Shenandoah【新アルバム各曲解説】大切なルーツ | 保坂修平のピアノ音楽

保坂修平のピアノ音楽

東京藝術大学楽理科卒業。ジャズピアニスト、作曲家。

2023年12月27日にリリースした保坂修平トリオのアルバム「ボス・サイズ・ナウ」。

アルバム収録の各曲について、CDのライナーノートに書ききれなかったこと。

今日は10曲目の解説です。

 

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10, Shenandoah

 19世紀から歌われているアメリカの民謡。キース・ジャレットのソロ・ピアノによる忘れがたい名演がある。この凛として暖かい音楽は「アメリカ音楽」の広大な沃野の根っこの一つだと思う。最大限の敬意と憧れのまなざしで演奏した。

 

 20代後半の頃、曳舟の喫茶店「珈琲家」さんで毎週日曜日のお昼にソロピアノで出演していた時期がある。きっとその頃キースの演奏に感動して、コピーして演奏したのだと思う。ある日この曲を弾いていると「ああ、なつかしい。大好きな曲です」とお客様が。驚いた。僕は、本当に無知で、キースが弾くこの曲がアメリカ民謡だとも知らずに、オリジナルか何かだと思って弾いており、喫茶店のお客さんに「なつかしい」と言われるとは思いもよらなかったのだ。しかも、自分は芸大を出てジャズが好きで、いっぱしに色々な音楽を知っている気でいたので。しかし、この驚きは「音楽は文化だ。そして自分が知っているよりはるかに広く深くて、計り知れない」という学びに繋がった。


 独学にこだわっていたことも災いして、僕は最初ジャズがまったく上手くならなかった。ジャズの仕事の誘いが全くなかった。その頃オーディションを受けオールディーズバンドに加入、毎晩ダンス・ミュージックを演奏するようになった。その時の体験は楽しくもあり苦しくもあった。本当に好きなジャズは演奏できない。あまり興味のない古いポピュラー音楽ばかり演奏する毎日。しかし一生懸命取り組むうちに、オールディーズにもアメリカ音楽の精髄が存在することがわかってきた。全部の曲に惚れ込んだわけではないが、これらの音楽を演奏するために必要なのは「ブルース」の理解なのだと教わった。そしてそれが、僕のジャズの勉強から抜け落ちていた部分だった。


 ブルースはある種のスキルであり、それ以上に「精神」だ。喜怒哀楽の感情を歌うスキル、グルーブに変換するスキル、それをオーディエンスと分かち合うマナー、そしてミュージシャンらしい振る舞い。生きることの苦悩、これを音楽に昇華して分かち合う。その精神。こういうものを学んだ。その頃は、大好きだったエヴァンスやキースは意図的に聴かないで一時封印した。

 それからオールディーズ・バンドは卒業、すこしずつジャズの世界に入っていくことになった。若い頃よりの少し視野が広くなって音楽を眺めるようになった。クラシックも違う風に聴こえたし、エヴァンスやキースも違って聴こえた。そしてかつては単に美しいピアノ音楽だったシェナンドーが「ルーツ音楽」として聴こえるようになった。オールディーズよりも、ジャズよりも、ブルースよりもさらに古い地層に横たわる音楽。

 

 この曲をアルバムの最後にひとりで弾いたのはそういうわけです。最後に「ルーツ」というものに想いを馳せる、そんなポーズで締めくくる。ちょっと気取った演出でした。


 最後までありがとうございます。



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