DJ失格。 | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

昨夜、The Roomに初老の紳士がお越しになった。

そして、ファッション評論家の大内順子さんばりの

サングラスをかけたお連れの女性(奥様?)が

「ライブはいつ始まるの?」と僕にお尋ねに・・・。

今日は演奏はないんです、

レコードを回すだけなんですと説明するも、

「だって表の看板にジャズと書いてあったじゃないの?」

とご納得頂けない様子。

「まぁ、いいじゃないか」

と紳士に笑顔で僕に温和な眼差しを投げかけて頂き

事なきを得た。


尊敬するピアニスト、

吉澤はじめさんのニュー・アルバムに収録される

'My Favorite Things'の後に、

トモキ・サンダースをフィーチャーした

彼の新曲(はじめさんもトモキとレコーディングをしたのだ)を

かけていた時の事だ。

紳士がブースにやって来て、

「ファラオ・サンダースをご存知だとか」

とお尋ねになった。

店長の佐藤強志がお二人と話していたので、

おそらく僕が何者かを説明したのであろう。

僕はファラオさんと二度仕事した事があり、

いま流れている曲は息子さんが吹いている事を伝えた。
紳士が、

「ファラオは最高のサックス奏者ですよ。

勿論、コルトレーンがナンバー・ワンですが」

と仰るので、僕は慌ててファラオさんの曲を探した。

確か、

'You've got to have freedom'は常備している筈・・・。
「あれないかな?『Karma』。

ファラオもいいけど、

一緒に歌っているレオン・トーマスがまたいいんだ」

と紳士。

僕も大好きな作品だけど、そのアルバムは家にある。

僕は持ち合わせていない事を詫びた。

そして、替わりにファラオさんの別の曲をかけるので

お楽しみ下さいと許しを請うた。


僕は基本的にリクエストを受け付けない。

しかし、

もしかけて欲しいと言われた曲を持っていたら、

流れの中で、

正しいタイミングで差し込むようにしている。

かかるのが待てずに帰ってしまう人もいるけれど。

そして、かけて欲しいと言われた曲が、

僕も好きで、持って来ていない時は、

似たような曲、或いは、

その曲を超える曲の提案で

リクエストした人を驚かせたいと思っている。

自分が聴きたかった曲はかからなかったけれど、

もっといい曲が流れた!と喜んで頂けるように。


僕のDJが終わっても

お二人はしばらくThe Roomにいらしたけれど、

僕が他のお客様と話している間に

お帰りになってしまった。

月一で銀座のBarでジャズだけをかけているので、

そこなら『Karma』を両面大音量で

お聴き頂けますよと告げるべきだった・・・。
彼等がThe Roomに戻って来られるまで、

僕がDJ失格かどうか判らない。

その日がいつになるか知る由もないが、

アルバムを店に持って来て飾っておこうと思う。

丁度昨日、改装した後の壁が殺風景だから、

棚を作って本やレコードを陳列するのはどうかと

スタッフと話したばかりだった。

そこには『Karma』が似合うに違いない。