インスピレーション | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

この初夏、

少し変わった旅をした。

 

近々行われる某シャンパーニュ・メゾンのイベントで

選曲を担当するのだが、曲選びのインスピレーションを

手に入れる為に(流れる映像の撮影を兼ねて)フランスに行って来た。

 

僕はプチ・ユーロ・ツアーを兼ねていたので、

まずは、パリ入り。

 

着いたその日が丁度音楽祭の日で、

ユーロ・ツアーの時はいつも拠点にさせて頂いている

和食の人気店、枝櫓枝魯さんに直行した。

 

何年も前からお誘いしていたのだけれど、

いつもタイミングが合わず、

今年初の参加が実現。

 

通りが歩行者に解放され、

飲食店(勿論枝櫓枝魯さんも)が店の中や外にDJブースを設営し、野外フェス状態に。

 

見渡す限り、人、人、人。

 

しかも、

枝櫓枝魯の店の前の三叉路(店の中も)を埋め尽くした

パリ人達を踊らせているのは、

日本からやって来たDJ達。

 

木村コウさん、テイ・トーワさん、大沢伸一君、田中知之君、

そして、オーナーの枝國栄一さん。

 

海外からのDJを有り難く受け入れるのに、

ドメステイックなDJにはちょっと敬意の足りない日本人オーディエンスに見せたい光景だったな。

 

間違いなく彼等はワールド・クラス。

 

その人の多さにも盛り上りにも鳥肌が立った。

日本人DJはもっと世界にでるべきじゃないのかな?

 

で、僕も小一時間程回した後、

今回の目的地、ランスへと移動。

 

長旅の疲れもあり、車中で居眠りしていたら

あっと言う間に到着した。

 

ホテルが凄く感じ良くて、

古い納屋をリノベーションした宿泊施設。

 

そして、倒れるようにベッドに潜り込み

深い眠りに着いた。

 

翌朝気付くことになるのだけれど、

凄いロケーションの中にあったのだ。

 

朝食で、イベントでご一緒する踊り絵師の神田さおりさんと合流。実はここでとんでもないハプニングが・・・。

部屋を出る前に、日本にいる妻とFacebookで通話したものの

ちゃんと切れていなくて、そのまま神田さんとの会話が実況中継されていたのだ!妻からFacebookにメッセージが・・・、

 

「今、話してる女性は誰なのよ!」

 

と。

ちゃんと説明したので事なきを得ましたが、まさか携帯電話で、妻に盗聴?されていたとは・・・(汗)。

 

で、

朝食を食べたカフェ・スペースから一歩外に出ると

一面がブドウ畑!

駐車場を挟んだ反対側にある建物は小綺麗なスーベニール・ショップになっている(勿論、シャンパンも売っている)。

 

前夜は暗かったから判らなかったけれど、

僕はブドウ畑が一面に広がる街に来ていたようだ。

 

午前中に通訳の方を迎えに行って、

正午にはシャンパーニュ・メゾンの地下貯蔵庫見学。

 

とにかく、デカくて深い!

倉庫というより洞窟?

 

しかも、

かつてそこは、

石切り場であり、

教会であり、

野戦病院であったという。

 

目的は違えど

多くの人が集まった場所。

 

平和な今、

見学をする人と

ボトルを回したり

傾きを変える(それが品質管理の工程)職人を除けば

普段そこには誰もいない。

 

空間の価値の変化に僕は驚き、

そこに居たであろう様々な人々の姿に思いを馳せた。

 

午後になると僕と神田さんは、実際にブドウ畑に繰り出した。

 

シャンパーニュは高価な特産品なのは常識として、再び驚かされたのは、その光景そのものが観光資源だった事だ。

 

果てしなく続くブドウ畑。

見渡す限り、緑、緑、緑。

 

パリの喧噪も僕は楽しんだけれど、

誰もいない、そして、ただの畑の景色を満喫した。

 

バリ島で水田を観た時も心打たれた時の事を思い出した。

まさかフランスのブドウ畑に癒されるとは思いもしなかった。

 

異国にいる非現実感が作用しているのかもしれない。

それでも林や密林といった大自然とはまた違う魅力が

田園風景には、ある。

 

ヌケの良さとその広大さ。

日本の茶畑や水田も、きっと外国人旅行者にとっては

忘れられない記憶になると思う。

 

ランスに2泊してパリに戻った。

イベントで使うレコードをフランスで買って来るというのも

旅の目的の一つだった。なんとも贅沢な企画・・・。

逆に言うとそこまでして曲を選ぶという事実から、心地良いプレッシャーを受けた。洞窟、教会、ブドウ畑、更にはパリの音楽祭の人だかりが、レコードを試聴する度にフラッシュ・バックする。

 

 

イベントの準備にこんなに時間をかけ、取材をしたことはかつてなかったかもしれない。シャンパーニュ・メゾンの歴史や思想にも触れた。今回のフランス旅行では、公私共に役立つインスピレーションを得ることが出来たような気がする。

 

足を運ぶ、人に逢う、そして背景を学ぶことで僕は曲を選ぶ際に必要なフィルターを間違いなく増やせたに違いない。そのレイヤーが純度の高い創作を産み出すのだ。

 

今、僕のインスピレーションは、心の奥深い場所で寝かせられている。ランスの街の職人のように、そろそろチェックに行くべきタイミングかもしれない。シャンパーニュ同様、人が待つ華やかな場所に解き放つ時期が近付いている。