感じの悪い店にて | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日曜日の夜、

人気店や注目店は

何処も当日の予約は無理だろうと

行きつけの店に電話を入れた。

 

一軒は繋がらず(休みか)、

もう一軒は今日はイベントで

店舗の営業はやっていないと。

 

レストラン難民になりかけていた

僕と妻は

ある店に行く事に合意した。

 

とても美味しい店だ。

ただ、

店主がぶっきらぼうなので

妻が、

 

「不愛想だけど、

シューヤ的に大丈夫?」

 

訊く。

 

僕は、

 

「美味しいからいいよ。

あの店なら空いてるだろうし」

 

答えた。

 

席は空いていたけれど、

 

「予約の人優先だから

時間かかりますよ。

それでもいいなら」

 

いきなり

無愛想の洗礼を浴びる。

 

文字通り

背に腹は変えられない。

僕は

快諾した。

 

席につくなり

妻が苦笑している。

 

少し遅れて

外国人のカップルが入店した。

まだ席は空いている。

 

店主は

僕たちに伝えた事を

彼らにも不器用な英語で伝えた。

 

ただ、

二人にはまるで通じない。

カウンターにいた

一人の若者(彼も外国人だった)

が助け舟を出す。

 

「全然構わないよ」

 

と言って、

二人は席に向かった。

 

妻が

怪訝そうな顔をしている。

 

「彼ら待てるのかしら?」

 

僕に小声で言った。

 

静かな時間が過ぎる。

京都の日曜の夜は静かだ。

そして、

店内には

張り詰めた空気が漂っていた。

私語は禁止ではなかったけれど、

自由に会話すると

店主の気を損ねるんじゃないか?

誰もが思っているような雰囲気だ。

 

ただ、

僕は気にしていなかった。

 

突然、

僕達の後に入った

カップルが

立ち上がり、

店を出て行ってしまった。

 

妻が目を丸くしている。

 

「何か問題があったのかしら?」

 

僕は言った。

 

「そんなに時間経ってないのにね」

 

と。

 

飲み物も訊かれなかった事が

癪に触ったのか

(僕たちも注文までに

凄く時間がかかった)、

それとも

この意味不明なプレッシャーに

耐えきれなくなったのか

窓の外を見ると

男性の方が凄く怒っていた。

彼にとっては

感じの悪い店と

なってしまったに違いない。

 

「せっかく日本に来て

ディナー食べるんだからね」

 

妻は同情するような表情を見せた。

 

「美味しい食事を逃したね、彼らは」

 

僕は付け加えた。

 

思ったより

食事は早く出て来て

僕たちは

日曜のディナーを楽しんだ。

 

妻が、

 

「頼んだ4品中、

2品が前回と同じだったね」

 

笑った。

 

僕は

 

「美味しかったから

良かったんじゃない?」

 

自分達を正当化した。

 

会計を待つ間に、

僕は妻にこれから披露する

あるテクニックを予告した。

 

不機嫌な人を

ハッピーにする

特殊な手法だ。

 

僕は

おもむろに

店主に

まぁまぁ大きな声で話しかけた。

 

この店に何度も来た事があると。

今日も料理がとても美味しかったと。

外国人(例のカップルではなく

僕らの前に食事を済ませた人)も

絶賛していましたねと。

 

店主は

嬉しそうに

お釣りと領収書を持って来た。

 

嫌いになった人からは

好かれない。


先に

好きにならないと。

 

これは僕の持論だ。

 

目には目をではなく、

目には色目を!

 

店を出て駐車場に向かった。

窓の中から店の中が見える。

 

まだ日本人の女性と

外国人の男性一組みが残っていた。

 

店主とスタッフが

嬉しそうに何かを話している。

 

妻に僕は言った。

 

「次は流石に大丈夫だろう」

 

と。

 

そして

妻は僕に返した。

 

「食事の前に

そのテクニック使って」

 

と。