続くのかな」と少々先が思いやられるレベルだったのである。
第1番は、特に演奏に接する機会がないだけにちょっと勿体ない機会である。
そして第1番が終了後に、メンバーが袖に下がったので休憩かなと思ったら、すぐにまた演奏者が出てきて舞台のステージに座った。
そのままチューニングが始まったが遅れて入ってきてチューニングに間に合わない奏者までいた。
マラソン演奏会とは言え、結構ドタバタな運営である、とこの時は感じた。
そして第2番の演奏が始まった。
「うん?」
聴き始めて驚いた。
第1番の音とは音の質が違うのである。
なんじゃこりゃ、どういうことだ?
よく見るとヴァイオリンの編成のメンバーが少し入れ替わっていた。
コンサートマスターまで入れ替わったのかは注意してなかったが、ちょっとタイプが違うん印象。
そして、2ndヴァイオリンが抜群に安定した音を聴かせ、やや不安定な1stを見事に差さえる。
さらに、木管群、特にオーボエとフルートが第1番に比べて物凄く安定して、まともなベートーベンを聴かせてくれる。
どうやら曲数が多いので適当に入れ替えつつ、全体をこなす予定のようである。
私が奏者の姿が見えない位置に座ってしまったので、具体的にどのようなメンバーの入れ替えが起きたのか、或いは起きてないのか分からないが明らかに演奏の質が第1番と変わっていた。
二管編成の1番(首席奏者)と2番を入れ替えていたということもありそうだ。
よって、オケの響き全体も改善し、、恐らくホルンの質も上がったので、ベートーヴェンらしきベートーヴェンとなった。
そして、第3番のエロイカ。
まともやメンバーが少し入れ替わり、第1番と第2番の混成チームのような状態で人数が増えた。
ヴァイオリンでは1stは、メンバーにムラがあるのか、やや音が揃わず不安定だったが、2ndはやはり安定している。
首席の社長秘書兼経理のような、しっかりタイプの女性が引っ張っており、着実な演奏に繋がっているようだ。
ただこのエロイカは指揮者の解釈がどうなのかなというところもややあった。
第1楽章の主題のリズムがやや変で、末尾の部分が速い。
そのほかも、全体に音が前がかりで溜がなく、せわしない演奏になった印象だった。
また第3楽章以降では疲れからか、音のバランスが崩れ、ちょっとぐちゃぐちゃになりかかったような箇所もなくはなかった。
ホルンも、頑張ってはいていい音を鳴らしている部分もあったが、ところどころ音を崩している部分もあった。
ところで、ホルンが第4楽章で、2階席から演奏する演出があったが、あれは何の意味があったのかちょっと謎だった。
まあトータルとして悪くない演奏だったが、個人的には第2番が良かったこの第一夜である。
翌日もこの続きがあり、4番5番6番である。