沖野修也 オフィシャルブログ

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

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丁度1年前の事だ。

 

Casa Brutusと

Vogueを買う為に

コンビニに立ち寄った。

 

車から降りると、

いつの間にか

生暖かい風が吹き始めていて、

雨上がりの夜が

本格的な春の訪れを予感させた。

 

自動ドアが開き、

僕と目が合った見知らぬ男性が

唐突に話しかけて来る。

 

パジャマとも部屋着とも

見分けのつかない

安っぽい柄モノのセットアップ。

 

日焼けか酒焼けか判らないけれど、

顔は赤くて黒かった。

 

目を見開いて

ゲップ混じりに

早口で自分の言いたいことを話すと、

驚きを反芻するかのように

首を傾げながら店を出て行くではないか。

 

日本語?

別の国の言語?

それとも、

ただの酔っ払い?

 

雑誌コーナーに向かう僕は、

ふと窓ガラスに映る自分を見て、

ある事に気付いた。

 

あ、

俺、

機長の格好のままやん・・・。

 

 

2020/3/8

動物病院で愛犬の点滴を済ませると

僕たちは車で北に向かった。

 

「腎臓は良くならないけれど、

点滴で負担を軽減すれば

延命は出来るらしいね。

それでも、

余命1週間の宣告を受けて

3ヶ月も生きているのには

先生も感心していいたよ」

 

僕はいい知らせだと思って

妻に伝えたのだけれど、

マスクをしていても

彼女は浮かない顔をしているのが判る。

窓の外を見つめる虚ろな瞳は、

僕の期待に反して淀んでいた。

 

「元気でいてくれるならいいけれど、

何度も苦しんで、点滴で

延命するのが果たしていいのかしら」

 

愛犬を抱え、

頬ずりする彼女の表情が

明るさを取り戻す。

しかし、

それは喜びとは少し距離のある

慈悲の微笑みであった。

 

妻が

着物の帯をリイメイクして作った

クラッチバッグを納品する為に、

哲学の道に面した

セレクトショップに向かった。

堀川通りを北上し、

今出川通りを左折すれば

そこまで15分もかからない。

 

今出川通りの

突き当たりに車を停める。

小雨の中を

駆けて行く妻を見送った。

愛犬も助手席から

彼女の後ろ姿を追っていた。

 

待つ事5分。

 

雨に打たれながら、

苦笑と共に妻が戻って来る。

愛犬を抱え、

車の内側からドアを開けた。

 

「丁度私の事を話していたみたいで、

スタッフがビックリしていたわ」

 

納品を終えた安堵からか、

それとも

人を踊ろかせた達成感からか、

彼女が少女のような

乾いた笑顔を見せる。

低気圧が

景色を灰色に染めているにも関わらず。

 

「例の店で朝食を食べないかい?」

 

僕は褒美を与える父親のように提案した。

診察に待たされなくて済むように

早朝に家を出た僕達は

まだ何も食べていなかったからだ。

妻のお気に入りの

サンドイッチが食べられるカフェが

ショップの近くにあったので

車で移動する。

 

白川通り今出川の交差点で

信号待ちをしている時の事だ。

僕は自分の目を疑った。

去年亡くなった筈の母が、

横断歩道を

足を引き摺りながら渡っている。

今出川通りの南側から、

北側へ・・・。

 

「お母様に似てるわね?

彼女大丈夫かしら?」

 

妻も同じ事を思ったようだ。

ニットキャップにマスク姿、

防寒具を着て

杖をついて歩いている。

母に似た人は、

何度も

横断歩道の途中で立ち止まり、

動き出しては、

また立ち止まっていた。

 

僕は、

車を飛び降りててでも、

彼女を助けに行きたくなったが、

後ろには車が数台いるのが

バックミラーに映っている。

歩行者用の青信号の点滅が赤に変わり、

もう少しで彼女が道を渡り終わる。

僕は心の中で祈った。

 

「どうか無事に!」

 

交差点の中央まで進出し、

白川通りを挟んで

左折待ちをしている対向車を

凝視した。

ドライバーがゆっくりと動き出したが、

運転手は

彼女が横断歩道を渡り切るのを

待ってくれている。

彼もまた心配そうに

彼女を見守っているのが

手に取るように判った。

 

「何とか渡り切れたみたいね」

 

妻が僕越しに彼女の方を見ている。

僕は、

右折して前方に注意を払っていたので

妻の報告に胸をなで下ろした。

 

数メートル程移動すると

道路の反対側にカフェが見えた。

コインパーキングを一か八かで探そうと

左折して路地に入るも見事に見つからない。

更に二度左折し、

僕は再び

白川通り今出川の交差点に舞い戻った。

 

「え!」

 

僕は思わず声を上げた。

左折しようとした僕の車の前に

母に似た人がいる!

 

今度は白川通を

西側から東側に渡ろうとしていた。

しかも、

横断歩道の半分に差し掛かってもいないのに、

既に歩行者用の信号は点滅している。

その上、

彼女は足が痛いのか

遂にその場で立ち止まってしまった。

 

僕は彼女を轢かないように注意して

白川通を左折し終えると

交差点を出た所で

車を道路の左端に停め、

今度こそ車から飛び降りた。

 

「ここ危なくないの!?」

 

妻が叫ぶ声がドアを閉める時に聞こえたけれど、

僕はその質問を振り切って道路に飛び出した。

白川通を北に向かって今出川通を横切った車の

運転手に手のひらを見せて制止する。

 

「おばちゃん!」

 

僕の声に気付いた母に似た人が、

杖を持っていない方の手を僕に向ける。

宙を掴むように開いたり閉じたりして。

その動きはビルから落下する人が

助けを求める最後の懇願を彷彿とさせた・・・。

 

僕は右手で彼女の手を握りしめ、

左手を二車線左側から

南下する為に動き出した車の方に突き出した。

右側車線の先頭車は僕たちを待ってくれていたが、

左側の車は待たずに発進しようとしていたからだ。

僕のオーバーアクションが視界に飛び込んだせいか、

運転手が急ブレーキをかける。

僕たちはゆっくりと、

且つ慎重に横断歩道を渡り終えた・・・。

 

「ホンマにありがとうなぁ。助かったわ~」

 

汚れたマスクの中で口が動いてる。

同じものを何日も使っているのだろう。

倹約か無精なのかは判らないが、

その”選択”までが母に似ていた。

 

「いえいえ、お困りのようでしたので」

 

彼女が左方向に進みたがっている。

僕は、手を引いて一緒に歩きながら

彼女に尋ねた。

 

「お家まで車でお送りしますよ」

 

マスクの上から見えるシワだらけの顔も、

晩年の母同様無表情だった。

 

「近くなんで、そこまででええよ。

雨やから滑るし歩くの危なくて・・・」

 

僕は彼女に歩調を合わせた。

時折振り返って

交差点の近くに乗り捨てて来た車を確認する。

他の車の走行の邪魔にはなっていないようだけれど、

突然放置されて不安になっているんじゃないかと

今度は妻が心配になって来た。

 

「ここ!ここやねん」

 

彼女が立ち止まったのは、

僕達が行こうとしていたカフェだった。

あまりにも彼女に似合っていないので

僕は困惑してしまう。

奇遇と言えば、

奇遇だけれど・・・。

 

背後から声がした。

 

「おはよう!」

 

でかいパーマ頭で、

派手なサングラスをかけた細身の老人が

母に似た人に声をかけて追い越して行く。

二人の目的地は、

カフェではなく隣の店だった。

 

「おおきに、ホンマおおきにえ」

 

僕から手を離したその人は、

全面がガラス張りなのに、

内側が仕切りで見えないようになっている

店の中へ入って行く。

隙間から中の様子が垣間見る事が出来た。

パイプ椅子にびっしりと老人達が

座っている。

最前列には健康食品が山積みされていた。

講演者が巧みな話術で彼等に高揚感を与えた後、

まさかそれを彼等に売りつけるのではないだろうか・・・。

僕は、わざわざそこに彼女を連れて来たのだ!

 

スタッフと思しき男と目が合った。

覗き込んでいる僕を

怪訝そうな顔で睨みつけている。

 

僕は足早にその場を去った。

カフェの前を通り過ぎ、

車に向かった。

 

妻は置き去りにされた事を

怒っているかもしれない。

いや、まさか・・・。

それでも僕は、

自分を褒めてくれることを

決して期待してはいなかった・・・。

 

信号で立ち止まる。

 

雨は少し弱くなって来たけれど、

隙間から入った雨つぶが

眼鏡の内側に付着し、

僕の視界を鈍らせる。

 

信号が青に変わる時、

僕の母も、

その手の集会に

よく足を運んでいた事を

はっきりと思い出していた。

 

横断歩道の途中で

もう一度

車の方に目をやると

妻と妻の膝の上に乗っている愛犬が

共に僕を見つめていた。

 

3/7(日)放送の

InterFM897、

The Room Radioは、

二度目の登場となる

社長 from Soil &"Pimp" Sessions!

 

皆さん、

二度目は捻って来ますね。

 

Soil & "Pimp" Sessionsは再来週、

3/17にカバー・アルバム

"The Essence Of Soil"を

リリース!

 

その発売に先駆け、

何と

社長は、

Soilを始める前にDJとして

プレイしていた彼のルーツとなる楽曲を

紹介してくれるそうです。

 

これは

Soilのファンにとっても、

ルーマー(The Room Radioのリスナー)

にとっても

たまらない

On Airになるでしょうね。

 

思い起こせば

僕の後任で

Monday Michiruさんのマネージャーになった

桜井マリオさんという方からデモをもらったのが

もう20年以上前の事ですかね。

 

色んなDJが

Gilles Petersonにデモを渡した説がありますが、

僕もその内の一人です(笑)。

 

まぁ、皆、

Gillesが好きそうな音だと思ったんでしょう。

そして、

これはGillesにかけてもらって

その存在を

世界に広めて貰おうと渡したんでしょう。

 

いずれにせよ

立派に育ったSoilは、

和ジャズのレジェンド以降では、

間違いなく、

海外で最も知られた

ジャパニーズ・ジャズ・バンドとなりました。

 

デビュー前からその存在を知る身としては

とても嬉しい事です。

 

コンスタントにリリースを続け、

世界を旅する(今は難しい状況ですが)彼らを

本当に尊敬するし、

今も、

The RoomやThe Room COFFEE & BARで

DJをしてくれている社長には

感謝しかありません。

 

彼らの音楽性から

きっと好きな音楽は僕に近いと思うので、

社長がどんな曲を選んでくれるのかは

個人的にも興味があります。

 

ひょっとすると

新しいカバー・アルバムからも

かかったりするのかな?

 

という訳で

毎週日曜、夕方4時からはInterFM897で、

The Room Radioをお楽しみ下さい。

 

 

社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS)
SOIL&"PIMP"SESSIONSのアジテーター。ジャズの枠組みを超えたパンキッシュでエネルギーに満ち溢れたパフォーマンスは世界中で高い評価を受け、数多のビッグフェスティバルに出演中。また、社長のもう一つの顔であるDJは、96年より活動を開始。ジャズを軸にしながらジャンルの壁を超えた選曲で、高揚感に包まれたフロアを演出している。
近年では様々なアーティストへの楽曲提供やリミックスを行うなど、作曲者・プロデューサーとしての能力も評価されている。
さらに福井にて初開催されている「ONE PARK FESTIVAL」の音楽顧問を担当している。

 

緊急事態宣言中、

週末営業のみとさせて頂いている

The Room COFFEE & BAR。

 

今週日曜3/7のゲストは、

WyolicaのAzumiさん。

 

大沢伸一君がプロデュースした

デビューの頃から知ってるんで

結構長い付き合いなんですよね。

 

The Room COFFEE & BARの開店にも

駆け付けてくれたAzumiさん、

何と今回多大なるサポートをして頂けることに!

 

実は、

The Room COFFEE & BARのオープン前から

抹茶ラテ構想がありまして・・・。

 

バリスタ磯崎君と打ち合わせの時も

「沖野さん、宇治出身ですよね?」

と言われてたんです・・・。

 

なのに、

僕、

お茶人脈全くなく・・・(謝)。

 

紅茶は

今回コラボしている

トリバ・コーヒーの鳥羽さんに

ご紹介頂いたんですが、

宇治出身の僕が

メニューに入れたかった抹茶ラテは

間に合わなかった

(というか取引先が見つからなかった)。

 

そんな時、

Azumiさんが、

「うちの実家お茶屋なので卸せますよ」

と。

 

女神降臨!!w

 

いやー、後光が差してましたね。

 

なんでもAzumiさんのご実家は、

昭和二年に京都でお祖父様が創業し、

お父様が北海道で開業した日本茶屋。

お母様も長年茶道に携わっておられ、

お祖母様も茶道の先生なんだとか。

 

かくして

この度、

3/7から目出度く

The Room COFFEE & BARにて

抹茶ラテを導入することになったんです!

 

ちなみに

お茶を使った秘伝のカクテルもあるそうで、

そちらも3/7にお出しする予定です

(現在、若干トラブルありまして冷や汗が・・・)。

 

よって、

ローチ・パーティー的に

Azumiさんに、

DJもお願いしました!

 

抹茶ラテもカクテルも

あの場所でのAzumiさんの

DJも楽しみです。

 

僕、事情があって金曜の試飲会に参加できないので、

日曜日がとても待ち遠しいんです。

 

 

それにしても、

鳥羽さんやAzumiさんみたいな

仲間と協業出来て良かったなぁ。

 

まだまだやれる事?人?ありそうな/いそうな・・・。

 

The Room Coffee & Bar Weekend Party Vol.14 Azumi(Wyolica)

2021年3月6日(土)

The Room COFFEE & BAR

150-0002東京都渋谷区渋谷3-21-3

渋谷ストリーム1F

14:00〜18:00

(営業は11:00〜18:00迄)

緊急事態宣言中、

週末営業のみとさせて頂いている

The Room COFFEE & BAR。

 

今週土曜のゲストは、

黒田大介さん。

 

The Room本店における

音楽的な支柱で、

急逝されたRyuhei The Manと

二本柱であったと言っても過言ではありません。

 

かつて

二人はWAH WAHなるイベントを共催。

中でも一番思い出深かったのが

2013年の黒田さんの45歳のバースデー・スペシャル。

 

 

どうですか、この豪華メンバー!

 

僕、7インチ持ってなくはないんですが、

どちらかというとLP派だったので

この時生まれて初めて7インチだけでDJしました。

この並びで・・・マジか・・・

と汗をかきながら回したのを覚えています

(ちなみに2年前の

Ryuhei The Manの45歳祝いにも

7インチオンリーで参加しました)。

 

二人がWah Wahに区切りを付けてからも

共にThe Roomの重要なDJとして

回し続けてくれました。

 

でも、もうRyuheiさんはいない・・・。

 

The Room本店が休業中の今、

黒田さんに

The Room COFFEE & BARで

プレイをお願いしています。

 

何故なら

黒田さんの情報とテイストとスキルは、

お客さんに聴かせたいだけでなく

僕自身が聴きたいからなんです。

 

Ryuhei The Manの仲間も

駆けつけてくれると聞いています。

 

RyuheiさんはRyuheiさんだし、

黒田さんは黒田さんだから

ないものを求めてはいないんです。

 

ただ、

二人に共通するのは

"音楽と人間への愛と尊敬"。

それを

選曲を通して感じたい。

 

そんな表現が出来る数少ないDJの中で

直近でブースに立てるのは

黒田さんしかいないと思うんです。

 

追悼じゃないけれど、

黒田さんのかける曲を聴きながら

個人的に献杯したいと思います。

 

でもきっと黒田さんのことだから

ファンキーな曲で僕達を

楽しませてくれる事でしょう。

 

週末の午後を

グッド・ミュージックと共に

コーヒーやカクテルを飲みながら

過ごしてみませんか?

 

The Room Coffee & Bar Weekend Party Vol.13 黒田大介

2021年3月6日(土)

The Room COFFEE & BAR

150-0002東京都渋谷区渋谷3-21-3

渋谷ストリーム1F

14:00〜18:00

(営業は11:00〜18:00迄)