エクスクルーシヴィティー | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

カザフスタンから帰国しました。
時間があれば、旅行記をアップしたいんですが、
僕、書くのに凄く時間がかかるので・・・。

とりあえず今日は、
カザフスタンで印象に残った一言について
書きます。

今回、
JAZZYSTANという
音楽フェスに参加したんですが、
前日に
地元のミュージシャンや
音楽ファンを集めた
ワーク・ショップが行なわれたんです。

そこで
ボストンから来たDJ KONという人が
興味深い発言をしたんですよね。

以下、
彼の発言の引用です。

「誰もが音源にアクセスできる
デジタル・ジェネレーションだからこそ、
"エクスクルーシビティー(限定性)”というものが
必要なんじゃないのかな?
DJのヒストリーを紐解いてみれば、
100枚とか200枚とかしかリリースされなかった
盤をプレイして
皆を盛り上げてたじゃないか」

この言葉に色々と考えさせられました。

僕がDJを始めた頃は、
DJは、コンピレーションも出していなかったし
(勿論、出してた人はいましたよ)、
オリジナル音源も出していませんでした
(ジャジー・Bは出してたかな)。

当然の事ながら、
お客さんは、
DJがかける曲を買えなかったし、
聴く為にはクラブに足を運ばなければならなかった。

DJの方も
誰も知らない、
つまり
持ってない曲をかける訳だから
盛り上げる為には
有名な曲と混ぜたり、
曲順の妙で違和感をなくしたり、
それこそ
毎回かけ倒して
無理矢理ヒット曲にするなどして
工夫していたんですよね。

最近、
GROOVEという雑誌の取材を受けたんですが、
「最近のDJはBEATPORT(配信サイト)のTOP 40だけで
プレイしたりするんですよ・・・」
という話を編集の方から聞いて驚いてしまいました。

誰もが購入できて
誰もが知っている音源をかける事を
DJと呼んでいいんでしょうか?

その取材、
須永辰緒さんとの対談形式だったんですが、
二人で
「それをDJと呼ぶなら、俺たちは呼び名を変えなきゃいけない!」
と意気投合(笑)。

時の1位の曲がかかったら、
オーッなんて盛り上がるの
なんか
変じゃないですか?

KONの話に戻りますけど、
CDが売れないとか音楽が売れない
なんて言ってないで、
逆に大量に作らない選択肢もあっていいと思うんです。

しかも、
CDや配信のようにコピーできない形態で。

そう、
アナログ・オンリー。

僕の部下、
冨永陽介(CHAMP)は
既にやってますけどね。

毎回、
300枚限定のアナログ・プレス。

デビュー曲、DAYTONAは
僕がお願いしてCDと配信でリリース
してしまいましたが、
基本、7インチのみ。

その限定性(飢餓感煽られますよね?)から
毎回SOLD OUT。

あの、ケニー・ドープが2枚買いし、
ディスク・ユニオンでは、
既に60~70年代のレア盤と同等の扱いを受け、
ヤフオクでは、万単位の値段で取引されているとか・・・。

勿論、曲がいいってのが前提なんですが、
彼は、
CDや配信で大量生産を目指さずに、
本当に欲しい人にだけ音源を供給し、
自分のパーティーでは、
おそらく、
7インチを買えなかった/買わない人をも
自分の曲で熱狂させています。

そんな、
冨永陽介の
潔さ、
作曲能力、
話題性

人気を呼び
色んなイベントや
地方からお呼びがかかり
キャリアを積むだけでなく
確固たるポジションを築きつつあるのです。

売り上げ枚数が減ったと嘆いたり、
売れないから出せないと途方に暮れる
ミュージシャンが増える中、
彼は、
着々と7インチを切り続け、
アルバムのリリースを視野に入れています。

レコーディングも
プレスも
販売も全部自分で仕切り、
毎回完売なので
赤字も出していません。

それって、
健全じゃないですか?

売れないのを
スタッフや
レコード会社や
世の中にせいにしない。

誰もができる事じゃないかもしれないけど
やろうと思えばできない訳じゃない。

でも、
その
発想と
勇気、
自分に対する
自信

なければ無理でしょうね。

色んなやり方があるでしょうけれど、
今一度、
エクスクルーシヴィティーという事に
目を向け、
DJが
誰も持っていない、
そして、
誰も簡単に買えない
音楽で
聴衆を盛り上げていた頃に立ち返る事で
生き残るヒント
みたいなものを
手に入れる事ができるんじゃないでしょうか。

僕達は
そこから
ここまでやって来た訳ですから。

カザフスタンで
注目のDJ/プロデューサーが発言した事で
自分が忘れかけていた事を思い出しました。
しかも、
自分の部下は既にその事を実践しているのです。

売りたいから
売らないへ。

それも一つの方法ではないかと思うんです。

全ての人に当てはまる方法論ではないですが、
音楽を作りたくてたまらない、
その曲をかけくて(演奏したくて)たまらない人には
参考になるかもしれませんね。