人力のサンプリング&マッシュ・アップ〜それは枯葉か足跡か? | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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「それ、ただのアレンジだからね・・・」

菊地成孔さんから指摘を受けたのは
東京ジャズの
プロモーションの為にセッティングされた
日経新聞での
対談形式インタビューの席での事だ。

今年14回目となる
東京ジャズに
僕は
KYOTO JAZZ SEXTETとして
出演した訳だが
デビュー・アルバム、
『MISSION』で試みた
人力のサンプリングとマッシュ・アップを
より判り易い形で表現すると
直前にブログやSNSで公表していた。

『MISSION』はブルー・ノート
(しかも63年から66年までの新主流派)の
カバー・アルバムとして世に出たが
実は
Lee Morganのカバー
Search For New Landには
John ColtraneのMy Favorite Things、
Wayne Shorterのカバー
Speak No Evilには
Miles DavisのFoot Prints
(作曲はWayne Shorter)、
Freddie Hubbardのカバー
The Melting Potには
Art Ensamble Of ChicagoのTheme De Yoyoと
John ColtraneのLove Supreme、
Herbie Hancockのカバーには
Cannonball AdderleyのAutumn Leaves、
Art Blakeyのカバー、
Mr.Jinには
Dee Dee Bridgewaterの
People Make The World Go Around、
Joe Hendersonのカバー、
Jinrikishaには
Woody ShawのBlack Renaissanceと
様々な
ジャズの名曲の
影響が散りばめられている。

しかも、
過去を振り返るだけでなく、
同時代の音楽、
Theo Parrish、
Robert Grasper、
Flying Lotus、
Otis Brown III、
Go Go Penguin、
Gregory Porterを参考にしながら
新しい時代のジャズが
どうあるべきかを考えた。

しかし、
その意図は
リリースの際、
全く話題になることはなかった。

元ネタを資料として
事前に業界関係者に配布していたものの
取材を受けた時にも
評論家の方からほとんど
ネタに関する質問はなかった(1名を除いて)。

それは
新主流派のカバーであることや
写真祭Kyotographieとの
コラボレーションであったこと、
また
沖野修也が始めた
本格的ジャズ・プロジェクトであったこと
さらに
オール・アナログ・レコーディングであった等
切り口が多かった上に、
菊地さんが仰る所の
人力のサンプリングやマッシュ・アップは
単なる
アレンジにしか聴こえないという
決定的な盲点に
僕が気付かなかったことが
原因だと思われる。

余談になるが
僕は
情報を
てんこ盛りする傾向が強く、
「銀座の」
「ブルガリの」
「テラスで」
「無料で」
「沖野修也が回す!」
みたいなイベントをやらないと
気が済まない性分で
そんなに盛り過ぎたら
お客さんの感覚が麻痺するので
加減しないと後で困りますよ
スタッフにいつもたしなめられている。

24時間ノンストップDJとか
出演者100人が全員1曲しかかけないとか
現地に手ぶらで行って、
現地で全てレコードを購入して
かけ終わったら希望者に全部プレゼントして
手ぶらで帰って来る・・・
みたいな事もやったしね。

もとい、
見事に僕の狙いがスルーされた為、
そのリベンジを
僕は虎視眈々と狙っていた訳ですよ!!

と言いたい所なんですが、
僕は頭がちょっと弱いので
東京ジャズのプロモ取材まで
自分の盲点に
全然気付かなかったんですよね。

そう、
菊地さんに指摘されるまで(汗)。

「道理で誰も訊いて来ない訳だ」と・・・。

だから慌てて
直前に!
ブログやSNSで
人力のサンプリング&マッシュ・アップを
より判り易く実演しますと
書いたんです(汗)。

そして、
東京ジャズ。

僕がアナログでかけた
Theo ParrishのCypher Delightに
石若駿が生ドラムで絡み
DJ MIX的に
Succotashに突入。
ソロ・パートでは
平戸祐介が
Herbie Hancockの
「Camereon」を断片的にコラージュして行く。

スウィング・ブレイクで
アルバム・ヴァージョンでは小泉克人が
ベース・ラインだけを引用していた
「Autumn Leaves」のサックス&トランペットのフレーズ

類家心平と栗原健が差し込む。

そして、
カットイン的に
「Foot Prints」のベース・ラインへ移行すると
菊地さん呼び込んでの
「Speak No Evil」へのテーマへ・・・。

人力のサンプリングで都合6曲が
2曲に凝縮された。

そして、
Richard Spavenと石若駿のドラムを挟んで
Joe Hendersonのカバーへ。

アルバム・ヴァージョンの
ベース・ラインにもそのエッセンスを
注入していた
Flying Lotusの「Never Catch Me」の
ピアノのフレーズを
そのまま全編に敷き、
まさにFlying Lotusが
ライブ・バンドに起用した
Richard Spavenがドラムを叩く
という判り易過ぎる!展開。

しかも、
「Jinrikisha」との
マッシュ・アップ度を高める為に
元Mondo GrossoのB-BANDJを
サプライズ・ゲストとして
フィーチャーし、
Kendrick Lamarの存在感を代弁する役割を
彼に託したのだ。

各ミュージシャンの熱演は
ご覧になった方、
或は
生中継をお聴きになった方は
十分に堪能して頂いたと思う。

菊地さんまでが
KJSのコンセプトを具現化するために
Miles Davisの「Nefertiti」を差し込んでくれたのは
身に余る思いだったなぁ。

今や日本のジャズ界を代表するサックス奏者
菊地成孔さんが
LAのビート・ミュージックを
生で再現することを許される
数少ない男
RICHARD SPAVENと共演すること自体が事件だったし
(ちなみに菊地さんはご自分のラジオで
もしRICHARDが自分のバンドで雇えたら
金に糸目はつけない!と仰っていたそうな)、
RICHARDと
若手No.1ドラマーとの呼び声も高い
石若駿の対決?もまた
世界レベルのクオリティーであった。

また
彼らゲスト陣の本気度を引き出した
KJSの正式メンバーにも敬意を表したい。

ドリブルに
パス回しに
ミドル・シュートに
トリック・ブレイに
パワー・プレイを彷彿とさせる
その躍動感溢れる演奏は
オキノ・ジャパンの名に相応しい
大活躍であった。

ライブの開始前に、
クラブ・ジャズと
リアル・ジャズと
今ジャズを融合させると宣言したが
結果、
アシッド・ジャズに
LAのビート・ミュージックまでを
取り込んだ壮大な
音楽の実験を完遂できたと思う。

ちなみに
これは
自画自賛ではない。

事実の列挙。

でも
説明が必要な事自体が問題であるし、
KJSにはまだまだ伸びシロがある。

何せカバー・アルバム一枚出しただだからね。

次は
オリジナル・アルバム。

歴史を検証し、
音楽の先端を視界に入れながら
僕はどれだけ遠くへ行けるかを
今から
考えている。