決断の時 | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

 

決断の時が近い。

 

The Roomを3月末で閉店するか

4月以降も営業を続けるか、

引き渡しのことも考慮して年が明けたら

1週間以内には決断したいと思う。

 

この24年間

おそらくのべ70万人以上の方にお越し頂いた

The Room。

 

オープン当初は

当時珍しかった

ソウルやジャズ専門の小箱としてスタート。

 

その頃、"渋谷のクラブ・シーン"は終っていると言われていた。

しかも246の南側で

週一や月一のレギュラーでさえ難しいと思われていたジャンルで

毎日営業するなんて絶対に無理だ!

という多くの人の助言を無視して(笑)

契約から1週間で

しかもたった600万の資金で

開店した。

 

開けて3ヶ月は閑古鳥が鳴いていたが、

DJをしてくれていた瀧見憲司さんがプロデュースした

ラブ・タンバリンズと

僕と一緒にThe Roomを立ち上げ、内装を手作りしただけでなく

毎夜店に顔を出してくれた大沢伸一率いるモンド・グロッソの

成功と同時期に店は大繁盛し、

1996までには黄金期を迎える。

 

The Roomの特徴は

The Room Classicsと呼ばれる店特有のヒットがあったこと。

 

そして中でもレギュラー陣が関わった楽曲は、

クラブを飛び出し、

音楽業界を変革するような大きなヒットになった。

またいくつかの曲は

日本のみならず海外でもヒットし、

他店にはないクリエイティヴ性を

The Roomは発揮したのだ。

 

Cherish Our Love/Love Tambourines(瀧見憲司)

Anger/Mondo Grosso(大沢伸一)

Invisble Man/Mondo Grosso(大沢伸一)

リズム/UA(大沢伸一)

JR. SWEET/CHARA(大沢伸一)

揺れる体温/ACO(吉澤はじめ)

You Make Me(Monday満ちる)

SOULS/bird(大沢伸一)

You Can See The Light/Cosmic Village(吉澤はじめ、黒羽康司他)

Eclipse/Kyoto Jazz Massive(沖野修也、沖野好洋、吉澤はじめ、黒羽康司)

愛の河/Sleep Walker(吉澤はじめ)

I Am With You/吉澤はじめ

Love Is Everywhere/Masa Collective(沖野修也)

Spirit Of Love/ROOT SOUL(池田憲一)

Blazin'/DJ KAWASAKI

Into You/DJ KAWASAKI

Shine/Shuya Okino

Still In Love/Shuya Okino

 

更に

The Roomは

ダンス・フロアーでのミュージシャンのセッションにも早くから取り組んだ。

多くのアーティスト達が参加してくれたものだ。

Soil &"Pimp" Session、Cro-Magnon、Coma-chi、さかいゆう、Hanah Spring、

Fire Lily、Hiro-A-Key・・・。数え切れないプレーヤーが

SOFAというイベントを通過して世の中に羽ばたいていった。

Ravi Coltraneまでが吹きに来てくれることもあった。

 

そして、

The Roomは

様々なトライを繰り返し

クラブの可能性を模索して来た。

 

江川ゲンタさんの

伝説のイベント、JAMは

フロアーにゴザを敷いて、

皆が靴を脱いで音楽を楽しんだ。

 

SOFAがセッション・イベント化する前は

フューチャージャズ喫茶というコンセプトで

21世紀版のジャズ喫茶を目指していた。

 

Mondo Grossoの撮影を手掛けて頂いた

平間至さんは、The Roomで個展を開催してもらったし、

今をときめくプロダクト・デザイナーの角田陽太君は

Tokyo Desigers Weekのイベント会場にThe Roomを使いたいと言い出し、

椅子の展覧会を敢行した。

 

実験的なイベントは数え出したらキリがない。

DJの独演会はかなり早い段階から打ち出していたし、

DJが1曲づつプレイする"一曲入魂"は最終的には108人を数珠繋ぎした。

大晦日の24時間ノンストップDJは4回もやっている。

10日間で対戦形式の十番勝負もあったし、

オープンからエンドまでの完全バック・トゥ・バックも何度も取り組んだ。

CDJだけのプレイは間違いなくThe Roomが世界初だったし、

今はなきUstreamでの"完全合法DJプレイ"もThe Roomが世界に先駆け行った。

 

キーワードは世界。

 

僕が20歳の時にロンドンで体験した

ファンキーでジャジーな音楽と

人と人との間にある垣根の低さが

The Roomのコンセプトの核にある。

 

勿論、

沢山の海外ゲストがThe Roomで回してくれたけれど、

同時に

世界に通用する日本のDJ達が

The Roomで回し続けてくれている事が店の誇りだ。

 

アーティストを育て、

曲を生み出し、

そして

状況を作り出す。

 

そんな事を24年続けて来た。

 

もうすぐ2016年が終る。

 

「去年も閉めるって言ってませんでした?」

 

それは否定しない。

閉めない決断をし、

改装もした。

だからと言ってまた閉めないとは限らない。

 

店の不振は深刻だ。

これはThe Roomの問題だけではない。

 

クラブのあり方の変容。

風営法の問題。

娯楽の多様化。

インターネットの普及。

スタッフの高齢化。

新店のオープン。

音楽トレンドの変化。

若者の引きこもり。

景気の停滞。

CD不況・・・。

 

考えられる悪い条件はいくつでも挙げられる。

 

それでも週末はなんとか健闘している。

しかし、その週末でもかつての繁栄はない。

 

若いオーガナイザーに話を聞くと

同世代の音楽好きは週末でも早い時間にしか街にでない、

終電で家に帰ってゲームをしているそうだ・・・。

 

ネットにアクセスすれば世界のTOP DJのMixがいつでも聴ける

今。

 

かつて情報を求めてクラブに通った人種を

引っ張り出すのはそう簡単なことではない。

 

音楽だけではなく

人との出会いこそが魅力的であったのに

終電で帰って家でゲームをする人を引き止められないのは何故だろう?

 

僕は

原因を自分の外側に求めたくはない。

何故なら

それでは永遠に問題が解決できないからだ。

 

元気のいい小箱は都内に存在するし、

アメリカの現代ジャズの隆盛には目を見張るものがある。

僕的にOKな音楽が全世界的に注目されているのだ。

 

震災の後、

半年近く客足が遠のき

壊滅的であったにも関わらず

なんとか立ち直った。

 

僕達はクラブというカテゴリーを離脱し

タマリバという概念を打ち立て

クラブが持っていた初期衝動を回復させようと試みた。

 

それでも、

ここ数年は

ギリギリの状態で継続してきた。

 

僕の本業が順調なお陰で

何とか会社としてThe Roomを維持出来ているというのが正直な所だ。

 

The Room発信のヒットで

店の営業とは別に

莫大な利益が生み出され、

僕の会社もThe Roomに

随分助けられてきたから

僕は還元するつもりで

The Roomを支えてきた。

 

それでも、

個人資産には限界があるし、

来年、

父が亡くなった50歳という年齢を迎えるに辺り、

僕は

The Roomへの援助を打ち切ることを決意した。

 

僕は僕で

新しいことを始めたいのだ。

 

かつて

閉店の危機で

皆さんをお騒がせした時は

経理を分けることで

僕は継続を選んだけれど

今回は

本気で援助を止めることを決めた。

 

だから

実は

閉めるかどうか僕が選ばなくても

スタッフが奮起しないと閉まってしまうのだ。

 

あとは

スタッフに続ける意思があるかどうか。

 

この1ヶ月

大勢の方に足を運んで頂き、

励まして頂いた。

 

感謝。

 

本当に心から感謝している。

 

そもそもThe Roomという名前をつけて

友達を呼ぶように遊びに来てもらいたい

という願いがあった。

 

今は、

The Roomを選んで頂いて

遊びに来て頂くということが

どれだけ有り難く

どれだけラッキーなことかを

痛感している・・・。

 

飽きられて

忘れられて

気嫌いされることだってあっただろうに。

 

お客さんの心を捕まえるのが

どれだけ大変か

会社の社長としても

一DJとしても

身を以て理解しているつもりだ。

 

今夜

24周年記念パーティーを終えて

スタッフと話し合い、

改めて彼等の意思を確認したいと思う。

 

残り3ヶ月の命か?

それとも1年延長するのか・・・?

 

17時か・・・。

そろそろ準備を始めないといけない。

 

今からは

モードを

切り替え

この問題を明日以降に棚上げしよう。

 

さて

皆さんと新年を祝う為に

今夜何をかけるかな。