どくんご『愛より速く』 | 日向修二製作所

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全国を旅してテントで公演を行うテント劇団「どくんご」の公演を見てきた。場所は大阪城公園の大阪公演だ。確か何年か前も同じ場所で見たような気がする。


一応前置きしておくと、僕のブログ記事はネタバレを気にしないので、これからどくんごの劇をまっさらな状態で見たいと思っている人はここで読むのをやめてもらいたい。


では本編。


すでに東京公演を見た大学の後輩から、「去年1年公演を休んだ分、今年は『なぜ全国を旅して公演を行うのか』みたいな部分が伝わってきて良かった」というような話を聞いていたので、少し楽しみにして行った。結論から言うと彼の言葉でハードルを上げすぎてしまって、あれ、と思ってしまったのだが、まあそれでも、見て良かったと思える公演だった。


どくんごのお芝居にはおよそ「筋」と呼べるものはない。なにかのお話というわけではない。なので雰囲気を楽しむだけで十分だと思っている。僕は演劇を観に行く時にだいたいは「エンターテインメント」を期待して行くが、どくんごの場合はどちらかというと「アート」だな、と思っている。

今回もアートらしく、綺麗な絵作りや、考えさせられるような場面があった。海の中に潜るシーンは綺麗だったし、いろんな動詞を重ねる場面は意味深だったし、チャーハンをつくりながらマカマカの話をするシーンも面白かった。ちなみにチャーハンは客席をまるでお葬式の焼香のように回ってきて面白かった。今日のゲストだったというダンサーさんとサックス奏者の場面はなんだか不思議な感じがした。今思えば、あれが一番アートだったかもしれない。演劇的には、ある程度の長さのシーンを、同じセリフ、同じ動きで繰り返しているのだけれど少しずつセリフがなくなって行くのが面白かった。セリフが消えて行っても、案外覚えているもので、僕に伝わってくるのがなんだか不思議な感覚だった。最後にすべてのセリフが消えてしまった時はちょっとしんどかったけど。


後輩が言っていた、「旅公演の意味」みたいなものは、「重い扉を開けて、ただいま」だったのかな、なんて思う。


あとは、心におみそしる、だろうか。心を探す一連の流れはなんだか綺麗だった。


こんなことを言っておきながら、僕が一番好きだったのは、壁に挟まれていたアベさんの話だ。結構エンターテインメント色が強かった場面だと思う。かなり笑った。やっぱり僕はエンターテインメント寄りなんだろう。


野外テント劇であり、公園の中で公演を行なっているので、すぐそばの道を一般の人が通る。ランニングをしている人なんかもいっぱい通っていた。みな一様に怪訝そうに通り過ぎて行くのが面白かった。これは毎回そうなんだけれど。今回はある場面で役者が奥の方に消えて行く際に、ちょうど警察(かまたは警備員の人)が通りかかってかなり怪しんでいた。これは今日イチのミラクルだろう。とても面白かった。野外劇はこういうところも楽しみだ。


役者の2Bさんは相変わらず動きがキレキレだった。全体的に中腰のシーンも多く、役者のみなさんの足腰の強さが伺えた。役者のスキルもみなさん相当に高いように思う。


また来年も旅公演をしてくれるだろうか。また次も見たいと思う。