不思議な出来事その2 | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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村上春樹の不思議体験は、
大方の場合、
「ふうん、そんなこともあるんですね」
でかたずけられてしまうか、
「あれ、どうせ作り話でしょう」(作家だから)
と言われてしまうらしい。

ところが、ある知人にその2つのエピソードを
話して聞かせたとき、
「実を言うと、それにいくらか近い体験をした事があります」
と言ったみたいで、
その知人が語った内容というのが、
「偶然の旅人」のメイン・ストーリーになっている。

ここで、お詫びを。
本来、
小説をこんな風にかいつまんで紹介するべきではない
と知りつつも、
しかも、
ノーベル文学賞の候補に名前があがるような、
(ここに句読点入ってるからね)
偉大な作家の作品を
僕のブログの前置きにしてしまう事を
お許し頂きたい。
村上春樹さん、
そして彼のファンの皆さんごめんなさい。

さて、
その知人は、ピアノの調律師。
東京の西、多摩川近くに住む
41歳のゲイ。
それなりに満ち足りた生活を送っていた彼が、
火曜日になると、一人で神奈川県にある
ショッピング・モールに行って
人気の少ない
カフェで読書をするのが、
日課ならぬ、週課(?)だった。

ある火曜日の事。
彼が、チャールズ・ディケンズの
『荒涼館』を読んでいた時の事だ。
店の外にある
洗面所に行って戻ってくると、
隣のテーブルで同じように本を読んでいた女性が
彼に声をかけてきた。

何と彼女も『荒涼館』を読んでいたのだ・・・。

その事がきっかっけで二人はお互いの身の上話しを始め、
一緒に昼食をとる事になる。

ちなみに、村上春樹は‘彼’の話をする前に、
「個人を特定されることを避けるために、
いくつかの事実に変更を加えた。
しかしそれ以外は、彼が物語ったままになっている」
と書いている。念の為。

その翌週、
彼が同じカフェで同じように本を読んでいると、
またその彼女がやってきた。
二人は、
離れたテーブルで、
それぞれ『荒涼館』を読んだ。
そして、
昼前になると前の週と同じように一緒に食事をした。

食事が終わり、ショッピング・モールに帰る途中、
彼女は、
公園の駐車場に車を止め(彼女の車で別の場所に
食事に行っていたから)、
彼の手を握り、
どこか「静かなところ」に
二人で行きたいと言った。

ちなみに彼女は人妻である。

当然、彼は‘それ’を断る。
何故なら、彼はゲイだから。

彼女は泣いた。
そして、彼は彼女の髪を優しく、時間をかけて撫で続けた。
彼女の右の耳たぶにはほくろがひとつあって。
彼の姉にも似たような場所にほくろがあった事を
彼は思い出す。

実は、彼女は乳癌の再検査を受けることになっていて、
「もしかしたらそのせいもあったかもしれない」と彼に告げるのだ。

更に翌週の火曜。
彼はカフェに行くが、彼女は姿を見せなかった。
そして、その日の午後、彼はもう何年も会っていない姉に
電話をかけた。
彼のカミング・アウトのせいで、縁談がもつれ、
それ以来疎遠になってしまっていた姉に。

彼等は、その日の内に再会する事になる。
そして、姉も又、泣いた。

彼女は、乳癌の手術を受ける事になっていたのだ・・・。

全然、かいつまんでなかったね(笑)。
僕の抜粋は、
小説のいい部分には、
全く触れていないので、
もし、ここまでで
「偶然の旅人」に興味を持った人は
是非読んでみて下さい。

とにかく、
この短編を読んだのが、
月曜の夜。
そして、火曜日(同じ火曜だ!)に、
僕の身に
不思議な出来事が起こる。
「偶然の旅人」を読んだ
翌日に・・・。

(つづく)